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2011年9月26日11時46分
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「Fashion×Passhion 吉川康雄」

魅惑のくちびる

吉川康雄

写真:某V誌の撮影風景、15人の姫達のスナップショット拡大某V誌の撮影風景、15人の姫達のスナップショット

写真:1997年French elleより。ハリを強調したツヤリップ。カバーガールズは、ずっとセクシー主流拡大1997年French elleより。ハリを強調したツヤリップ。カバーガールズは、ずっとセクシー主流

写真:Vogue India 2011Sep coverより。セクシーで大人の女の魅惑のくちびる 拡大Vogue India 2011Sep coverより。セクシーで大人の女の魅惑のくちびる 

写真:1999年USA elleより。 ふっくら大きめリップ 拡大1999年USA elleより。 ふっくら大きめリップ 

写真:2004年6月Harpers & Queenより。ほんのりサクラ貝色はピュアでセンシュアル (以上、スナップショットは本人撮影、他はすべて本人の作品集から)拡大2004年6月Harpers & Queenより。ほんのりサクラ貝色はピュアでセンシュアル (以上、スナップショットは本人撮影、他はすべて本人の作品集から)

 僕の撮影キャリアの中でも最多人数、15人のモデルを1枚の写真に収めるというグループショットのメイクアップをやり遂げて来ました。この撮影はファッションショーのように、全員に同じメイクをするというのではなく、一人一人の個性と魅力をメイクで強調するというコンセプト。モデルは自己主張のプロたち、このコンセプトで15人も集まったら、もうそれは15人のお姫様ということです。大変です。ヘアーメイクの準備に与えられた約4時間、メイクルームはまるでNYコレクションのバックステージのように活気にあふれ、お姫様たちの声が飛び交っていました。「ヤスオ、私、出来るだけふっくら大きくセクシーに見せたいの!」「私、大き過ぎるから目立たせないようにね!」何しろコンセプトはそれぞれの美しさの追求。姫たちと相談しながらハリを良く見せたり、形よく修正して見せたりと、大忙しでした。

 えっ! なんの話と思いました? 多様化するメイクのトレンドの中で、ここのところずっと口紅が流行中。当然、多くのモデルは鮮やかな色のリップで登場します。そんな中での彼女たちのリップのリクエスト、なんだかバストの話みたいに聞こえませんか。そうなんです。マリリンモンローの時代から唇はセクシーの象徴、セクシーつながりのリップとバスト、その悩みやリクエストは共通点も多いのです。その魅惑のリップに仕上げるためのバストのようなリップの悩み、代表的なものを挙げてみますね。

◆サイズ

 「大きくてふくよか」という響きは、男性にとっては無条件で“Sounds good!”な魅惑のくちびるですが、姫たちにとっては、ただ大きければいいわけではないようです。自分自身のキャラクターをどう捉えて、どうなりたいかによるようなのです。そして自分の唇に、控えめに大きくとか、知的にすっきり、どこまでも大きくセクシーなどと注文をつけてなりきっていきます。この日、15姫のそれぞれのクチュールメイドリップを作るため、僕は微妙に輪郭を大きく、または小さく修正しました。リップのアウトラインをぼかすことで少し形や大きさを変えつつも自然に見せて仕上げられます。姫たちの好みのサイズの“魅惑のくちびる”がこうやって完成しました。

◆ハリ感

 「ハリがあって柔らかい」、これも男性にとっては無条件に“Sounds good!”。本来は触って分かることですが、女性はいちいち触らせてあげるわけにはいきません。「触らなくてもそう見える」というのが“魅惑のくちびる”のポイント。これはズバリ「ふっくらとハリがあるような立体に見せる」ということです。

 80年代、日本で深紅の口紅がはやった時は、白いパウダリースキンに艶をとことん抑えた強烈な発色のレッドリップ。日本の多くの化粧品会社も競って「マットな赤の口紅」を出しました。マットなリップの質感は美しい日本の美人画のようにグラフィックに仕上がります。だけど、絵のような立体感が無い2次元メイクの唇は、写真では美しくても肉眼でふっくら柔らかくは見えませんでした。

 90年代にリップグロスが登場してからリップメイクは平面から立体に大きく変わったのです。グロスでツヤをつけることで光に反射させ、ハイライトを強調、そして唇の立体は強調され、その効果で唇がふっくらと見えるのです。さらにグロスの柔らかい質感は、唇のシワをカバーして表面をフラットに輝かせ、シワを隠してハリを強調。

 ふっくら見せる“魅惑のくちびる”の質感はツヤだったのです。

◆色

 無垢な女性のバストを思わせる「ほんのりサクラ貝のような色」はピュアでセンシュアル、絶対的な“魅惑のくちびる”カラーです。だけど女性の魅力は奥深く千差万別、これ以外にも様々な色で違った魅惑が演出できます。だから色々と試してほしいのですが、鮮やかな色になるほど「エーッ、私には似合わない…」と思う女性も多いようで、使いこなすのは大変そう。でもコツさえつかんだら意外と簡単です。例えば香水のつけ過ぎは,良い香りでもToo much。自分の体臭が軽く残るくらいにつけると、個性を生かした魅惑の香りになるように、鮮やかな色の口紅はうっすら自分の唇の色が透けて見えるくらいにつけることで、違和感がない自分色の鮮やかカラーに仕上がります。昔からある発色の強いレッドリップも、こうやってつけ方をほんのちょっと工夫するだけで、レトロにならず今風の、“セクシーで大人の女の魅惑のくちびる”として楽しめるのです。

 バストのようなリップの悩みとそのヒント、ひらめきましたか? 魅惑のくちびる、そのセクシーのジャンルは様々。そしてあくまでも姫はみなさんです。

 夏のバカンスから帰って来たばかりのモデルたち、NYコレクション直前のこの撮影が終わってひと言、「サンキュー、ヤスオ、コレクション前に良いウオームアップになったわ」だって。「Enjoy your show and good luck! 姫たち!」

プロフィール

写真

吉川康雄(よしかわ・やすお)

メークアップアーティスト

1959年、新潟県生まれ。1983年から活動を開始し、ファッション誌や広告制作で活躍後、1995年に渡米。各国のVOGUEなどの表紙をはじめ、著名ブランドの広告、コレクション、セレブリティのポートレイト用メークなど、幅広く活躍中。ヒラリー・クリントン国務長官や、カトリーヌ・ドヌーブらセレブリティも多く手がけている。
2008年3月からはカネボウのプレステージブランド「CHICCA」のブランドクリエイターを務め、毎シーズン、日本の大人の女性に向けたメークを提案している。
世界を飛び回る毎日だが、休日はNYの自宅で妻と娘と過ごす。

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