世界報道写真展とは

「世界報道写真展」は1955年にオランダのアムステルダムで、世界報道写真財団が発足したことにより、翌年から始まったドキュメンタリー、報道写真の展覧会です。毎年、1月~2月にかけて主に前年に撮影された写真を対象にした「世界報道写真コンテスト」が開かれ、国際色豊かな国際審査員団によって選ばれた入賞作品が「世界報道写真展」作品として、世界中の約120会場で展示されます。年間を通じて、総計約400万人が会場に足を運ぶ世界最大級の写真展と言えるでしょう。
今、世界で起こっている現実を克明に捉えるプロの報道カメラマン達。その圧倒的な力量と息をのむような緊張感が伝わってくるような受賞作品の数々は、見る者の心に迫ります。

John Moore, United States, Getty Images
                ジョン・ムーア(アメリカ、ゲッティイメージズ)
  • 自然の部 単写真1位
  • アミ・ヴィターレ(アメリカ、CNN に提供)
  • 「浸水した島からキリンを救出」
2020年12月3日、ケニア西部バリンゴ湖で、洪水に見舞われたロンギチャロ島から特製のはしけで安全な場所に輸送されるロスチャイルドキリン(ジラファ・カメロパルダリス・ロスチルディ)。
  • 現代社会の問題の部 単写真2位
  • ジェレミー・レンピン(フランス)
  • 「ドクター・ペヨとミスター・アセン」
2020年11月30日、フランスのカレーにあるカレー病院センターのセレーヌ緩和ケア病棟で息子イーサン(7)を抱きしめる転移がん患者のマリオン(24)と動物介在療法に用いられている馬のペヨ。

応募総数と受賞者数

第64回目を迎える今回は、130の国と地域のフォトグラファー4,315人から計74,470点の応募がありました。展覧会では、厳正な審査を経た約160点の入賞作品を紹介します。今年のコンテストは「現代社会の問題」、「一般ニュース」、「環境」、「自然」、「長期取材」「スポーツ」「スポットニュース」、そして「ポートレート」の全8部門において、28カ国45人の受賞が決まりました。各部門はそれぞれ「単写真(写真1枚)」と「組写真(複数の写真で構成)」に分かれています(長期取材の部を除く)。入賞者は部門毎に各1位から3位までのいずれかに該当し、入賞者の中から、その年の最も優れた作品に対して「世界報道写真大賞」「世界報道写真ストーリー大賞」が贈られます。今年は世界報道写真大賞にマッズ・ニッセン氏(デンマーク、ポリティケン/パノス・ピクチャーズ)の作品「初めての抱擁」が選ばれました。新型コロナウイルスと闘っている人間の絆と温もりが撮られており、人々に勇気を与える1枚です。

国際色豊かな審査員団体

「世界報道写真コンテスト」は、フォトジャーナリズム専門家で構成される国際審査員団が審査に当たります。審査員団の顔ぶれは毎年変わり、審査委員長を中心に、審査手続きを行う事務局長が補佐します。審査員団は世界報道写真財団から独立した立場にあり、入賞作品の選定に審査員団以外が関与することはありません。また、全ての応募作品は匿名で審査され、票を持たない事務局長が審査過程の公平性を監督します。

  • 一般ニュースの部 組写真1位
    世界報道写真ストーリー大賞ノミネート作品
  • ヴァレリー・メルニコフ(ロシア、スプートニク)
  • 「失楽園」
11月30日、ナゴルノ・カラバフの村ネルキン・ススの自宅の戸口で泣くアボヴヤーン・ハスミク(69)
世界報道写真展 2021
世界報道写真大賞 一般ニュースの部 単写真1位
マッズ・ニッセン(デンマーク、ポリティケン/パノス・ピクチャーズ)
「初めての抱擁」
2020年8月5日、ブラジルのサンパウロにあるヴィヴァ・ベム介護施設で看護師のアドリアナ・シルヴァ・ダ・コスタ・ソウザに抱きしめられるローザ・ルジア・ルナルディ(85)。
世界報道写真ストーリー大賞 長期取材の部 1位
アントニオ・ファシロンゴ(イタリア、ゲッティルポタージュ)
「ハビビ」
2018年12月、パレスチナの都市ラマラの近郊のベイト・リマにて、自宅のソファに横たわるリディア・リマウィ。夫のアブドゥル・カリム・リマウィは2001年に逮捕され、イスラエルのレハヴアム・ゼエヴィ観光大臣暗殺に関与した罪で25年の懲役刑に処された。夫婦の間には、体外受精で2013年に生まれた息子マジュドがいる。2014年、アブドゥル・カリムは刑務所から精液をひそかに持ち出したかどでおよそ1,500米ドルの罰金が科せられ、2カ月間にわたり家族との面会が禁じられた。
スポットニュースの部 単写真1位 世界報道写真大賞ノミネート作品
イヴリン・ホックシュタイン(アメリカ)
「奴隷解放記念碑論争」
2020年6月25日、アメリカ・ワシントンDCのリンカーン公園で奴隷解放記念碑の撤去をめぐり意見を異にする男性と女性。
ポートレートの部 単写真1位 世界報道写真大賞ノミネート作品
オレグ・ポノマレフ(ロシア)
「ジェンダー移行:イグナット」
2020年4月23日、ロシアのサンクトペテルブルクにてガールフレンドのマリアと座るトランスジェンダー男性イグナット。
一般ニュースの部 組写真1位 世界報道写真大賞ノミネート作品
ヴァレリー・メルニコフ(ロシア、スプートニク)
「失楽園」
11月28日、ラチンの自宅を立ち去る前に写真に収まったアザト・ゲヴォルキアンと妻のアナイク。大勢のアルメニア人が、第2次ナゴルノ・カラバフ紛争後アゼルバイジャンの支配に戻る地域を去った。
自然の部 組写真3位 世界報道写真大賞ノミネート作品
ルイス・タト(スペイン)
「バッタ来襲と闘う東アフリカ」
2020年4月24日、牧草地を破壊するバッタの大群を懸命に追い払おうとするケニアのサンブル郡落アーチャーズ・ポストの集落の長ヘンリー・レナヤサ。新型コロナウィルスの大流行が始まった時と同様、バッタの大群は国土の広範囲に壊滅的な被害をもたらし、人々の生活を混乱に陥れた。
スポーツの部 組写真1位 世界報道写真ストーリー大賞ノミネート作品
クリス・ドノヴァン(カナダ)
「踏み止まる者がチャンピオンになる」
ハイスクール生活最後のレギュラー・シーズン・ゲームを前に、チームのロッカールームでロッカー上を飛び移るフリント・ジャガーズのスター選手テヴィオン・ラッシング。ジュニア・カレッジに進学してバスケットをしたいと考えている。
世界報道写真ストーリー大賞 長期取材の部1位
アントニオ・ファシロンゴ(イタリア、ゲッティルポタージュ)
「ハビビ」
2015年5月、ナエル・アル・バルグーティのスーツは、パレスチナの都市ラマラ近郊のコバールにある彼の自宅寝室にかかったままだ。アル・バルグーティの妻イマン・ナフィは、夫の服や持ち物をそのままにしている。アル・バルグーティは、対イスラエル奇襲攻撃後の1978年に逮捕された。2011年にいったん釈放されて、イマン・ナフィと結婚したが、2014年に再逮捕され終身刑を宣告された。彼の収監期間は40年を超え、イスラエルの刑務所のパレスチナ人受刑者の中で最も長く役となっている。
環境の部 組写真2位
シリル・ジャズベック(スロベニア、ナショナルジオグラフィックに提供)
「気候変動と闘う策:自分の氷河を造る」
ラダックの旧王都レー近郊のガングレスにある高さ24メートルの氷の仏塔。配水管から噴き出た水で形成される。
現代社会の問題の部 単写真1位
パブロ・トスコ(アルゼンチン)
「イエメン:飢餓、戦争がもたらすもう一つの傷」
2020年2月12日、イエメンのホール・オメイラの入り江で漁網を仕掛ける舟上のファティマと息子。
世界報道写真大賞2020(特別出品)
千葉康由(日本、AFP通信)
「Straight Voice(まっすぐな声)」
人々の掲げる携帯電話の光に照らされ、抗議の詩を叫ぶ若者。2019年6月19日、停電になったスーダン首都ハルツームで催された文民統制を求める対話集会にて。 ※世界報道写真展2021に特別出品予定