ペルー人家庭の一番の娯楽と言えば、やはり週末のランチタイムではないだろうか。家族大好き、しゃべるの大好きな彼らにとって、家族がそろう日曜の午後は最も大切な時間だ。仕事のこと、学校のこと、テレビの話題からご近所の噂話まで、余すところなくしゃべり続ける。日常のほんの小さな出来事でも喜怒哀楽を交えて大仰に話すから、話のタネがなくなることもない。たわいもない会話で、週末のひとときをみな心から楽しんでいる。食事という当たり前の行為がこの上ない娯楽になるなんて、なんとも幸せな話ではないだろうか。
ところで、ペルーはマチスモとして知られる男性優位社会だからだろうか、それとも単にマザコン男性が多いのか、この週末の娯楽は夫の実家で行われることが多いようだ。主婦たちにしてみれば、自分の実家でおしゃべりするほうが遥かに気楽で楽しいだろう。しかしそこはぐっと我慢して、よき妻を演じているらしい。
友人のスレマも、「いつもだんなの実家ばかり」と口にはするものの、生まれつきおしゃべり好きなこともあり、なんだかんだと言いながら自分もしっかり楽しんでいるようだった。子どもの頃からそういう環境で育ってきたため、あまり抵抗がないのだろう。
一方、ペルー人男性を夫に持つ外国人女性には、なじみの薄い習慣でもある。日曜は家族や親族同士の時間だと分かっていても、時には夫婦二人で、もしくは親子水入らずで静かに過ごしたいというのが本音だろう。外国人を妻に選ぶ男性は比較的リベラルな人が多いのだろうか、妻の希望通り家族の時間を優先してくれる夫もいると聞く。しかし後のフォローが大変で、ある日本人女性は「週末に夫の実家に行かなかった時は、あとで必ず義母に電話して、ひとしきり愚痴を聞いておくの。そうじゃないと『あなたたちは私を愛していないのね』って、そりゃもう、いじけちゃうからね」と苦笑いしていた。
家族が共に同じ時間を過ごし、おしゃべりすることが何よりの娯楽となるペルーの週末ランチ。家族の絆が強い国だからこそ保たれている習慣だ。しかしそれを支えているのは、謙虚で賢い妻たちのようである。