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ファッションって拷問!? 吉川康雄のFromNY

2010年8月13日11時0分

写真:ブータンにて。カラフルなジプシー風スタイリングに合わせて、ヘアーメイクをアレンジ(6月10日)拡大ブータンにて。カラフルなジプシー風スタイリングに合わせて、ヘアーメイクをアレンジ(6月10日)

写真:フォークロア調に仕上がったモデル拡大フォークロア調に仕上がったモデル

写真:美しい景色なのだが、標高は3500。酸素不足で撮影は息も絶え絶えに。拡大美しい景色なのだが、標高は3500。酸素不足で撮影は息も絶え絶えに。

写真:ニューヨーク・ブルックリンの墓地で(7月14日)
拡大ニューヨーク・ブルックリンの墓地で(7月14日)

写真:猛暑の中、ニューヨーク・ブルックリンの墓地で撮影拡大猛暑の中、ニューヨーク・ブルックリンの墓地で撮影

写真:NYはアップステートのお屋敷でデカダントなストーリーを撮影。毛皮の下は汗まみれです。(7月27日)拡大NYはアップステートのお屋敷でデカダントなストーリーを撮影。毛皮の下は汗まみれです。(7月27日)

写真:屋敷内はとても熱いので外でヘアーメイク。外の気温も35度以上!拡大屋敷内はとても熱いので外でヘアーメイク。外の気温も35度以上!

 こんにちは、吉川康雄です。僕はメークアップアーティストとして、ニューヨークでは雑誌や広告のファッション撮影の仕事、そして日本では「キッカ」というブランドを通して化粧品作りをしています。お化粧という糸で結ばれた2足のわらじを履いて世界中を駆け回っているのですが、その僕の仕事場や、流行の最先端のバックステージで出会う、楽しい驚きを、これから皆さんにお伝えしていきたいと思います。

 ちょうど今頃、世界のファッション業界は夏休みに入るところです。2010年秋冬物の撮影が4月から7月でほぼ全て終わりましたが、僕はこの数ヶ月間、各地で行われた撮影で、メークを通して色々なイメージの女性像を作って来ました。

 例えば、はるばるブータンの、標高3500mの高地で行われた「Indian Vogue」誌の撮影では、フォークロア風のエキセントリックでカラフルなジプシーガールのイメージ。猛暑のNY・ハンプトンでは、ヒッチコックの映画「鳥」に出てくるようなアメリカの古い町並の中、B,バルドーのような奔放でセクシーな女性が不安や恐怖を感じる官能的なシーンを映画風に撮影しました。ブルックリンの墓地で撮影したのはヘルムート・ニュートンの写真に出てくるようなセクシーな女性。アップステートはハドソン川沿いの幽霊が出そうなクラシックな屋敷では、20年代風デカダントな女性……。と、それぞれ違った時代のテイストにインスパイヤーされ、女性像をイメージしました。今季のファッションの傾向は毛皮、レザー、レース、ブーツやハイヒールなどのアイテムを、黒を基調に美しい色と組み合わせてセクシーにドレスアップしていく装飾的なスタイリングが多かったように思います。

 こんな風にして仕上がるファッション写真は美しく、優雅にしか見えないのですが、実際の現場はかなり過酷(かこく)でした。まさに「ファッション・イズ・トウチャー(拷問)」。昔、西欧のお姫様がコルセットでウェストを極端に絞ってドレスを美しく着ていましたが、その頃から今も基本は同じ。デザイナーが考え出した美しい形のドレスやブーツの中にモデルの体を押し込むような感じです。ウェストは限りなく細く、ハイヒールは完璧で美しいアーキテクチャーのよう…、すべて美しい形の追求のためです。ファッション業界的にいえば、童話「白雪姫」の解釈は、毒リンゴのせいで倒れたのではなくて、美しくドレスアップしたままリンゴを食べたら気分が悪くなって気を失った…という事になります。ほんと、ファッションはトウチャーですから。

 その上、今年は異常に暑かった…。エクストラ・トウチャー、おまけです。汗まみれでベタ肌のモデルを、美しいドレスの中に押し込むのはものすごい力仕事です。35度以上の日射の中で汗まみれになり、ドレスと格闘しても崩れないメークなんてある訳無いですよね?さっき仕上げたばかりなのに、既に見る影もありません。それを短い時間で完璧な化粧に戻すのも僕の仕事です。どうやって…?皆さんも化粧直しの難しさは知っていますよね。さらっと乾いた肌のメイクに仕上げるなんて、従来の化粧法では絶対に出来ない技です。暑さ寒さに対する肌の生理機能に逆らった従来のパウダー化粧では、綺麗にメイクを保つ事、そして直す事は出来ないのです。汗や皮脂と無理なく共存出来る化粧法を、僕のブランドを通してもっとみんなに教えてあげたいなと感じます。

 こんな仕事で倒れそうになりながらも、このシーズンをやり遂げたモデルさんたち、お疲れさまでした。We love fashion shoot, and must love the fashion torture! この苦しみはクセになります。また来シーズンに彼女・彼らに会うのが楽しみです。

 この夏休みが終わると、次のシーズン2011年春夏がニューヨーク・コレクションを皮切りに始まります。また何が起こるのか…。僕のキッカ11年春夏コレクションは、もう既に準備OK。現在は11年秋冬の制作を始めています。なので僕の気分はもうReady to go!。

 こうしたファッションのバックステージで見た様々な出来事を、この秋からアサヒ・コムで、季節ごとにお届けすることになりました。題して「Fashion × Passion from NY by Yasuo Yoshikawa」。ファッション、美容情報をはじめ、僕が日々体験する出来事を皆様にお伝えしていきたいと思います。よろしくお願いします。

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