Top
朝日新聞社 www.asahi.com ENGLISH
asahi.com
home  > 国際  > AAN  > 

The Asahi Shimbun Asia Network
 ホーム | 今週のコラム | AAN発 | 年間リポート | アジア人記者の目 | リンク | English
AAN発
米国のアジア安保戦略
「制約あれば単独行動も」−アーミテージ米国務副長官に聞く

政治部・佐々木芳隆(AAN研究員)

 ブッシュ米大統領の日韓中歴訪が終わり、唯一の超大国のテロ後のアジア安保戦略が浮かび上がった。軍事費の大幅増額と他国の追随を許さないミサイル防衛システム開発を背景に、反テロ戦争第2段階の時期を探る政権の姿には力の信奉がにじむ。政権の安保戦略を担う1人アーミテージ国務副長官にただすと「米国は一方的に行動する権利を留保する」という強い言葉が返ってきた。

アーミテージ米国務副長官
インタビューに答えるリチャード・アーミテージ米国務副長官=2月4日、ワシントンの米国務省で

 米中は「戦略対話」の関係

 ――米中、日中とも国交正常化30周年。長い目で見て中国は米国や日本の脅威になりますか。

 「ならないことを希望するが先になってみないとわからない。米国は中国と非友好関係になりたくない。日本にも中国と非友好的になってほしくない。将来を決めるのは今後の中国の行動だ」

 ――ブッシュ大統領はミサイル防衛システム開発を決め、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約脱退をロシアに通告した。反対している中国には説明チームを派遣したと聞きました。

 「日韓、中国にも同じチームを送った。確かに中国は賛成していないが、ABM条約脱退へのロシアの反応が意外と静かなのに驚いていたようだ。説明チームとの議論は非常に実務的だ」

 ――中国はどんな対抗措置を取りますか。

 「取ってこないだろう。中国はすでに自前の戦略兵器現代化計画(複数核弾頭化など)に着手しており、今後もそのコースに乗っていくに違いない。ABM脱退の影響があるとしても、計画をわずかにスピードアップするぐらいのことだ」

 ――中国との対話をどう進めますか。

 「今の米中はいい関係だ。大統領訪中に続いて江沢民国家主席が訪米する。反テロ協力でも次官補級で協議。今月の李肇星外交副部長訪米への答礼訪中もある。いずれも(損得勘定優先の)戦略対話の性格を帯びる。日本との間にあるような特別のチャンネルが開けるとは思わない」

 ――昨年暮れ、米国は日本側に東南アジアへの中国の影響力浸透に対応するよう助言したと聞きました。

 「米国は(自由貿易協定や経済連携構想など)東南アジアと日本の関係を再生させる小泉首相の行動を歓迎している」

 ――昨年11月のASEANプラス3(中国、韓国、日本)首脳会議に「東アジア・コミュニティーに向けて」と題する報告書が提出され、政治・安全保障をめぐる地域協力や統合の議論が始まった。小泉首相は1月、東アジア、豪州、ニュージーランドによるコミュニティーの創設を提案し、排他的であってはならないと言いました。

 「90年代初頭の(マレーシアのマハティール首相が提唱した)東アジア経済圏構想は、米国や豪州、ニュージーランドを排除しようとしたから不首尾に終わった」

 「すべての関係国が参加する多国間機構はいい。米国はアジア系国民が増えているからだけでなく、国益や地理的位置からも太平洋コミュニティー、アジアコミュニティーの一部と感じている。小泉首相の構想が根づき支持されるなら、米国はもちろん支持する」

 ――日米同盟という2国間の利益と多国間協調の間に矛盾は?

 「日米2国間同盟を常に優先させるから、矛盾は生じない」

 ――あなたは多国間協調の現実性に懐疑的だったのでは。反テロ戦争の経験で、考え方は変わりましたか。

 「多国間主義は結構だが、米国は第一に国益が脅かされる場合には一方的に行動する権利を留保する。第二に2国間同盟を核心と位置づけ、最優先する。多国間の取り組みに制約が大きい場合には2国、あるいは単独で行動する」

 ――米大統領は北朝鮮とイラン、イラクを「悪の枢軸」と呼びました。

 「知っていることを率直に言ったまでだ。大統領は特に北朝鮮に対し、米国と話したいのなら一刻も早く会うと決めなさいと促している。米国はいつ、どこでも、前提条件なしに会う」

            ◇        ◇        ◇

 「日米」軸に関与政策 一国超大国の危うさ

 副長官が政権入り前にまとめた報告書「米国と日本――成熟したパートナーシップへの前進」は米日同盟を米英同盟になぞらえ、中国などアジアへの関与政策の足場とするよう提起した。今やその構図が現実に目指されている。

 昨年12月来日した米国家安全保障会議(NSC)幹部は政府与党の首脳らに、(1)中国が東南アジア諸国連合(ASEAN)との自由貿易地域創設に動いている(2)東南アジアの対中輸出が対日輸出を上回るようになった、と指摘。日本が中国の影響力浸透に対応するよう注文した。1月の小泉首相ASEAN歴訪の実績や提案を副長官が評価したのは、こうした経過があったからだ。

 ミサイル防衛システムの開発・配備が中国との軍拡競争を招くという懸念もどこ吹く風。米国家情報評議会(NIC)が1月に作成した報告書は「15年までに主として米国向けに配備される中国の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の弾頭数は75個から100個。米ロの戦略ミサイル戦力に比べてかなり能力が低い」。大した軍拡ではないと言わんばかりだ。

 相手が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)となると基調が変わる。国務省筋の説明には、北朝鮮が米朝交渉再開に応じないと反テロ戦争第二段階の標的になりうるとの威嚇も見えた。「北朝鮮が03年まで凍結しているのは発射実験だけ。射程の長い新弾道ミサイルを開発中で、イランに技術を輸出した。大統領は反テロ戦争の重要な目的として大量破壊兵器運搬手段の拡散防止を考えている」

 米国は反テロ戦争でアフガン周辺国や英仏中ロなどの協力を得た。単独行動主義批判を気にしていたパウエル国務長官が「われわれは多国間主義だ」と演説する一幕も。だが、クリントン前政権で国務省政策企画部長を務めたハルペリン氏は指摘する。「ブッシュ政権の言う多国間主義は幻想だ。自分が作った秩序に他国も加わっていいというだけで、決定過程や解決策を共有していない。他の人々に自分の要求を受け入れてもらうための妥協もしていない」

 戦時機運に後押しされ、3793億ドル(約50兆円)もの突出した軍事費を計上する一国超大国のブッシュ政権。力ずくと裏腹の危うさをはらんでいる。

2002年2月25日
▼バックナンバーへ

Homeへ | 画面上へ