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The Asahi Shimbun Asia Network
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AAN発
アジアと欧米の識者による様々な立場からの意見です
−環境政策に研究者の知恵を−記者は考える
川崎 剛
アジアネットワーク主査

 「アジア環境白書」(東洋経済新報社)という本がある。廃棄物やエネルギー政策など、アジア諸国の環境問題について、個々の問題と国別の傾向を分析する内容だ。民間の日本環境会議の研究者が編集委員会をつくり1997年に創刊した。2、3年ごとに改訂版を出す計画で、日本の企業活動の影響や政府の環境協力のあり方も提言する。アジア全体の環境問題を継続的に扱う「白書」は初めて。  その編集委員会合宿に参加させてもらった。大学の先生や大学院生、シンクタンクの研究者、非政府組織(NGO)の職員ら約40人が、東京大学の小さな教室にぎゅうぎゅうづめだ。

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 「カンボジアの残留地雷やフィリピンの米軍基地跡地の汚染や被害を取り上げたい」「それなら沖縄からの報告も」「インドの地震の報告を災害と環境としてまとめては」「タイの政権交代で、公共事業がストップした」「中国内陸部の砂漠化と森林破壊も深刻だ」。さまざまな分野と地域の専門家の議論が続く。大半が手弁当での参加だ。

 四日市や水俣などの公害研究から始まった日本の環境学者たちがアジアに目を向けたのは、日本企業の活動で東南アジアなどに被害が出ているという認識からだった。欧州の研究者が地域全体で取り組んでいることからも、アジア全体をにらんだ活動が必要なことに気づかされた。

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 92年の国連環境開発会議(地球サミット)を経て、地球全体の視点が求められるようになり、現地調査やワークショップを重ね、97年に初めての白書ができた。内外の80人を超える執筆者、調査協力者へのお礼は白書(2800円)を2冊送るだけ。英語と韓国語に翻訳されている。

 地の塩のような努力だ。政治的に完全に自由ではないアジア諸国で、現地のNGOと協力して環境被害を掘り起こしてきた。今後は、NGO、研究者のネットワークづくりに加え、知見を政策に生かすことを考えるべきだろう。

 スイスのダボスで毎年開かれる賢人会議の参加者には、米国のシンクタンクであるワールドウォッチ研究所の「地球白書」が必読書という。アジアでも首脳や官僚が多数の国際会議を開いているが、「アジア環境白書」はどれだけ知られているだろうか。

 政策を変える。そのためには、研究者やNGOと、政府、自治体、国際機構が日常的に話し合う場を増やし、政府側もNGOの提言をすくい上げる必要がある。昨年秋の2000/01年版で白書は「APEC(アジア太平洋経済協力会議)に対応するような、アジアの環境協力機構が必要だ」と提言した。環境政策と環境外交が、官民の力を集めて進められるといい。

2001年5月18日
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