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日中の過去 克服する「覚悟」
小倉 和夫(おぐら・かずお)
国際交流基金理事長

元駐韓、駐仏大使。03年から青山学院大学教授。朝日新聞アジアネットワーク委員。65歳。

天津南開大学の日本研究センター。赤い「熱烈歓迎」の大看板のかかった門を入って、新装の建物の2階へ上がる。そこで、周恩来総理の若き時代の思想の変化、とりわけ共産主義の道に入った経緯について、ささやかな講演を行った。

1919年8月、周恩来氏は当時まだ15歳のあどけない、それでいて弁の立つ女学生、デン・文淑(後の妻、デン・穎超たちとともに、革新と革心をスローガンにして、「覚悟社」という団体を結成した。

中国語の「覚悟」とは、日本語の覚醒(かくせい)の意味であり、新しい認識と自省の意味であった。周恩来が、病める祖国の再建のために、覚醒し、真剣に運動を始めたのは、この時からである。そして、日本留学、入獄、フランス留学ーー。 そうした話を終えて、大学院生や教授たちの質問を受けた。

1人の学生がさっと手をあげた。よどみない日本語で聞いてきた。

「日本の政治指導者はなぜ靖国神社に参拝するのか、そして、そのことについてあなたはどう思うか、あなたの意見を聞かせて欲しい」

質問は、正に踏み絵であった。こちらが、日中関係の過去の歴史の重さについて、果たして「覚醒」しているかを試す踏み絵であった。

多くの中国の学生や研究者たちの前で、簡単に踏み絵を踏むわけにはゆかない。踏み絵を見ながらも足は少し違う方向に向けた。

「周恩来総理はかつて、日本国民も、中国人民も、共に日本軍国主義の被害者であった、と言われた。日本人は、もとより、日本軍国主義が中国の人々に与えた傷跡を忘れてはならない。他方、近年、中国の指導者の口から、日本国民も中国人民も、共に被害者であるというセリフはあまり聞かれないのは、どうしてなのであろうか」と逆に問いを発した。 その翌日、長年、日中関係に携わってきた劉徳有・元文化省次官と親しく語り合う機会があった。

「中国人は、なぜ今なお、あれほど日本との『過去』の問題にこだわるのか」

半分、政治的あいさつを兼ねた気持ちでそう聞いてみた。劉氏は、微笑をたたえながら、こちらの問いに直接は答えず、自らの体験を話したいと言って、次のように語った。

「自分は大連で、なまじ日本語が出来たばっかりに、戦後5年もたってから通訳に駆り出された。自分の周囲の人々も、また、自分自身も、今さらなんでまた日本語の通訳をやるのかと自分に問いかけた。一日一日が、自分の心の中での葛藤(かっとう)を克服し、新生中国と日中関係のために働くことの意味を考え、『覚悟する』(悟って、覚醒する)日々であった。自分はこうして、必死に、一日一日自分の中の過去を克服してきた。それは、新しい出発への『覚悟』の道だった」 劉氏の言葉は、個人個人の過去克服の努力を語ったものだったが、中国の指導者や幹部たちは、自分自身の過去の克服ばかりでなく、他人の過去の克服にも心を傾けねばならなかった。そのことに触れたのは、周恩来総理の通訳をした王効賢女史だった。

「日中国交正常化交渉や日中平和友好条約の話し合いなど、大きなことがらの節目節目で、中国の党幹部や日中関係の担当者は中国全土へ散らばり、そうした交渉や話し合いの意味を説き、キャンペーンを行いました」

淡々とした口調で王女史はそう述べた。

靖国問題を始め、いわゆる「過去」にまつわる問題の本質は、「過去」についての謝罪や「戦犯」の処遇にあるのではない。それは、国民一人一人が、どのように自らの過去を自省したか、また、そのために指導者がどこまで社会に自省を訴えたかの問題、すなわち、「覚悟」の問題なのだ。

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