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AAN発
「国際淡水年に考える」(上)


ヒ素に汚れるアジアの水/急な開発に自然が逆襲か


渡辺 斉
論説委員

"アジアの主なヒ素地域"
アジアのヒ素ネットワークの活動報告(昨年12月)などによる。カッコ内の数字は患者数(推定を含む)。数字のない国は患者数が未確認。

高濃度のヒ素が検出された井戸は、茨城県神栖町の住宅地、8戸の平屋が並ぶ一角にあった。すでに埋められたが、地下には旧日本軍の毒ガス兵器が残っているのでは、と疑われている。井戸水を口にしてきた1歳の男の子は発育が遅れ、7歳の少女は体が震えて夜も熟睡できない。そんな健康被害が出ている。

ヒ素は、毒ガスのような人為的なものだけでなく、地球の自然界に多量に眠っているだけにやっかいだ。そのヒ素が近年、地下の眠りから覚め、各地の井戸水に溶け出してきている。

バングラデシュ、インド、中国。最近は汚染がネパールやカンボジア、ベトナムなど、アジアの大地に広く浸透していることが分かってきた。

測量や地質調査を手がける国際航業の柴崎直明さん(42)は、国際協力事業団(JICA)の委託や会社独自の仕事でヒ素汚染の実態を調べている。

01年7月にはベトナム南部へ飛んだ。メコン川流域のカンボジア国境に近い町、カオランの農村部で井戸水を測って驚いた。「試験紙がドバーッと、茶色っぽい赤に変わった」

試験紙はヒ素濃度の低い方から薄い黄色、黄色、オレンジ、赤と変色する。この時の濃度は水1リットル当たり1.0ミリグラム以上。世界保健機関(WHO)や日本の環境基準の100倍、ベトナム基準の20倍を超えた。

「ありましたか」。一緒にいた政府の研究者はため息を漏らした。北部ではすでに汚染が見つかり、南部も心配されていたのだ。

ヒ素中毒の患者は見なかったが、集まった農民からは不安の声も出た。「そう言えば、その水を飲んでいた井戸の持ち主はがんで亡くなった」。あり得ないことではない。ヒ素は皮膚や内臓のがんを誘発する恐れがあると言われる。

5カ所の測定で4カ所がWHO基準を上回り、うち3カ所がベトナム基準をも上回った。

上野登・宮崎大名誉教授は、九州を足場に途上国援助の活動をする「アジア砒素ネットワーク」の代表でもある。

ネパール南部のタライ平原で昨年3月、30歳くらいの男性に会った。片手には黒い豆粒のようなイボが10個近くもあった。患者宅の井戸水は、ヒ素濃度がWHO基準の100倍だった。

上野さんによると、ヒ素はヒマラヤなど山岳地から気の遠くなるような年月をかけて川を伝い、下流域の地下にたまった。それが何らかの原因で地下水に溶け出し、アジアのヒ素汚染をもたらしたとみられる。

「過剰な農業開発や井戸掘りラッシュが地下の環境を変えたことが、背景にはある」と語る。

中国の内モンゴル南部はこの半世紀、黄河から多量の水を引き、次々に井戸を掘って大穀倉地帯に変わった。一方で、井戸水のヒ素汚染が深刻化している。私が訪れた内モンゴルの村は、住民350人の半数近くがヒ素中毒だった。汚染は急激な開発に対する自然の逆襲にも思われる。

アジアの汚染地では、政府や国際機関、非政府組織(NGO)が安全な井戸を掘り、ヒ素除去装置を設けているが、手が回らないのが実情だ。

今年は国連が水問題に取り組むために定めた「国際淡水年」だ。水とどうつき合っていくか、改めて考えたい。

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