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2012年5月23日10時11分
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「川上未映子 おめかしの引力」

ドレスの行く末

川上未映子

 結婚式をすることになって、ご経験のある方ならご存じだとは思うけれど、当日までのあの準備の大変さは「一体なにごと」というくらいのものであって、今回はそれに加えて臨月という有り様なので、悩みの種は専らウエディングドレスであるのだった。

 もちろん昨今は妊婦で挙式&ドレスも珍しくないけれど、しかし臨月というのはめったになく、「どんなもんかいな」と「妊婦・ウエディングドレス」で画像検索をしたら出てくるのは太くてごっつくって、「ガ、ガンダムみたいになっとるやないの」とつぶやかずにはいられないよな、装甲車的な四角い雰囲気。花嫁には罪はないけど可憐(かれん)さやファンタジー感など微塵(みじん)もなくておののいた。

 これ見る方も着る方もきっついなあ! と思いつつしかしジャージーで出るわけにはゆかぬので、ドレス屋さんに相談したらば「臨月……レンタル無理ですね!」ということでなんとオーダーすることに。一度切りのものに何十万、しかも当日までおなかはどんどん膨らむわけで「ホワイト獅子舞みたいになるやろな」という不安もさることながら、根っからの貧乏性たる私は「将来姪(めい)ッコとか、着ようと思ったら着れるよな!」とか周りと自分に言い聞かせずにはおられず、そのたびに「誰がそんな巨大ドレス着るねんな、親戚のその手の押しつけまじ勘弁」と煙たがられる始末なのだった。

 無事迎えた当日は優れたデザインのおかげでおなかは目立たず、「ほんまに妊娠してはるのんか」と皆さんに驚かれるほどだったのだけど、あまりのめまぐるしさに2時間はほとんど20分くらいの感覚で、ドレスを着た時間の感覚も瞬く間。しかし終わってみると「この贅沢(ぜいたく)な感じがなんか非日常過ぎてええのかも」などと思えてくるから不思議だよ。しっかしオーダーのウエディングドレスって最後はどうなっちゃうんだろうな。仏壇みたいに代々引き継いでゆくわけにもゆかんしなあ!

プロフィール

川上未映子(かわかみ・みえこ)

作家。76年生まれ。08年「乳と卵」で芥川賞受賞。歌手としても活動する。

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