2011年06月22日
サーモポリス標本 ©The Wyoming Dinosaur Center
始祖鳥の復元画 ©Utako Kikutani
始祖鳥は鳥か。恐竜か。発見から150年、これまで最古の鳥類とされてきた始祖鳥の位置づけが揺らぎつつある。従来の考えを覆す特徴をもつ化石が、7月2日に開幕する「恐竜博2011」(東京・国立科学博物館)で日本初公開される。
展示されるのは「サーモポリス標本」と呼ばれる始祖鳥化石。05年に論文が発表されたこの最新標本によって、始祖鳥の足の親指は前向きについていることが新たにわかった。これは、肉食恐竜と共通の特徴だ。
これまでは、従来知られていた化石の見え方から、始祖鳥の足の親指は、鳥類と同じように、枝をつかみやすい後ろ向きと考えられていた。今回、唯一体がはっきり正面を向いているこの化石によって、初めて足の指の詳細が確認され、従来考えられていたよりも恐竜的な動物だったことがわかったのだ。
そもそも、始祖鳥が鳥類とされた根拠のひとつは羽毛だった。1861年、1枚の羽毛化石が確認された当時、羽毛をもつ生物は鳥類しか知られていなかった。しかし、15年前から中国を中心に羽毛恐竜の発見が相次ぐと、もはや羽毛は鳥類の「証し」ではなくなる。
それ以来、指の向きが唯一残された鳥らしさの根拠とされてきたのだが、サーモポリス標本がその最後の砦(とりで)を崩した形だ。この研究成果を受けて、恐竜と鳥類との境界線を巡る議論が一層活発化している。
同標本の実物化石の展示は7月2日から10日まで。以後複製を展示。その他の始祖鳥化石の複製7点も並び、見比べることができる。