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AAN発
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対中貧困支援で深まる交流
永持裕紀
AAN「動く中国とつきあう」研究チーム

 今年度分の中国への円借款事業の選定が秋から本格化する。国交正常化30周年の節目に当たるが、政府の途上国援助(ODA)の見直し論に加え、発展する中国への警戒感、そして瀋陽総領事館事件などによる対中感情の悪化が重なる。中国に回す金があれば国内に回せ。そんな意見までにらみ合わせての作業となる。

 中でも、環境保全、知日派人材育成とともに対中円借款の重点分野となっている貧困対策支援について、事業選定を進める官僚たち自身にも「国内向けにどんな説明が可能か」という戸惑いがある。援助の指針である「国益にかなう援助」とどう折り合いをつけるか。一方で、自民党などの対中強硬派は「貧困対策はあくまで中国自身の仕事だ」という原則論を強める。

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 1人あたりの国内総生産(GDP)が上海の約13分の1で、北京の約8分の1。中国で最も貧しいとされる貴州省での貧困対策を取材した。

 国際協力事業団(JICA)は、省都・貴陽から約250キロにある山あいの三都県で、新しい形の援助事業を始めている。丹念な事前調査で地元の援助希望が衛生分野の改善などにあることをつかみ、事業の実施を初めて中国の非政府組織(NGO)に委託した。日本のNGO、家族計画国際協力財団(ジョイセフ)が寄生虫予防や母子保健などの分野で技術的に助ける枠組みも初めて整えた。事業予算は割安ながら、きめ細かな生活改善援助となった。

 この試みは、日中交流の格好の舞台になっているようだ。事業に一貫して携わったJICA中国事務所の斎藤淳子さんは「日本のNGOなどの発言や行動を通じて、几帳面(きちょうめん)さなど日本人の長所が中国側に評価された」と話し、「日本人を理解してもらうことは国益だと思います」と言い切った。

 円借款にせよ技術協力にせよ、援助の現場とは本来生き生きとした国際交流の場であることに改めて気付いた。

 もうひとつ印象的だったのは、貧しい地域自身が「時間との勝負」という意識を強めていることだった。

 貴州省長順県政府の范順超・扶貧弁公室主任は「北京での五輪開催も決まった。中国が途上国として受け取っている国際援助がいまの調子でいつまでも続くとは考えていない」と見通した。海外からの支援を期待できるのはせいぜいあと10年という見方もあった。その間に、圧倒的な貧しさの中で暮らす人々をどれだけ減らせるかというわけだ。

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 援助とは交流である。そして貧困対策を急ぎたい中国側の機運に効率的な援助でこたえ、共通の目的に心を重ね合えるなら、交流は一層深まるだろう。その積み重ねは隣国との信頼醸成を進める国益につながっていくはずだ。

2002年9月2日
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