波佐場 清
編集委員(元AAN研究員)
北朝鮮はどこまで本気で核開発をやる気なのか。日本の外務省元高官と、意見を交わす機会があった。
元高官は言う。
「もし、北朝鮮に『核』がなければ、ただの貧乏な小国に過ぎない。韓国と対抗し、米国を交渉に引き出すには、核しかない。経済難のなか、軍事面の劣勢を挽回(ばんかい)するうえからも、核カードを手放すとは思えない」
私は、韓国の金大中政権の中枢にいる高官が、政権発足当初に、私に語ってくれた話を思い出していた。
「仮に、あなたが北朝鮮の指導者だとしたら、今の状況で核カードを手放しますか。この北東アジアで核の傘がないのは北朝鮮の上空だけなのですよ」
ここまでは、2人とも一致しているが、その先が違う。日本の元高官は「いまのところ平和的解決に展望を見いだせない」と言うのに対し、韓国の高官は「我々は北が核に執着しなくても安心できる環境をつくる。それが結局、核開発をあきらめさせる近道なのだ」と、「太陽政策」をじゅんじゅんと説いたのだった。
5年の任期切れが迫ったが、金大中大統領の信念は変わらない。24日、外国人記者との会見では、こう語った。
「朝鮮半島には太陽政策以外にないということで世界は一致している。その意味でこの政策には生命力がある。米朝関係がうまく行き、核問題が解決すれば、全面的な成功段階に入る。太陽政策は南北が平和共存して協力し10年、20年後にお互い安心しあえる関係ができたところで統一しようという政策だということを、いま一度強調したい」
後継には、太陽政策の継続と発展を訴えた盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏が選ばれた。盧氏は朝日新聞との会見で「多くの人が北朝鮮に疑念を持っているが、体制の安定と経済支援を保証すれば、核兵器を放棄する意思を持っていると信じる」と語っている。
我々は北朝鮮に、どう対処すればいいのか。
一部には、いかにも勇ましげな「圧力」論や「制裁」論もある。しかし、それで確かな展望が開けるかどうか。いわんや「平和的解決」となると甚だ危うい。その意味では長期的展望を示した太陽政策の方が説得力がある。
日本政府はこの間、太陽政策を支持すると言ってきた。昨秋の小泉首相の訪朝と日朝平壌宣言は、その脈絡上にある。しかし、日朝交渉はその後、暗礁に乗り上げたままだ。
いま重要なのは、太陽政策と連携した長期的な対北朝鮮政策のなかで、拉致問題や核問題の解決を図っていくことだ。それには、あらゆるチャンネルを使って、日朝交渉の再開を目指すほかにない。