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AAN発
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「韓国とゆかり」お言葉の波紋
編集委員・波佐場 清
(1999〜2000年、AAN研究員)

 天皇陛下が昨年末、誕生日会見で「韓国とのゆかりを感じています」と述べたことを、韓国旅行中に知った。

 朝、泊まっていたソウルのホテル近くで韓国紙を買うと、1面に「日本の天皇、韓(朝鮮)半島との血縁関係に初めて言及」と、大きな見出しが躍っている。

 各紙とも似たような扱いと見出し。ホテルでフロント係員に感想を求めると、「驚いた。天皇の祖先は我が国の人だったんですね」。

 市民の反応をもっと知りたくて国立中央博物館へ行き、百済・武寧王陵の出土品コーナーの前で何人かに聞いた。そこでは、天皇が続日本紀の記述を引いて桓武天皇の生母がその子孫であるとした武寧王の金冠などの装飾品を陵内部の大きなパネルとともに展示している。

 「私たちは知っていた。意外ではない」

 「体面上、言いにくかったのではないか。本当のことを認めたことはいいことだ」

 そばにいた50歳前後のボランティアの女性は「歴史に関心のある韓国人ならみんな知っている。天皇の発言には親近感を覚えます」。

              *            *

 昭和天皇逝去の折、当時ソウル特派員だった私に「先祖がうちの国の方だったそうで」と悲しげに語ったお年寄りのことも思い出した。

 韓国人の天皇を見る目は複雑だ。「国の中心があり、うらやましい」という声の一方で、「天皇への忠義」を強要されたという過去の苦い体験についても繰り返し聞かされた。韓国の歴代大統領が訪日の度にその「お言葉」にこだわったのもそうした文脈抜きには理解できない。

 韓国紙は「友好のメッセージ」とおおむね好意的に受け止めている。その一方で、「日本ではタブー視され、多くのメディアは肝心の部分を報道しなかった」という指摘も目につく。「植民地支配を合理化するために掲げた『日鮮同祖論』の焼き直しと警戒する声もある」と書いた社説まであり、歴史の傷跡の深さに改めて感じ入った。

              *            *

 天皇の発言内容自体、とっぴなことではない。例えば、中学校の社会科の教科書(大阪書籍)は「桓武天皇の母方の祖父は渡来人の子孫でした」と記述している。司馬遼太郎の「空海の風景」は、桓武天皇の生母・高野新笠に関し「百済から渡来した者の子で、実家はなお百済の遺習をもっていたらしい」と書く。

 今回、天皇がその旨を自らの言葉で語ったのはニュースだった。しかし、私たちはこれまで天皇に関し、そうした当たり前のことをどれほど当たり前に語ってきたのか。

 韓国における波紋の大きさで思ったのは、私たちの「自己抑制」がかえって過剰な跳ね返りを呼んだ面はなかったのか、ということだった。

2002年1月10日・大阪本社朝刊に掲載
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