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2011年6月10日12時46分
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柏木友紀 おしゃれチャットBox

世界3大ファッションスクールの卒業ショー ロンドン・NY・東京 

柏木友紀

写真:ロンドン、セントラル・セント・マーチンズのMA(修士課程)ショー=今年2月、大原広和氏撮影拡大ロンドン、セントラル・セント・マーチンズのMA(修士課程)ショー=今年2月、大原広和氏撮影

写真:セントラル・セント・マーチンズのショー=同拡大セントラル・セント・マーチンズのショー=同

写真:ニューヨーク・パーソンズの卒業ショー「Fashion Benefit」=今年5月、バンタンデザイン研究所提供拡大ニューヨーク・パーソンズの卒業ショー「Fashion Benefit」=今年5月、バンタンデザイン研究所提供

写真:パーソンズの卒業ショー拡大パーソンズの卒業ショー

写真:バンタンデザイン研究所の卒業ショー=今年2月、東京都渋谷区 (以下、柏木写す)拡大バンタンデザイン研究所の卒業ショー=今年2月、東京都渋谷区 (以下、柏木写す)

写真:文化服装学院の卒業ショー=今年3月、東京都新宿区拡大文化服装学院の卒業ショー=今年3月、東京都新宿区

写真:文化服装学院の卒業ショー拡大文化服装学院の卒業ショー

 世界で3指に入るファッションスクールの卒業ファッションショーを、今年はそれぞれ見る機会に恵まれた。ロンドンのセントラル・セント・マーチンズ、ニューヨークのパーソンズ、そして東京の文化服装学院。いずれも昨年、米国のファッションサイトが発表した「世界のファッションスクール」で1位から3位にランクインした名門だ。

 セントラル・セント・マーチンズの「MAショー」は、いろいろな意味で見ものだった。2月、ロンドン・ファッション・ウイークの公式行事のひとつとして、1000人近く収容できるメーン会場で発表された。

 ジョン・ガリアーノに故アレキサンダー・マックイーン、ステラ・マッカートニーら、多くのカリスマデザイナーがここを登竜門としてきた。この場で、マックイーンの作品を当時の人気スタイリストだった故イザベラ・ブロウが丸ごと買い上げたことや、ヴェルサーチに見込まれて若きクリストファー・ケインがアシスタントに採用された、などといった逸話は限りなく、新進デザイナーの「青田買い」の場となっている。

 実際、今年もフロント・ロウにはセルフリッジやハロッズ、バーニーズ・ニューヨーク、香港のレーン・クロフォードなど、国内外の有名デパートやセレクトショップの敏腕バイヤーたちが顔をそろえていた。ヴォーグやエルなどファッション紙の編集長クラス、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙の看板スージー・メンキス記者ら、ジャーナリストも食い入るように見つめ、「先物買い」の熱気が感じられる。

 ついそれまで、ダックス、イェーガーなどの老舗ブランドが最新作を披露していたキャットウォーク。BGMや照明などまですべてプロの演出によって卒業作品を披露するのだから、何ともゴージャスな「卒業ショー」だ。

 21人の学生デザイナーたちは、既に受賞歴もある精鋭ぞろい。コース内でのセレクションを勝ち抜き、アルマーニやマクスマーラなど、大手ブランドとの共同作品がある人も。場内に各人の名前が大きく投射され、配布されたパンフレットには、それぞれの携帯電話番号とメールアドレスが記されている。気に入ったデザイナーには即コンタクト出来るというわけだ。

 山岳民族風の全身パッチワーク風オール・イン・ワン、口や顔全体、体全体を符号のような大きな飾りで覆ったドレスもある。テーブルクロス風キルトを巻き付けたセットアップ、卒業生であるセリーヌのフィービー・ファイロを想起させるミニマムなエレガント路線もあった。手の込んだ仕立てで、こだわりが感じ取れるアーティスティックなデザインが主流だった。

 代わってNYのパーソンズ。こちらの卒業ショー「ファッション・ベネフィット」は先月、単位互換などで提携関係にある東京のファッションスクール、バンタンデザイン研究所で「JAPAN ROUND」と題し、初めて同時中継された。

 マーク・ジェイコブスやダナ・キャラン、トム・フォード、近年ではアレキクサンダー・ワンら、卒業生はニューヨークを中心に各地のコレクションを席巻する。ブロエンザ・スクーラーはこの卒業ショーでバーニーズ・ニューヨークのバイヤーの目に留まり、即売り場を獲得したといわれる。

 フロアには独特の雰囲気が漂う。円卓が並び、メゾンや百貨店などがスポンサーとなって借り切っている。司会はコーチの社長兼デザイナーのリード・クラッコフ氏。カクテルパーティー、フォーマルディナーと続いた後、ランウェーショーが開かれる。テーブルの間を縫うように歩くモデルたち。至近距離だけに、素材や細部の仕上げまでごまかしは利かない。

 画面を通してではそこまでは見えなかったが、リアルクローズ中心の同地らしく、エッジーでモダンな味付けながら、そのままセレクトショップで売れそうなウエアラブルな雰囲気は感じ取れた。

 ちなみに、ここバンタンの卒業ショーも2月に開かれ、勢いを感じた。キモカワ系にボンデージ風、ゴスロリ調、アキバ系、ストリート、エッジィーモダン、ハードロック風と、ジャンルは幅広い。毒気やパンクスピリッツなども感じさせる独特のパンチが効いていた。卒業生には白浜利司子や鷺森アグリら、東京コレクションで活躍中のデザイナーらがいる。

 そして文化服装学院。山本耀司、高田賢三、コシノヒロコ・ジュンコ姉妹ら卒業生は華麗。卒業ショーは2月末から1週間ほど、各学科が五月雨式に開いた。スパイダーマンあり、着ぐるみあり。かつてのツッパリ風ボンタンズボンにバービー人形風と、他の国の卒業ショーではありえないニッチさ満開。作り手たちが何より生き生きとしていた。

 今回、日本の2校で感じたのは、観客にバイヤーやプレスら外部の人間が圧倒的に少ないこと。そこでの直接的なビジネスチャンスが得られないのはもちろん、在校生や保護者、友人ら学内関係者だけでは、どうしても内輪の発表会的な色彩が色濃くなってくる。

 学生それぞれの関心や独創性は大事だが、「服」である以上、社会で着てもらってなんぼだ。現実社会が求めているものの見極めや、メッセージ性など他のクリエーティブ分野と比較しても実社会との結びつきがより大きなウエートを占める「服」だからこそ、もっと外部を呼び込む努力が必要だろう。結果としてデザインにも作り手本位だけでない視点が生まれるはず。個別には外部との提携プロジェクトなども進んでいるようだが、集大成である卒業ショーにも外部の視点がほしい。

 「一人ひとりの内なる創造性の叫びに耳を傾けていきたい。そのうえで、各自の強みを実社会にどう生かしていくかを見つけることが、我々の最大の目標です」。セントラル・セントマーチンズのジェーン・ラプレイ学長が話していたのを思い出す。

 一方、我々プレス、バイヤーやブランドの側にも、「若い芽」を長い目で応援する余裕が欲しい。世界でも独自の発展を遂げた東京のファッションだが、次世代デザイナーの育成は、ここ十数年変わらぬ課題でもある。

 「他とのバランスは見ないといけないが、できれば英国の若手デザイナーのコーナーを拡充したい。地元が盛り上がるほどエキサイティングなことはないからね」。セルフリッジのバイヤー、ゲイリー・エッジリーも言っていた。

プロフィール

柏木友紀(かしわぎ・ゆき)

asahi.comファッション&スタイルページのエディター。

朝日新聞社入社から10ウン年、社会部、アエラ編集部、文化部を経て、09年10月より現職。メディアとファッションなどを主に担当してきた。

3度の食事と4歳になる息子、の次ぐらいにファッションは気にかかるが、生来の面倒くさがりのため、ラクして美しくなれる方法はないものかと思案中。

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