
絵本作家・林明子さんが1976 年にはじめて手がけた物語絵本『はじめてのおつかい』が誕生して40年が経ちました。この作品をきっかけに、林さんは『こんとあき』『おつきさまこんばんは』『はじめてのキャンプ』『はっぱのおうち』など数々の作品を生み出してきました。子どもたちが見せるわずかな心の揺らぎや、葉っぱ一枚一枚のみずみずしさまでやさしく繊細に描き出した作品は、世代を超えて多くの人に愛されています。
本展では、林さんの代表作『はじめてのおつかい』『こんとあき』から最新作『ひよこさん』までの絵本原画、さらに、構想段階で描かれた貴重なラフスケッチなどを展示します。また、絵本デビュー以前に手がけた挿絵イラストも紹介します。200点以上の作品を通して、林さんの創作を一望できる特別な機会です。
絵本を「懐かしい日々に出会えるアルバムのような存在」という林さん。子どもの姿を描くときには、親せきや近所の子どもたちをモデルにして、ポーズを取ってもらったりしていたそうです。そういったモデルたちだけでなく、共作者や編集者など、絵本をつくる林さんの周りには、いつもたくさんの “ 応援団”がいました。林さんの「絵本のひきだし」の中には、そんな大切な人たちとのあたたかな時間が詰まっているのかもしれません。本展を通じて、林さんが作品に込めてきた思いや、色あせることのない絵本の魅力を感じていただければ幸いです。
本展は、林さんのあたたかなご理解とご助力によって、実現することができました。また福音館書店からも心強いご協力をいただきました。さらに林さんの貴重な原画を大切に保存している宮城県美術館には、展覧会準備に常に併走していただき、お力添えを賜りました。この場を借りて、皆さまに厚く御礼を申し上げます。このほか、本展覧会開催のためにご尽力をいただきましたすべての“ 応援団”の方々に感謝いたします。「ひきだし」をそっと開けて、林明子の絵本の世界をどうぞお楽しみください。

◎Profile
林 明子Akiko Hayashi
絵本作家。1945年東京都生まれ。1976年にはじめての物語絵本『はじめてのおつかい』を手がける。代表作に『こんとあき』『おつきさまこんばんは』『はじめてのキャンプ』などがある。