日本と西洋の交流から生み出された美術品を展示する特別展「交流の軌跡――初期洋風画から輸出漆器まで」が12日、大阪・中之島の中之島香雪美術館(大阪市北区)で開幕する。西洋の銅版画や本の挿絵を手本に描いた日本の絵師の手による絵や、西洋の戦闘図を元にした蒔絵(まきえ)を施した漆器類など、桃山時代から江戸時代の日欧文化交流の軌跡を、66点の美術品でたどる。

 見どころの一つは、17世紀初頭の初期洋風画の名品、「レパント戦闘図・世界地図屛風(びょうぶ)」(国の重要文化財)だ。

 1571年、ギリシャ中部レパント沖で、キリスト教勢力の連合艦隊がイスラム教勢力のオスマン帝国を破った。「戦闘図」はこの戦いを「ろうま(ローマ)」と「つうるこ(トルコ)」の戦いとして描いた。「金雲」や「金の付箋(ふせん)」といった日本画的な表現を盛り込みつつ、西洋の陰影法や遠近法を使って表現している。

 美術館によると、16世紀後半、キリスト教イエズス会はセミナリヨやコレジヨなどの教育施設を日本国内に作り、西洋の絵画技法を絵師に学ばせた。手本は本国から持ち込んだ版画や本の挿絵などだった。「戦闘図」は、日本の岩絵の具を用い、屛風絵という日本独特の体裁を取っていることなどから、そこで学んだ日本人絵師が作者というのが定説となっている。

 この絵の中にも、手本にした絵がわかる部分がある。右手のゾウ隊は、紀元前202年にローマ軍がカルタゴ軍を破った「ザマの戦い」を描いたコルト(1533?~78)の銅版画を元にしている。特別展ではこの銅版画も並んで展示される。

 左手の美しく武装した貴公子「ろうまの王」は、フランドルの画家ストラダーノ(1523~1605)原画の銅版画「古代ローマ皇帝図集」の扉絵から図柄を継承している(今回はパネルによる展示)。

 1630年代以降、いわゆる鎖国の時代にも、オランダとの交流を通じて、洋書を典拠とした作品が生み出されていった。

 今回、江戸時代後期の画家・蘭学(らんがく)者、司馬江漢(しばこうかん)の作品で、ルイケン父子の銅版画集「人間の職業」(アムステルダム刊)をアレンジした「銃を持つ人物」や「方三寸画帖貼交(ほうさんすんがじょうはりまぜ)屛風」「異国風物図押絵貼(いこくふうぶつずおしえばり)屛風」の計3点が、初めて一般に公開される。

 西洋の戦闘図を蒔絵で表した額絵など、欧州に輸出され、珍重された漆器類なども展示される。(松尾慈子)

12日から 中之島香雪美術館

■10月12日(土)~12月8日(日)。午前10時~午後5時、入館は午後4時30分まで。月曜休館。ただし、10月14日(月)(祝)、11月4日(月)(休)は開館(いずれも翌日休館)。展示替えあり〈前期は11月10日(日)まで、後期は12日(火)から〉

■中之島香雪美術館

(06・6210・3766、大阪市北区中之島3の2の4、中之島フェスティバルタワー・ウエスト4階)

■一般千円、大学生・高校生600円、中学生・小学生300円

主催 香雪美術館、朝日新聞社

後援 大阪市、大阪市教育委員会

イベントピックアップ

特集