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AAN発
アジアと欧米の識者による様々な立場からの意見です
−アジア総合安全保障を求めて−シンポ参加3氏に聞く

 「アジア総合安全保障を求めて」と題する国際シンポジウム(筑波大先端学際領域研究センター主催、朝日新聞アジアネットワークなど後援)が2001年3月15、16両日、筑波大で開かれた。東アジアや米、ロ、欧からの安全保障専門家約30人が北東アジアがとるべきイニシアチブやブッシュ米政権のアジア政策をめぐって議論。軍事安保に偏らない多国間の総合安全保障を構想し、相互依存を深める地域共同体型の秩序づくりに向けたメッセージの発信が続いた。参加3氏の話を聞いた。

◆「共同体型秩序」早く 進藤榮一氏

 ブッシュ米政権の発足に伴い、クリントン政権の朝鮮半島政策を揺り戻し、北風を吹き込もうという気配がある。台湾への、イージス艦のような先端兵器売却の商談もある。そんなことでは、東アジアの冷戦がぶり返す。今回のシンポジウムでは冷戦への逆戻りを未然に防ぐ、東アジア地域の共同体型秩序づくりのメッセージ発信を試みた。

 第1は、冷戦期の古典的な安全保障観を問い直し、軍事に偏らない総合的な安保観を打ち出すことだ。

 仮想敵国をつくり同盟システムによって軍事的に対応するやり方は、時代遅れになった。グローバル化時代を迎え、通商や投資、労働力移動による相互依存が国境の壁をこえて浸透している。経済やエネルギー、食糧、環境を含めた立体的な総合安全保障政策が必要になる。

 第2に、これらの政策は東西南北すべての関係国がともに参加する多国間主義に立つ。東アジア地域の相互依存を深め不信を取り除けば、緊張緩和の土壌ができ、冷戦への逆行は避けられる。欧州で歴史的な役割を果たしている欧州安保協力機構(OSCE)のような存在を東アジアにもつくるにはどうすればいいか。

 欧州が地域共同体として国境の壁を低くし、冷戦期より全体として3割もの軍事費を削減できたのは、こうした取り組みがあったからだ。ところが東アジアでは、日米安保の強化や中国の軍事費増が続く。日本の中期防衛力整備計画(2001〜05年度、総額25兆1600億円)も膨れ上がっているが、総合安全保障を進めれば、軍事費は大幅に削減できる。

 米国だけが突出して安全であればいいという一国超大国主義が、ブッシュ政権のミサイル防衛構想にあらわれている。こうした覇権型秩序づくりの先行きは軍拡競争の泥沼になる。これに代わって東アジア地域の側から、共同体型秩序づくりのイニシアチブをとることが緊急の課題だ。
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 しんどう・えいいち 京都大卒。筑波大社会科学系教授。21世紀政策構想フォーラム代表。国際政治学。61歳。

◆南北鉄道で相互依存 趙利濟氏

 冷戦後の安全保障では、相互依存と信頼によるウィン・ウィン、あるいはプラス・サムの多国間関係を築くことが重要になる。

 (1)分断されている朝鮮半島縦断鉄道をつなぐ(2)シベリアやサハリンの天然ガス資源を配送するパイプラインを、ロシアから中国、朝鮮半島、日本列島、モンゴルに敷設する――などがそのきっかけになり得る。

 南北鉄道の通貫は南北朝鮮サミット後、現実味を帯びてきた。シベリア鉄道や中国東北部にもつながる。海運や空輸がリンクすれば、日本の製品が釜山に運ばれ、北上してロシア、中国にも届く。そんな多国間の枠組みができるといい。

 パイプラインのネットワークができれば、地域の安全保障を支える柱になる。通り道になる北朝鮮には通過料収入が入るし、天然ガスの供給も受けられる。沿線国にとってパイプラインは経済生命にかかわるから、破壊されるどころか大切にされるだろう。相互依存が深まることによる、安全保障上のメリットだ。

 こうした事業には国際協力が不可欠。北東アジア経済フォーラムが1993年の韓国会議で各国政府に勧告したのが、北東アジア開発銀行の設立。既存のアジア開発銀行や世銀は資金投入のコミットメントや優先順位があり、北東アジアには十分回せない。そこでこの地域への資金供給を優先する銀行が必要になる。

 2週間ほど前、ブッシュ新政権に影響力のあるスコウクロフト氏(元国家安全保障担当大統領補佐官)と話したら、「ある程度納得できる相互性が必要」と言っていた。金大中韓国大統領の太陽政策は国際的な人気が高いが、新政権はこれにいくらか現実的な味付けをしようとするだろう。

 それでも米国の朝鮮半島政策の根本は変わらないと思う。実務責任者になったジム・ケリー国務次官補は柔軟で、右と左とを問わず耳を傾ける。軍人出身だが、幅広い観点をもつ。
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 チョー・リージェイ 朝鮮半島出身。シカゴ大卒。ハワイ東西センター顧問。北東アジア経済フォーラム議長。64歳。

◆風ほど冷えぬ米朝 J・エンディコット氏

 1970年代、日米安保の文脈で大平正芳首相が総合安全保障の考え方を初めて打ち出した。そのころ日本は防衛費増の圧力をかけられていた。大平首相は「安全保障は軍事だけではない。たくましい経済を育て、開発援助を出し、諸国へ投資を進める」と言った。

 今度はそれをアジア全体に広げ、テーマも環境やエネルギー、食糧、文化にまで広げる。まず取り除くべきは、朝鮮半島に残る冷戦の遺物。この地域で多国間ベースの総合安保に踏み出すには、南北朝鮮、米朝、日朝などバイの関係改善を急ぐことが前提となる。

 金大中大統領が今月、ブッシュ大統領と会談した際、北朝鮮との関係改善が速すぎるという米側の懐疑が表面化した。これは政権が発足し外交政策を固める時につきものの現象と見ていい。米政府の実務責任者任命が進み、北朝鮮との交渉が再開されれば柔軟な空気が生まれる。それまであと半年近くかかる。

 私たちの研究所は92年から北東アジア非核地帯構想に取り組んできたが、2000年3月には金桂寛外務次官を団長とする北朝鮮代表団と討議した。これらの接触を通じて、北朝鮮側が関係改善にとても熱心なことがわかっている。

 北朝鮮の政策は大きく変わった。99年6月の仁川沖での西海事件で、北朝鮮海軍が韓国海軍に決定的な敗北を喫したのも一因だ。出動艦艇のすべてをあっという間に撃沈・大破され、北朝鮮側は衝撃を受けた。旧式の装備が役に立たないことや、西側のテクノロジーの必要性を痛感したからだ。これ以降、北朝鮮による軍事的な挑発は起きていない。

 ブッシュ政権が朝鮮半島に北風を吹き込むという人がいるが、北風ほど冷たくはならないと思う。実際に交渉を始めれば、北朝鮮の変化がわかるだろうから。
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 タフト大フレッチャー法律外交スクール修了。米空軍大佐をへて、ジョージア工科大教授。64歳。

2001年3月23日
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