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2012年7月12日11時15分
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「Fashion×Passhion 吉川康雄」

美少年?ニューハーフ?マニアックな妄想。

吉川康雄

写真:妖艶なビクトリアンドールに変身したアンドレイ拡大妖艶なビクトリアンドールに変身したアンドレイ

写真:彼は不思議な魅力、存在を表現できるアーティスティックな感性の持ち主。僕たちの撮影は彼の存在で、とっても不思議なストーリーに仕上がりました。みんな大満足!拡大彼は不思議な魅力、存在を表現できるアーティスティックな感性の持ち主。僕たちの撮影は彼の存在で、とっても不思議なストーリーに仕上がりました。みんな大満足!

写真:男性、女性のボーダーラインを飛び越えて「ビクトリアンドールに憧れる男の子」を演じるアンドレー。こんなストーリーをこなせるのは世界でも彼ひとりでしょう。とってもクールな男の子でした! 以上3枚は、Wild magazine ‘Women issue’2012年7月発売号より カメラ:Charlie Engman拡大男性、女性のボーダーラインを飛び越えて「ビクトリアンドールに憧れる男の子」を演じるアンドレー。こんなストーリーをこなせるのは世界でも彼ひとりでしょう。とってもクールな男の子でした! 以上3枚は、Wild magazine ‘Women issue’2012年7月発売号より カメラ:Charlie Engman

写真:元祖アンドロジナス美少年、デビッド・ボウイ。当時まだとっても若かった僕には、理解を超えた衝撃の存在でした。 デビッド・ボウイ「HUNKY DORY」より拡大元祖アンドロジナス美少年、デビッド・ボウイ。当時まだとっても若かった僕には、理解を超えた衝撃の存在でした。 デビッド・ボウイ「HUNKY DORY」より

写真:トップモデル、キャロリーナとのツーショット。女性より女性的? まるで美しい姉妹のようなジャンポール・ゴルチエの広告写真拡大トップモデル、キャロリーナとのツーショット。女性より女性的? まるで美しい姉妹のようなジャンポール・ゴルチエの広告写真

写真:アンドレイの過去のエディトリアルワーク。Dossier誌2011年春・夏号の表紙より拡大アンドレイの過去のエディトリアルワーク。Dossier誌2011年春・夏号の表紙より

 僕は普段、男性モデルと仕事する機会があまり無いのですが、つい最近、ある男性モデルと楽しいお仕事をしてきました。

メイクルームでは「とっても綺麗だね。」とか「リップの形、すっごいセクシー!」なんて超盛り上がりながらお化粧をして、撮影が始まっても「かわいいよー!ゴージャス、すてきー!」と、賛辞の言葉は止まらず…。だけど、僕はゲイという事ではないんです。そんな言葉が本当に似合う、めちゃくちゃ綺麗でとっても不思議な男の子モデルだったのです。

 その日の撮影テーマは「ビクトリアンドール」。古い洋館には必ずいる、ガラスの瞳の、あのアンティーク人形です。ヘアーはブロンドの縦ロール、メイクは陶器のように白い人形肌、それを男性モデルで挑戦! そんな内容の話しをいただいた時は、正直、「女装がテーマのニューハーフみたいになっちゃいそう! カッコいい写真撮れるの?」と思っちゃいました。女性のモデルでさえ、華奢でデカダントな人形になるってそんな簡単な事じゃないのに…。でも、モデルはいま話題の美少年、アンドレイ・ペジックだったんです。彼は最近、女性のトップモデルを差し置いて、世界の一流デザイナー達、マーク・ジェイコブズや、ジャンポール・ゴルチエなどのアイコンになっている男性モデルなのです。もちろん女性服で!しかもメンズも着こなす! すごいでしょう? そんな彼に絶対会ってみたいと思って、不安をはねのけ、この撮影に来ちゃたんです。

 メイクを始めると、彼のそのスムースな肌にびっくり。さすが美少年、頭髪以外の毛とは無縁なんですね。相当な肌のお手入れ、察しました。ひげが濃かったらどうしようとか色々考えて不安だったのに、彼のヤワ肌は化粧のノリもバッチリで、フェミニンな白いレースのドレス姿になったアンドレイ君は、まさに妖艶なビクトリアンドールに大変身!

だけど少し変…? ぱっと見ると人形のような美しい女性なのに、粗いレースから透けて見える上半身はスレンダーな男性のカラダ…。それがとっても不思議なミックス。男の僕でもドキッとするようなセンシュアリティーなんです。もしニューハーフみたいに女性の体に近かったらもっと普通でつまんないかも…?なんて思っちゃいました。

 そういえばその日の朝、2時間遅れてスタジオに現れた彼の印象も、話す調子はフェミニンだし、ファッションも中性的だけど、女性の服を着て女になりたいという感じには全然見えなかった…。彼はニューハーフのように女性美を追い求めているんじゃなくて、美しい自分を純粋に表現しているんだと気がつきました。だから行きつく性的ニュアンスは、女でもニューハーフでもない感じ。男である事も意識しない…。中性的?アンドロジナス。例えばグラムロックの頃のデビッド・ボウイのように。当時の彼も美し過ぎて、もはや女性好きなのか男性好きなのか分からない感じだったでしょう? ファッション業界に長くいるとついゲイかストレートというジャンル分けをする癖がついちゃうのですが、アンドレイの場合は、その枠に当てはまらない「自分好き、アンドロジナス美少年」とでもいうのでしょうか。

 「アンドロジナス美少年」といえば、日本のお家芸でもありますよね。少女漫画の美少年も然り。そして宝塚の男役女役もある意味近いかな。最近でもチャン・グンソクのような中性的韓流スターが大人気で益々美少年フィーバーの日本。そんなフェミニン男性が大好きな日本女性の美少年嗜好で、気がつけば日本の男性、美少年じゃなくてもみんなフェミニンルックで中性的になっちゃいましたね。電車で周りを見渡すとほとんどの男性がいまや女性みたいな眉。せっかく男っぽい顔立ちのワイルド君までも女性みたいな眉のせいでおばちゃんみたいになっていると結構もったいないなと思うのは僕だけですか? それはともかく、日本女性の「美少年好き」は、もともと美しいヨーロッパへのあこがれから始まったのに、今ではオタクやアニメ文化と合わさって、逆に世界のファッション業界に影響を与えています。アンドレイもそうした流れで探し出された存在なのかもしれません。日本女性の方々、まだアンドレイを知らない方はチェックしてみて下さいね!

 このアンドレイ人気で、世界の男子も日本のフェミニンルックを追随することになったら、フェミニン男子大国ニッポンの地位も危なくなるかもね。

プロフィール

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吉川康雄(よしかわ・やすお)

メークアップアーティスト

1959年、新潟県生まれ。1983年から活動を開始し、ファッション誌や広告制作で活躍後、1995年に渡米。各国のVOGUEなどの表紙をはじめ、著名ブランドの広告、コレクション、セレブリティのポートレイト用メークなど、幅広く活躍中。ヒラリー・クリントン国務長官や、カトリーヌ・ドヌーブらセレブリティも多く手がけている。
2008年3月からはカネボウのプレステージブランド「CHICCA」のブランドクリエイターを務め、毎シーズン、日本の大人の女性に向けたメークを提案している。
世界を飛び回る毎日だが、休日はNYの自宅で妻と娘と過ごす。

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