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「ここが知りたい」

管理費等滞納者に区分所有法第59条を適用できるか(その2)

2007年10月06日

弁護士・田中峯子さん

【質問】 生活のルール(その四)では、区分所有法第59条によって管理費等滞納者の区分所有権を競売することが出来るかという問題で、裁判所によって判例が分かれているということでした。

 私たち管理組合にとっては、未納者が多くなると管理費が不足するため、値上げという選択となり、私の20戸ほどの小規模マンションでは、ほかの区分所有者が高額の管理費等を負担することになります。どうにかならないものでしょうか。

【答え】 マンションの管理組合や管理費等を正直に納めている人たちにとって、未納者がのうのうと生活していることに不満を募らせる人が多いのも事実です。

 あるマンションでは、未納者に“エレベーターに乗るな!”と申し入れたとも聞いています。勝訴判決を得た場合、未納者が部屋を他人に貸しているならば賃料を差し押えることが可能です。しかし、本人が居住し、自営業で給料をゼロとしているような人には、差し押さえできない場合もあります。ましてや、預金もなければ、銀行の債権差し押さえも空振りに終わり、本当に深刻な問題となっています。

 かつては動産執行といって、家財を差し押さえて中古業者に売り払ったものですが、時代は変わり、今では家財を買う人も少なく、差し押さえる側が粗大ゴミとして処分する費用を支払うことになってしまいます。

【質問】 それではどのようにして払わせるのですか。

【答え】 滞納者を競売によりマンションから出て行ってもらう方法として、区分所有法59条の競売申立を行う方法しか残された道はないというのが最近の管理組合理事の一致した意見のようです。

 しかし、ここでも裁判例は分かれています。

 (1)千葉地裁 平成15.8.20決定

 7年間滞納し続けた未納者に対して管理組合が催告しても、裁判をしても支払わなかったケースです。

 管理組合は区分所有法59条1項に基づき競売請求をし、民事執行法195条に基づき競売を申立てました。

 これに対して千葉地裁は、管理組合の未払管理費等の債権より優先する債権額(ローンの抵当権)が2700万円あって、余剰が生じる見込みがないから民事執行法63条2項で競売を取り消す決定をしました。

 (2)控訴審(東京高裁平成16.5.20判決)

 千葉地裁の原決定を取り消し、剰余主義の適用を否定しました。

 剰余主義とは、競売しても差し押さえ債権者(管理組合)に配当される余剰がない場合は、配当が来ない債権者の競売申立は無益な競売として認めないと云うものであります。

 この東京高裁の判決は、剰余の見込のない場合であってもマンションの権利関係の安定化の観点から担保権が売却され消滅すると考えるのが相当であるとして、区分所有法59条にもとづき競売できると認定しました。

 (3)東京高裁 平成18年11月1日判決

 ところが同じ東京高裁でも構成する裁判官が異なる部で、区分所有法59条の競売の要件が満たされていないとして管理組合敗訴の判決が出ました。

 この判決の要点は次のとおりです。

 (イ) 管理費の滞納は区分所有法6条1項の「共同の利益に反する行為」であると先ず認定しました。

 (ロ) しかし、次いで「管理費の未納をめぐる問題は本来、「先取特権」によって解決されるべきでものである」と認定しました。

 (ハ) 区分所有法59条の競売は本来、「金銭債権の確保を図るための民事執行法の例外であるから、その適用は極めて局限されるべきである」と認定し、「先取特権の実行や財産一般に対する強制執行によっても満足することができない場合に59条の競売は検討されるべきである」との判断基準を示しました。

 (二) そして、「差し押さえられた物件には3000万円の抵当権が設定されており、管理組合には配当が行かず、無剰余として取り消しとなることも想定される。抵当権の3000万円は、現時点では相当程度減少して(支払われて)いる可能性があるにもかかわらず、管理組合は現時点の抵当権の債権額について何ら主張・立証しない。対象となった住戸の“時価”も主張・立証していない」と判断し、管理組合は敗訴しました。

【質問】 平成18年の東京高裁の判決のように、条件というか基準を細かく出されてしまうと、管理組合は、滞納者から競落する新しい所有者に変えるための競売申し立ても出来なくなるとお先真っ暗になってしまい、方法が見出せませんね。

【答え】 しかし、平成18年の東京高裁判決は、具体的に条件や基準を示しているので、大変な作業ですが、これを一つ一つクリアしていくことが大切です。

 先取特権については、優先する抵当権の残債務が物件の“時価”より高額であれば、不可能であることは証明できます。

 (ハ)については、滞納管理費等の支払い命令、勝訴判決など執行力のある正本をとって、それに基づき、給料債権、預金債権、動産執行などを行えば良いのです。

 (二)については、

 抵当権の残債務がいくらかを調べればいい訳ですから、裁判所を通じての調査嘱託を抵当権者にすることができます。

 また、この差し押さえ物件の「時価」は、近辺の不動産業者の評価値を求めれば算出しやすいと思います。

 以上のように、大変面倒な手続きですが、この条件を一つ一つクリアすることによって展望が開けると思われます。


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