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2012年10月15日10時15分
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刷新で生きる伝統の逸品

写真:セイコー「アストロン」(15万円台〜)拡大セイコー「アストロン」(15万円台〜)

写真:銀座・和光ビルの屋上で披露されたセイコー「アストロン」=9月26日、東京都中央区拡大銀座・和光ビルの屋上で披露されたセイコー「アストロン」=9月26日、東京都中央区

写真:1969年発売の「クオーツアストロン」拡大1969年発売の「クオーツアストロン」

写真:nendoの作品は、鋭角的なバカラが丸くなり、柔らかい光を放つ拡大nendoの作品は、鋭角的なバカラが丸くなり、柔らかい光を放つ

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写真:ボッテガ・ヴェネタが復刻したバッグ拡大ボッテガ・ヴェネタが復刻したバッグ

 「伝統無くしては、芸術は導きなき迷える羊の群れ。革新無くしては、芸術は死体」との言葉を残したのは、英国の元宰相、ウィンストン・チャーチルだった。この秋、現代的な技術やセンスと出会い、歴史的な逸品の「刷新」が続々と生まれている。ファッションがクラシックに回帰する流れの中で、過去を見つめ直す試みが新しい。

■セイコー「アストロン」 クオーツはGPSへ

 東京・銀座のシンボル、和光の時計塔で9月26日夜、セイコーの腕時計「アストロン」の門出を祝うセレモニーが開かれた。あいさつに立った服部真二社長は、「この時計はセイコーの悲願。発売の明日は世界の時計史に残る日になる」とほおを紅潮させた。

 新作は世界初のソーラー式GPS(全地球測位システム)時計。ボタンを6秒押すだけで人工衛星から電波を受信、世界で39あるタイムゾーンから自動的に時刻を選び合わせてくれる。ソーラーパネルで充電し、電池交換の必要もない。

 同社は構想から約10年を要した新製品に、1969年に世界で初めて売り出したクオーツ式時計の歴史的な名前を冠した。その「クオーツアストロン」は旧来の機械式とほぼ同じ大きさで10倍の精度を誇り、万人に正確な時間を提供。今では大半の腕時計がクオーツ式を採用する。服部社長は「GPSの利用は、世界を席巻したクオーツに匹敵する発明。第2の革命になるという思いを込めた」。

 時計を売り込んでいくのは、世界を股にかける「グローバリスト」だ。式に出席した冒険家の三浦雄一郎は、「来年5月、3度目のエベレストに80歳で挑戦するが、ぜひその頂上にも身につけていきたい。日本の匠(たくみ)による最高の技術と、世界最先端の宇宙工学の結晶だと思う」と話した。

■バカラ「アルクール」 柔らかな日本の美を採用

 18世紀にフランスで創立されたクリスタルブランド、バカラ。1841年に発表した「アルクール」は、ナポレオンを魅了したグラスを原点に、アルクール公爵家の婚礼のために完成形が生み出されたブランドの「代名詞」だ。王侯貴族や各国要人のテーブルで長く愛されてきた。

 バカラは「伝統を守るだけでなく、移りゆく時代の美を採り入れたい」と、アルクールの「リデザイン」を、世界で活躍する日本のデザイン集団「nendo(ネンド)」に依頼した。

 代表の佐藤オオキは、「アルクールから感じたのは、溶け出す前の氷のような緊張感。そこを溶かしてみたらどうかと考えた」。酸に漬けて溶かす工程を長めにとった新作は、鈍い光を放ち、日本的とも言える柔らかさを感じさせる。

 24日からの「デザインタイドトーキョー2012」の一環で伊勢丹新宿店で披露される。ワイングラスが8万6100円、タンブラーが7万7700円で、初回制作各10点。

■ボッテガ・ヴェネタ 一枚革、フレスコ画に着想

 ファッションブランドでも過去の「アーカイブ」を見つめ直した創作が続く。

 ボッテガ・ヴェネタは2012〜13のクルーズコレクションで、クラッチなど3種のバッグ「セタ・セッタンタ」を発表した。デザイナーのトーマス・マイヤーが1970年代のバッグに触発されて、現代的な感覚で復刻したという。

 ボッテガ・ヴェネタのバッグは、細長い革を編み込んでいく「イントレチャート」が人気だが、「セタ・セッタンタ」には滑らかな一枚革が使われている。北イタリアの歴史的なフレスコ画に着想を得たという色彩に、クラシカルな雰囲気とモダニズムが同居する。(中島耕太郎)

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