毘沙門(びしゃもん)さんと言えば、恵比須(えびす)さんや大黒(だいこく)さんと並ぶ福の神。その一方、四天王の1人として、北の方角を守る多聞天(たもんてん)とも呼ばれています。2月4日から奈良国立博物館で始まる特別展「毘沙門天―北方鎮護のカミ―」(奈良国立博物館、朝日新聞社など主催)には、頭から足元まで、実に個性的な毘沙門さんが全国から集まってきます。(編集委員・小滝ちひろ)

 毘沙門天は古代インドの神、バイシュラバナ。もともとは福の神で、中国へ伝わってから強い神に転じたらしい。特別展では国宝2件、重要文化財18件を含む37件が紹介される。

■頭部

 京都市の鞍馬寺(くらまでら)の国宝像(高さ175・7センチ)は、左手が後世に取り換えられ、目の上にかざすポーズとなった。南に位置する平安京を見渡しているのだろうか。一方、東寺(京都市)の国宝像(高さ189・4センチ)は中国・唐でつくられたとみられ、板を四方に立てた形の宝冠をかぶり、長いコートのような金鎖甲(きんさこう)と呼ばれる甲をまとう。腕には輪っかを連ねたような「海老籠手(えびごて)」と呼ばれる防具も着けている。

 奈良国立博物館所蔵の毘沙門天立像(高さ78・2センチ)は、首を守るための冑(かぶと)の「しころ」が別製として鎖で吊られている。島根県奥出雲町の岩屋寺(いわやでら)にあった毘沙門天立像(高さ210・1センチ)は息を吐くように口を開いており、口を閉じる像が多い中では珍しい。

■胴体

 愛媛県大洲(おおず)市の如法寺(にょほうじ)の毘沙門天立像(高さ28・1センチ)は、胸もおなかもぱんぱん。岐阜県揖斐川町の華厳寺(けごんじ)の毘沙門天立像(国重要文化財、高さ168・2センチ、3月1日まで展示)は両袖が長く垂れ、全体が縦長に見える。

■足元

 京都市の清凉寺(せいりょうじ)の国重文像(高さ79・9センチ)は岩座に座る珍しい作品。もとは地天女(ちてんにょ)と鬼に支えられていたらしい。福岡県太宰府市の観世音寺(かんぜおんじ)の国重文像(高さ160センチ)は、鬼が地天女の後ろに隠れている。

■双身

 京都府木津川市の浄瑠璃寺(じょうるりじ)の双身(そうしん)毘沙門天立像(高さ6・9センチ)は2体が背中合わせで富や情愛の神。奈良市の東大寺の勝敵(しょうじゃく)毘沙門天立像(高さ37・8センチ)は鎌倉時代の承久の乱(1221年)直前、朝廷側が幕府討伐を祈った像と言われ、口から長い牙が生えた怖い神だ。

◇2月4日(火)~3月22日(日)、奈良国立博物館(奈良市登大路町、https://www.narahaku.go.jp/別ウインドウで開きます)。会期中に一部作品の展示替えがあります。

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