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AAN発

孔魯明AAN会長(元韓国外相)を囲んで

漂流する韓米同盟、国民の支持が課題

朝日新聞アジアネットワーク会長の孔魯明・元韓国外相は6月半ばに朝日新聞社内の勉強会で講演し、在韓米軍の削減計画で揺れる韓米同盟の今後のあり方や韓国内の反米感情の背景、さらに日本、中国との関係の見通しなどについて語った。
孔魯明
孔魯明AAN会長
【 孔魯明(コン・ノミョン)氏の略歴 】
1932年2月   咸鏡北道(北朝鮮)生れ
  58年     外務部(外務省)入部
  61年     ソウル大学(法科)卒業
  62−64年  駐米大使館勤務
  66−69年  駐日大使館勤務
  70年     外務部東北アジア課長
  77−79年  外務部アジア局長
  79−80年  駐カイロ総領事
  80−83年  外務部政務次官補及び第1次官補
  83−86年  駐ブラジル大使
  86−90年  駐ニューヨーク総領事
  90−92年  初代駐ソ連大使及び駐ロシア大使
  92−93年  外交安保研究院長
  92年     南北高位級会談代表
           南北核統制共同委員会南側委員長
  93−94年  駐日大使
  94−96年  外務部長官(外相)
  97−98年  統一顧問会議顧問
  97−03年  東国大学日本学研究所長
2002−03年  平昌冬季五輪(2010年)誘致委員長
  03年8月から 日韓フォーラム韓国側議長
                       現在   72才

【講演要旨】

大統領弾劾訴追の後の韓国の内外政策の中で、今一番関心の的になっているのは、やっぱり在韓米軍の撤退、それに伴う韓米関係、韓米同盟の行方でございます。

内政問題で今話題になっているのは首都の移転の話ですね。行政首都じゃなくてむしろ遷都、行政府ばかりじゃなくて司法・国会をひっくるめた遷都ということで、今大きな話題になりました。これは一介の法律で決められるべき問題ではなくて、むしろ国民投票を経てやるべきだという議論が、市民の中からも出ているし、野党の中からも出て、これが今相当の関心事になっております。

国内問題は別にしまして、主に国際的な問題に絞ってお話を申し上げたいと思います。今韓国で起こっている在韓米軍のイラクへの転出、その後に続く1万2千名の削減の話。こういうアメリカの決定が世界戦略の中で米軍の再配置という動きの一環であるというとらえ方がもちろん正当なとらえ方なんですけど、そうさせた大きな背景は今の政府の反米政策、あるいは米国離れの政策が促進させたのではないかという議論が相当あるわけです。

在韓米軍削減に関心薄い日本

そういう反米感情を背景に政権の座についた現韓国政府の対米姿勢が、結局アメリカのこういう決定を促したということと関連しまして、日本の一部せっかちなお方の中には「もう韓米同盟は終わりだ」というような話をする方もいらっしゃいますし、メディアの中でもそういう話がちらちら出ています。

この話と関連して思いつくのが、1971〜2年のニクソン・ドクトリンと前後して、在韓米軍2個師団のうち第7師団が撤退し、今の第2師団が残った話。それからその後のカーター政権の成立とともに出てきた在韓陸上兵力の撤退の話。その当時日本の中では、これは大変な問題だというとらえ方で、日本政府自体も非常に深刻な憂慮をアメリカ政府に伝えた。こういう経緯がございます。

それに比べて今日、韓米同盟はもう解体に入ったというような、むしろ涼しい顔で見る見方というのが、むしろ日本の中には多いのじゃないか。かれこれ25年から30年前と今日の時代と大いに変わっていると言えると思います。

根づく反米感情、「北朝鮮の脅威」でも韓米にギャップ

韓国の中の反米感情がこういう事態に導いたという考え方の大きな背景は、やっぱり2002年の秋にありました女子中学生2人の死亡事件。これが契機となって、いわゆるキャンドルライトのデモ、これが大きく反米感情をあおったということが挙げられます。

しかし反米デモは何も韓国だけに存在するのではない。今年の、ちょうど4月15日の韓国総選挙のときに、不在者投票を済ませてハワイに行きまして、CSIS(戦略問題研究所)のパシフィックフォーラムに参加しました。パシフィックフォーラム代表のラルフ・コッサと、韓国の新アジア秩序研究会の学者たち、中国の学者、この3者が集まりまして会合をやったんです。その場で韓国側のある学者が、反米デモは何も韓国だけの話ではない、日本にも、フランスもドイツも、それから中東にもあるではないかと言ったときに、ニューヨークタイムスの東京支局長をやっていたリチャード・ハロランが声を張り上げて、「韓国は違うんだ。韓国は韓国防衛のために5万名のアメリカの若い人々が死んでいったではないか。それを中東とかフランス、ドイツと一緒に話をすることはけしからん」と言いました。これは彼1人の考えではなくて、相当数のアメリカ人、特にアジア問題を見ているアメリカ人の中にはこういう考え方が非常に強いのではないか。私としましては非常に懸念される現象であると考えています。

韓国における反米感情が表に出始めたのは、1980年のいわゆる光州事件ですね。金大中ら当時の野党指導者を逮捕することに始まる光洲事件。この事件の後、全斗煥大統領による軍部の政権が成り立ち、その軍事政権をアメリカが支持したということで、幅広い反米デモ、反米感情というのが表に出始めた。そして女子学生の死亡事件などを経て、非常に強く表に出始めた。90年代に入り国民の60%以上がそういう意識を表明するような世論調査も出てきています。

最近韓国の国民意識調査を見ますと、今年の初め、1月15日のリサーチ&リサーチという世論調査機関の調査で、「韓国にとって最も脅威的な国はどこですか」という質問に対して、アメリカが39%、北朝鮮が33%、中国は12%、日本は8%。それを10年前の1993年に行われた同じような調査と比べますと、一番脅威である国というのは北朝鮮が44%、日本が15%、中国が4%、アメリカが1%。こういうふうに出ていたわけです。伝統的に同盟はお互いに共通の脅威を持って初めて成り立つ。韓米間では相当なずれが出ていることが問題を難しくしている大きな原因だと思います。

去年の4月にアメリカのFOXニュースがオピニオン・ダイナミクス社と共同で調査したアメリカ人の意識調査があります。一番大きな脅威はどこかといったら、アメリカ人の54%が北朝鮮と言っているんですね。その時点で、ちょうど1年前、10%のアメリカ人がイラクを挙げています。イランは6%。2000年の金大中大統領の南北サミットの会談以降、韓国国民の中には北朝鮮をいわゆる脅威とみなすよりは、むしろ和解と協力の対象というふうにとらえる傾向が強くなってきています。こういうものが今韓米同盟が漂流する大きなゆえんだと見てよろしいかと思います。

韓米同盟にかわる代案なし

こういう情勢のさなかに在韓米軍は今、2007年までに漢江以南のほうに移る予定で、陸上兵力の3分の1を削減する、こういう計画を今韓国と協議をするという状態に至って、まさに韓米同盟は岐路に立っています。

こういう状況のもとで韓国側にどういう選択肢があり得るかと言えば、若干空理空論に走るかもわかりませんけど、韓米同盟は新しい衣を着せるか、あるいは解体するか。こういう選択肢の中で、大体どういうことが韓国側として考えられるかといえば、第一に考えられることは自主的な安保路線ですね。インディペンデントな安保政策を持つというのも選択肢の1つでしょう。

それからもう一つは、このごろよく言われるアメリカ離れから中国に傾斜するという親中国路線をとるのか。あるいは韓国、東アジアにおいてもNATOみたいな、こういうマルチの安保体制をつくることができたら、それも一つの選択肢にはなるんでしょうけど。

考えてみて、自主路線は絶対不可能な話。韓国の、特に地政学的な条件から考えた場合、力量があるわけでもないし、自分の力で平和と安全の確保というのは自ずから限界があります。世界のどの国も、ひいてはアメリカも自分一人で安保政策をやっていけないような状況のもとで、自主路線というのはまさに現実性のないお話でございます。

それから親中路線の話。大きな問題になっている韓国の対中傾斜があるのかないのかという親中路線の話も、アメリカと中国の力の関係が、今のようにアメリカの(強力な)立場に中国が立てば、あるいは現実的に考えられることができましょうけど、中国がアメリカの軍事力をしのいで、そういう立場に立つのは、中国自身の言葉によれば2050年になる、アメリカのGDPを超えると彼らは言っていますし、一部の研究所なんかの数字は2020年とか2030年とか言っていますが。

今韓米同盟をとやかく言っているうちの若い人たちの問題はどこにあるか。彼らが反対する、または、こだわる理由は、アメリカに隷属するみたいな格好、対等の関係でないと、そういうのが大きい。では中国がそうなった場合、ただアメリカにかわって中国が入るだけの話で、そういう中国だからといって今のような韓米同盟と違うようなものが持てるわけでもないわけです。

マルチによる安保体制というのは、理論的にしても、これから20年、30年先にどうなるかわかりませんけれども、少なくとも僕の生きている限りはちょっと現実性がないと考えざるを得ない。

こういってみれば韓国には韓米同盟にかわる対案というのはないわけです。ではどうして国民の幅広い支持を得ながらこの韓米同盟を継続させるかというのが、今韓国政府に与えられた大きな課題であり、大きな今後の問題であると思います。

対等パートナーシップへの衣替えがカギ

先般私も参席したんですけど、5月21日、韓国の韓米協会という親善協会がございまして、その朝餐会に今の外交通商長官である潘基文さんが招かれて演説をしました。アメリカ大使も来ていたし、キャンベルというアメリカ第8軍の司令官も参席して、話をし合ったんです。

その場で潘基文長官が言ったことには、今韓米関係は大きい挑戦に直面した。その挑戦はこの韓国内の反米感情をどう対処していくかということ。それから韓米関係の未来に対する明確なビジョンをどう打ち出すか。こういうのが韓米関係における今の大きいチャレンジであるということを言いながら、彼の考えを述べていたんです。

今、韓米関係を新しい衣に着がえさせる。一番問題になることは、国民のコンセンサスを得ることですよね。国民のコンセンサスを得るためには、韓米同盟が今の若い人たちの目に映るような不平等な関係から、より対等なパートナーシップ関係に持っていくことが前提になるんですけど、そうなると大体2つの問題が起こります。何かと言えば、韓国戦争(朝鮮戦争)以来、駐韓米軍は韓国に対する作戦統制権を持っていることです。これは韓国戦争が起きたそのとき、韓国政府が大田(テジョン)に撤退しまして、そこでアメリカと、いわゆるUNですけれども協定を結びまして、UN総司令官に韓国の作戦権、指揮権を与えているんです。それによって今韓国軍は、平時は別ですけど、有事、戦時になりますと、自動的に作戦統制権がアメリカの連合司令官のほうに入るようになっています。それを変えて、有事にも韓国軍の指揮権を韓国は持つ。そしてそれを連合作戦に機能的に適用することができるような仕組みをどうつくるかというのが課題の一つ。

もう一つは、日本のアメリカとの安保条約は、6条ですか、この極東地域に対するアメリカ軍の再配備に関しては事前協議が定められておるわけですけど、駐韓米軍の場合これはないんです。ですから駐韓米軍の場合、今度のようにイラクに転出する場合、韓国政府と事前協議をするような体制をつくるのが韓国側としては望ましい。これがコンセンサスを得るための大きい一つの条件づくりです。なかなかこれは難しい問題なんですけどね。

韓米同盟なくして統一もなし

それからもう一つは、結局は統一というのが大きい民族的な課題でございますけど、その韓米同盟が韓国の統一、それから統一後においても絶対必要なものであるということを国民にどう知らせるか。韓米同盟が統一の阻害要件ではないということをどう国民に知らせるかが大きい問題であります。

ちょっと話がそれますけれども、私が政府をやめた後の1997年、大統領の諮問機関として統一諮問会議がございますが、その諮問委員の1人として数人の方々と一緒にベルリンに行きました。ちょうどベルリンの壁が崩壊した7周年にベルリンに行ってゲンシャーさん(元西独外相)に会いました。彼は開口一番に「あなた方、統一をするつもりか」と言うんですね。「もちろん統一はします」と言ったら、「それじゃそんなに反米デモやって、どう統一するつもりですか」と言うんですね。

彼の頭には90年代のテレビによく映っていたデモに対応する韓国の警察、それからそれに激しく対抗する学生たち、この反米デモのイメージが相当強く焼きついていたんです。私は、あの時点では反米デモは一部のあれであって、絶対多数の国民はそういう考えを持っていませんということを言ったんですけど、今の時点でそうはっきり言えるかどうか。少なくとも国民の半分以上はそうではございませんという言い方をせざるを得ないと思うんですが、そういうことを言っていたわけです。

ですから韓米同盟というのは統一には絶対必要だということをどう国民に知らせるか。ゲンシャーさんはそのとき、ドイツ統一のときにアメリカがどういう役割をしたかということを話してくれました。皆さんご存じのように、コンドリーザ・ライス(現米大統領補佐官)が先代のブッシュのとき、ホワイトハウスのNSCロシア担当をやっていたんですね。私はロシア、当時のソ連に(大使として)行くとき彼女に会いましたけど。彼女がブッシュ政権から出た後、スタンフォード大学に行きまして、本を書いたんですね。『Germany Unified and Europe Transformed』というドイツ統一の過程に関する本を書いた中で、こういう話が出てくるんです。コールさんが統一のために走り回るとき、お金でもって実際ゴルバチョフを取り込んだんですね。ご存じのように相当の経済援助をソ連にやったわけです。たしか10億砲、それに近いお金でしたけど。そのとき意外と英国のほうから反対が多かった。サッチャーさんとブッシュ大統領との対話、電話の記録をライスはこの本の中に出しているんです。その中でどういうことを言ったかといえば、サッチャー首相はブッシュ大統領に「ドイツ統一は時期尚早である。英国にはまだ戦争を体験した人たちがいるんだ」と。ここではリビング・ヒストリーであるというようなことを言っているんですね。

ミッテランさんはサッチャーさんみたいに直裁にはリビング・ヒストリーがこれを受け入れることはできないということを言わずに、ヨーロッパが統合するときに東ドイツをヨーロッパに統合するのがいいんじゃないかと言っているんです。ですからヨーロッパ統合と東ドイツの統一を一緒にかけて話をしている。読んでみて、ミッテランのほうがはるかに外交的な言い方をしているなと思ったんです。

この話をゲンシャーさんに言ってみました。「絶対アメリカのそれが必要であった。それがあって初めてドイツ統一が成り立った」と言いながら、「あなた方は大きい間違いを起こしている」ということを言っていたわけです。これをどう韓国国民に教えるか。 こういうことを含めてやっぱり今韓国において必要なのは、韓米同盟の長期的なビジョンを国民に与えること。今韓国社会の人口構成が大きく変わっているんです。3分の2という人口が韓国戦争を知らない。わりと富裕な社会で育ったこの人たちに韓米同盟のありがたさを知らせる。そのための新しいガイドラインづくりが、ちょうど96年に日米ニューガイドラインがつくられたような、ああいうプロセスを踏むべきだと。踏まざるを得ないし、こういうことを今、韓国政府も考えている次第でございます。

それで先ほど言いました潘長官ですけど、彼もその場で何と言ったかと言えば、「だれが何と言おうと韓国政府は対米関係を最優先順位においている」と非常に強調しておりました。そして「韓米同盟を通じて、少なくとも韓国政府は3つの主要外交政策を追求するんだ」と。1つは韓半島の平和と安定・維持。2つは民主主義と市場経済という共通の価値を信条とすることによって世界平和に韓国としても寄与したい。それから世界的変化に伴う同盟関係を発展させていくんだということを言って締めくくった。今度新しく当選された与党の議員の63%が中国との外交経済関係をアメリカとの関係より重要であるという見方をしているという報道と絡んで、韓米同盟は韓国の外交政策の基本軸であるということを再三強調しながら、韓半島内の平和統一と共同繁栄実現のために韓米同盟というのは革新的な役割をするということを強調していました。

韓国世論は大きく二分

最近の急速な中国の経済発展と、韓国との貿易、韓国の対中投資の、非常に速い発展は、韓国に対して中国関係が非常に重要だということはもちろんでございますが、それが緊密な韓米関係に影響を及ぼす必要はないということを潘長官も非常に強く申していたんです。

こう申し上げますと、皆さん、何も心配することないんじゃないかというように今受けとるかもわかりませんけど、では、果たしてそうか。韓国の世論は今大きく2つに分かれている。ほぼ伯仲の状態であるというのが現状でございます。

たまたま昨日飛行機に乗って読んでみた韓国の中央日報の2面に載っていたんですけど、彼らが最近、1,015名の大人を対象にして行った電話世論調査によりますと、支持政党は与党のウリ党、開かれたウリ党に対する支持が30%。野党であるハンナラ党に対するのが28%。30:28、伯仲ですね。大統領が今度の弾劾以降、国政運営をよくやっているかに対する見方としては、「よくやっている」が47%。「よくやっていない」という否定的な見方をするのが49%。47:49なんですね。だから大統領はまだ、世論的に見て絶対的な優位な立場には立っていない、こういう状況でございます。

それでご存じのことと思いますけど、先般4月15日の総選挙は野党の惨敗といいましょうか、とにかく野党が負けて与党がぐっと伸びたわけですね。過半数から2議席余計にとったという勝利を得たわけです。その後、最近の地方首長選挙においては、与党が全滅したんです。ただ2カ所、首都を移転するという忠清道ですね。そこから2つの地方自治団体の長だけが選ばれて、あとは済州島さえも野党が選出されたんです。これをどう見るか。

4月15日の選挙の結果はソウル近郊、首都圏の票の分布を見ますと、野党が0.3%だけ負けているんです。非常にわずかな数字なんです。しかし国会議員の数になりますと約倍数になるんです。ご存じのように小選挙区ですから、一票でも多ければ当選しますから。

このように今韓国の一般的国民の考え方は激しく対立している。こういう状況で、私に言わせればこれは非常に軽率な表現だと思いながらもそう言わざるを得ないことは、韓国の今の状況は混沌としている状況でございます。

右から左にぶれが相当あるんですね。なぜか。それは一方では改革、改革、今までのすべてを否定するような改革オンリーの若い世代の方々が権力の核心部にいるわけです。しかしそのジャコバン党だけでは韓国政治が運営できませんから、相当の現実に沿った対策を考えざるを得ない。いわゆるプラグマティズム、実用主義という言葉を韓国の政界では使っているんですけど、この実用主義的な考え方、この2つが絶えず相対峙しながら、ほとんど互角の力で作用し合っている。こういうのが現状でございます。

ですから先ほど言いました潘基文長官のような人があれば、韓国は心配することはございませんとはっきり言えるんですけど、イシューによっては、あるいはそうでない。青瓦台(韓国大統領府)のNSCの考え方が優越することもあり得るし、そうでないかもしれない。情勢はそのイシューによって見極めなければだめだという考え方です。

ですけど、一つほとんどこれは間違いなく実施されることは、イラクに対する3500名の追加兵力の派遣です。予定どおり、これは行きます。大統領もそう言っていますし、NSCの李鍾ソクもそういうことを対外的に公表しています。ですから少なくともイラク派兵に関する問題においては、政府はしっかりとコミットメントを守る。

しかしながら非常にまずい外交を韓国はやっています。与党の中の若い議員がイラク派兵反対決議案を出しているんです。ですから一方では3500名の兵力を出しながら、それを無効にするような政治的行為が一方では行われるというような、非常に悲しい状況を示しています。

同じく昨日飛行機の中で読んでみたコラムが一つございまして、これは李ガク範といって、私が政府にいたときの青瓦台の政策企画首席秘書官をやっていたソウル大学の社会学の先生出身の方なんですけど、彼が書いたコラムの中でこういうことがあったんです。僕も読んでみて、あ、そうだったかなということを知ったわけなんですが、彼が書いたコラムの題目は「辺境意識から脱出せよ」、辺境というのは端っこですね。そういう辺境意識から脱出せよという政府当局に対するアドバイスなんです。

「ノサモ」という大統領支持団体がございます。ノサモというのは盧武鉉大統領を支持する会、グループの略称なんですけど。ノサモのグループの会合に参席した12日の話です。だから数日前の話なんですけど、政府・与党の非常に有力な国会議員の1人がこういうことを言ったそうです。「今我々を悲しませていることは、もともとパックス・アメリカーナから始まっている。しかし、我々は中国と日本と手を携えて、東アジア、北東アジア時代を開くために邁進すべきである。これが盧武鉉大統領の考え方である」というようなことを言っていたと言うんです。ですから、こういう与党の、非常に核心的な位置にあるお偉い方もこういう考え方をしているがために、先ほど申し上げたように、韓国は当分こういう混沌とした状況を呈しながら行くんだということを申し上げたいと思います。

あまり長過ぎた感じがしますけど、中国に対する話を少しやって、それから対話のほうに移りたいと思います。

重要だが、中国一辺倒はあり得ない

中国傾斜ということが最近盛んに言われていますけど、実は去年から、今までずっと韓国の対外輸出の1番の市場であったアメリカを中国はしのいできたんです。しかし全体の貿易高からいえば、依然としてアメリカは韓国総貿易の20.9%を占める590億ドル。中国は570億ドルで2番ですね。それから3番目は日本、535億ドル。これが今韓国の対外貿易のトータルなピクチャーでございます。そういう意味において中国は韓国の大きい市場になって、去年1年の貿易黒字が132億ドル、こういう大きいマーケットになっていることは事実なんです。

韓国に対する、直接投資を含めた対韓投資は、アメリカが1968年から現在までに275億ドルです。大体5,986件。日本が132億ドル。中国は5億ドルです。だから中国の韓国に対する投資というのは、韓国としてはあまり大きいメリットのない市場ですけど、しかし、韓国の対外投資においては中国は相当大きいポーションを占めます。韓国のアメリカに対する投資は154億ドル。時期は同じく1968年からの数字でございます。日本に対する投資は9億8,800万ドル。これが中国になりますと、137億ドルです。プロジェクト数としては1,800余件。企業としては2万を超す数字を呈しています。ですから中国の経済的なメリットというのが相当浮かび上がってきていると思いますし、こういう過去10年、8.9%という驚異的な経済成長を示している中国の魅力、これは日本ばかりでなく韓国にも大きな魅力であるということが言えると思います。

日曜日の朝日新聞でしたっけ、経済欄を読んでみると、景気アンケートが載っていたんです。その中にオリックスの藤木社長が日本の景気回復を中国市場がサポートしているということを言っていた。中国の経済的メリットが大きいということなんです。ではそのファクター1つをもって韓国の対外政策、特に経済安保政策が中国一辺倒になるかと言えば、それは先ほどからずっと申し上げたように、そうはなり得ないということは非常にはっきりしていると思うんです。いくら韓国人がばかでも、中国優先と、アメリカ離れをした場合、どういう結果が起こるかというのは、はっきりしている。ご存じのように中国の山東省より韓国は小さいわけですね。中国の山東省は15万平方メートル、人口は9千万。韓国の人口は今4,400〜500万。土地の大きさというのは9.8万平方キロメートルなんですね。そういう、まさに辺境の一地方にすぎない。

もう一つは、韓国がアメリカの同盟国であることで、中国がそれなりの、ある程度のRespectと言いましょうか、ある程度のTreatmentをしておるということを、韓国人はもうちょっと、特に今の若い方々に知ってもらいたいと思います。

これは日本においても同じだと思います。もし韓国がアメリカとの同盟を離れて、韓国が中国により近くなって、そして大陸勢力の一域を担うような状況になりますと、対日関係というのは非常に違ってくると思いますし、日本の皆様方の韓国に対する考え方も非常に違ってくると思います。ですから韓国のSelf Respectはどこから来るかと言えば、韓米同盟をしっかり持っているところにあるということを私は口酸っぱく、韓国で唱えています。

韓国戦争を通じて、アメリカとはいわゆる血盟関係。それからベトナム戦争を通じて5千名に上る韓国の若い者たちが、ベトナム戦線でアメリカ兵と一緒に戦いながら死んでいったんです。こういう血のつながりを通じた韓米同盟というのが一朝一夕になくなるということはあってはならないことでございますし、そのことに対する考え方は徐々に韓国国民の中に広まっていくだろうと思っています。

最後に一つ申し上げたいことは、先ほどウナギ登りの対中韓国留学生の話が出たんですけど、僕も好奇心があって、インターネットで1998年から昨年までの数字を見ますと、中国への留学生は、長期の留学も短期も入っていますけど、大体1万1000人台から始まって、2002年には2万7000に上っていくんです。去年は3万5000。それから日本への留学生は98年に2万9000からずうっと2万台を維持していて、2001年には3万4000、こういう数字があるわけです。アメリカへの留学生は98年の3万4000から、去年は5万2,447名。ですから非常にステディーにアメリカと日本には留学生が行っていて、中国の場合はこういうふうに最近数字が増えたということだけであって、何もこれが特別に大きい意味があるとは私は考えられません。

同盟を必要とする韓国の地政学的立場

そういうことで、中国が大きい隣の国であることには間違いございませんし、同時に韓国の南にはこれまた世界第2の経済力を誇る日本があります。それからもう一歩北に行きますと世界第2の軍事力を誇る元のソビエト、今のロシアがあるわけです。

私は1992年に北朝鮮と核問題の交渉をやりまして、その途中に東京で朝日新聞が共同主催をした北東アジア・シンポジウムというのがございまして、そこに参席したんです。これに北朝鮮のほうからも私の交渉の相手であったチェさんが参加しましたし、アメリカからは今の次官補のジェームス・ケリーさんですね。彼はちょうど北朝鮮を訪問した後、まっすぐこっちに来たんですね。そこにはまた中国を代表して朱建栄さんが出てきて話をしたんです。そのときにジム・ケリーが言っていたことが、非常に頭に刻まれたことなんです。彼が言うには、普通は韓国のサイズからいえば、統一したら人口7千万、もうすぐGDP1兆ドルを超すような経済力を持つ。ヨーロッパにおけば大国になると言うんです。ただ悲しいかな、この東アジアの中で隣に13億人の中国、南に1億2千万人で世界第2の経済大国日本、北には1億7千万のロシア、軍事第2、それからアメリカというのが韓国の地政学的な特徴であるということを累々と言っていたんですけど。まさに韓国の生きるべき道は、私が先ほど申し上げたように、大陸からの強い影響を支え、我々の主権と我々のアイデンティティーを維持して、その小さい韓半島で生きるためには、やっぱり背後に強い同盟が必要である。その強い同盟は何か。それはアメリカと日本であるという考え方なんです。

ただ日本との同盟というのは、日本も国政上事情がございましょうし、そういう軍事的な同盟じゃなくて、精神的な、経済的な、文化的な、こういう準同盟的な関係であるということです。今はなくなっているんですけど、もう既に言葉が出始めて、今そういうことを言うともうこれは死語みたいになっているんですけど、ヴァーチャル・アライアンスですね。これはアメリカのビクター・チャーなんかも盛んに言っていたんですけど、ヴァーチャル・アライアンスなくしては、韓半島における韓国の生存というのは当分難しいということを再三私は強調したいと思います。

どうもありがとうございました。(拍手)

【質疑要旨】

――素人の発想で伺いたい。私もいつの日にか日本と韓国が同盟を結ぶようになるとすばらしいと思っているんです。仮に日本が9条の制約がなければ、韓国の人たちは日韓同盟というのを受け入れることができるんですか。

遠い将来には日本との同盟も視野に

【孔】 今すぐにということはあまり現実性がないと思いますけど、相当数の韓国人は自分の国の将来を考えた場合、日本との同盟ということも視野の中に入れると思います。東アジアにおけるマルチの同盟、安保体制をつくるときには当然日本も安保体制の中に入りましょう。ですから、そういうことを考えて、二国間の同盟を今すぐ作るというのは現実性のない話なんですけど、しかし遠い将来を見つめてみた場合は当然あり得るというふうに私は思います。

――中国と韓国との関係についてうかがいます。孔魯明さんも孔子の末裔で、何というか皮膚感覚とか、儒教とか、漢字文化とか中華文明とかですね。中国の人々に対する韓半島、朝鮮半島の人々の感覚は、やっぱりアメリカ人よりはかなり近いということなんでしょうか。先祖から綿々と受け継がれてきたDNAというか、中国のほうが何となく親しみやすいという感じが一般的に韓国の社会の中にあるんじゃないでしょうか。

中国とのつき合いの難しさを知る

【孔】 さあ、どうでしょう。韓国戦争を通じて、我々は一時中国を非常にくみしがたい敵国と見てきたわけです。それが、壁が崩れてどっと押し寄せてきた。古典文化、古典漢字を通じた中国というイメージと、現実の中国とは必ずしも重なり合わないんですけれども、ロマンティックな考え方で中国に行くのを一つの憧れにして、今盛んに中国に行っているんです。僕はまだそこまでは行っていないんですが、桂林とか西安とか、ああいう名所、観光地を一生懸命見て回るわけですね。

しかし、中国と実際に同盟を結ぶとかの、国の運命を絡ませた重大な問題は別に考えているんです。中国とのつき合いが難しいことを韓国人がいつ知ったかと言えば、数年前。全羅南道ではニンニクを栽培しているんですけど、ニンニクが中国ニンニクに押されて、生産者がみんな泣き面になって特別関税を課してくれということで、800万ドルの特別関税を課したわけです。98年ですね。そうしますと、中国が何をしたかご存じですか。対抗する関税を韓国製品、最も当時売れた携帯電話などに4億5千万ドルぐらい課したんです。8百万に対して4億5千万です。まさに中国的な発想なんですね。韓国政府はお手上げになって、お互いやめようと、3カ月ぐらい後になくなったんです。やると言ったら中国は無茶なことをやるというレッスンを学んだわけです。

それから、この間も、数日前に出たんですけど。お魚を輸入すると、その中にこんなボルトが入っているんです。ですから中国からの活魚の輸入の場合は、地雷探知機が動くのです。(笑)そういうことですから、なかなかイメージがよく重なり合いません。

難しい問題です。韓国の国民の考える、一方でロマン的でむしろ感性的な考え方と、現実の中国というのがちぐはぐですね。

―― 自主国防政策は韓国の中で根づいていくものでしょうか。それとも韓米同盟の再構築の前に少し後退してしまうのでしょうか。

自主防衛は非現実的、最後には実用主義で落ち着く

【孔】 自主防衛という言葉が出たのは去年8月15日の記念演説ですよね。何でやぶから棒に突然自主防衛か。

自主防衛という言葉は、何も盧武鉉さんが初めに言ったことではない。朴正熙大統領のときも自主防衛。自主防衛の実際として軍需産業を育成したわけです。だから韓国に今ある軍需産業は、ニクソン・ドクトリンの後の苦い経験から出てきた。あのときも自主防衛があったわけです。ただそのときの自主防衛は何も騒がずに、どうして去年突然自主防衛か。問題になっているのは自主防衛と言った人の考え方が朴正熙大統領と違うからです。彼の自主防衛はまさに独自の安保政策、独自の防衛政策を持つようなイメージを発したわけで、それは本当か、当面どうなるかということでいろいろな議論が国内でありました。今年に入りまして大統領が「協力的自主防衛」をうたって、韓米同盟を補完するような、我々自体の自衛力の向上を図るというようなことを今言い出したんです。

今年国防予算が13%ぐらい上がっているんです。GDPの割合からいって2.9%ぐらい。しかし実際今、自主防衛に近い、協力的自主防衛に動いたら、韓国の防衛負担は少なくともGDPの5%までは上がらざるを得ない。これは果たして賢明な政策かと世論では批判しているわけです。むしろそのお金があれば同盟をしっかりして、そのお金を国民の福祉に回すというような論説もたびたび出てきます。

自主防衛というのは協力的自主防衛というふうに修正されて、そこらあたりで落ち着くんだろうと思いますし、それが当然なんです。今自主防衛やれる国がどこにありますか。あり得ないですね。ですから結局は、盧武鉉政権の中で言っているように、落ちつくところは実用主義的な結論だと思います。

――在韓米軍の数を減らすということですけど、アメリカ側から言わせると、数は確かに減っても、昔に比べて兵器あるいは部隊の能力は向上している、その柔軟性の中で戦力としては変わらない、対応できるからこういうことをするんだと強調しているわけですね。

しかし韓国側からすると、額面どおりアメリカの言葉を受け取るべきではない、あるいは何かしら韓国に対するメッセージが込められているとお考えなんでしょうか。

有事の際の米軍のコミットメントが緊要

【孔】 受け取る人の立場によって違ってくるんですね。政府はそういうメッセージはないと言っています。純粋なGPR(Global Posture Review)の中で行っていると言っているわけなんです。

私はどう見るかと言えば、アメリカのグローバルな戦略でそうならざるを得ないだろう。12個師団を持っている国が、今10個師団をイラクに縛られている。一番戦闘力の強い第2師団を含む韓国駐留の3万7千がそのまま無傷で残るはずはないんです。韓国の地上軍を削減するという話は昨日今日の話ではもちろんございません。とうの昔から始まって、実際は94年には減らすつもりでいたんです。ただ北の核開発問題で、急遽むしろ増派されて3万7千の部隊水準を維持しているわけですから、当然今減らさざるを得ない。

地上兵力が減って、それが総体的な戦力にどれだけマイナスになるか、これは正確な試算はやってみないとわかりませんけど、常識から言って、あったほうがもっと強いはずですね。しかし出て行くアメリカ兵は、アメリカ側の説明によりますと、軽兵器だけ持っていて重兵器は置いていくというんです。韓国にそのままおいていくと。それから空軍、海軍兵力というのはそのままあるから、そういう抑止力においては問題ないと言うんですね。

この時点で韓国として一番重要なことは何かと言えば、有事の際にアメリカが帰ってくるコミットメントが緊要なんですね。そのまま撤退して、もし韓国有事のときに帰ってこない、韓国1人で戦わなければならない、こういう情勢がはっきりした場合は、韓国の抑止力というのはグッと減っていくんですね。ですから、そういうことをアメリカがはっきりと強くコミットする場合は、兵力の少々の削減は大きい戦略的な意味においては問題がないと思います。

この間韓国の現代化、戦力増強はいろいろありますけど、一つは韓国独自の情報収集力ですね。AWACSとか、こういう収集力を高めること。もう一つはカウンター・バッテリー、北が長距離砲とかミサイルとかを撃った場合、すぐそれをとらえてこちらのほうから対ミサイルを撃つ。こういうことをずっと最近やってきた。戦力自体多少プラスマイナスあっても、それを理由に北朝鮮がもう1回挑発する、仕掛けてくるということは、大きな流れから見て、ないだろうと思います。ただここでもう一回強調したいのはコミットメントです。そういう意味においても、新しいニューガイドラインみたいな長期的なビジョンを打ち出す韓米の努力が肝要だというふうに思っています。

――本当に戦争になればまた米軍が相当な部隊を砲火にさらさなければいけないというと、アメリカも簡単に戦争などはしない。だとすれば、兵力を削減してしまえば逆にやりやすいといいますか。やった場合に韓国のソウルは火の海になって、米軍の犠牲が少ないという意味では、やりやすくなるという見方もあります。そのことが逆に北朝鮮には、米軍引くぞと言われるとかえって脅威になるのではないですか。そこのところをどう読むか。韓国は戦争されちゃかなわないから、そういう意味では米軍に引かれちゃうと本当に大変だなというように感じるんでしょうか。

米国が目指すのは戦争でなく、制裁によるレジームチェンジ

【孔】 実際、北朝鮮はそれを放送なんかで言っていますよね。去年アメリカの再配備の話が出たときに、私も公に、漢江以南にアメリカが兵を引くということは何を意味するかということを言ったんです。一つは今までやってきたTrip Wireの役割、地雷線の役割をやめること。それからもう一つは、アメリカの兵力の、主に地上軍でしょうけど、これの転出、再配備が非常に容易になるということを言ったんです。北朝鮮の長距離砲は届かない。ミサイルは届きますけど、長距離は届かない。ミサイルはパトリオットで防衛しますから。

そうすると、いわゆるPreemptive Strike(予防的先制攻撃)がはるかに容易になってくるという見方があるわけですね。ですけど、ウォルフォヴィッツが議会で証言したように、Trip Wireという話はもうやめてくれという考え方が強いし、アメリカとしてもウジョンブ(議政府)に座って北朝鮮の砲撃の的にされるよりは、兵力が南にいて、インタクトである方が戦力面から強いんだと。その説明はそのとおり聞いていいと思うんです。

実際Preemptive Strikeが可能かという話になりますと、そう簡単ではないと思います。ソウルの1200万人、少なくとも2千万人ぐらいは北側の餌食になるわけですよね。これ、どうします?アメリカがいかにあれでも、そう簡単にPreemptive Strikeはできないと思うんですよ。

アメリカが考えるレジームチェンジは、そういう武力行使よりは経済制裁とか、資源に関する制裁とかによるものと私は思います。しかも現実性もあります。だからレジームチェンジの手を打つ場合、今日本はすべての法が整備されてはるかに強いことができるわけです。まず一番大きい送金はストップできますよね。北の船舶が港に入ることもストップできますし、海上臨検も可能です。ただ中国がどうなるかという話。それからロシアはどうなるかという話。これは今後のアメリカの外交力によるでしょうけど。

先々週、私はウィリアム・ペリーさんにソウルで会いました。彼は今、ケリーのアドバイザーをやっていますね。11月の総選挙はどうなるかという話と関連して彼が言ったことは、もしケリーが当選すれば北朝鮮に対してはペリー・プロセスをもう一度やるということ。ブッシュが再選すればどうですかといえば、それはレジームチェンジになるだろうと。このメッセージは、北は十分に受け取っていると思うんですね。この感触はね。ニューヨークにある北朝鮮の代表部が十分感知していると思うんです。ですから金正日の場合は、イラクのことも考えて、相当戦々恐々とせざるを得ないんじゃないかと思います。

出過ぎた考え方かもわかりませんけど、なぜこの時点で小泉さんの平壌訪問を受け入れた。私が知る限りでは日本のほうから仕掛けたそうですけど、とにかく受けたという話は、彼もいよいよ核問題の解決のための地ならしをやっているんじゃないか。核問題が解決しても、それから核が決まればミサイル問題も一緒に決まるでしょうけどね、拉致の問題を整理しておかないと、日本との国交正常化交渉できないじゃないですか。国交正常化ができないと、日本からの経済協力は望めない。そういうことを視野に入れてやっているんじゃないかという気がします。6月23日に第3次で会いますよね。どこまでやるかな。少なくとも相当のシグナルは出すだろうと思うんです。だけどそれは11月の選挙までの間をとにかく繕うようなシグナルを出すだろう。それからもしそのシグナルが弱ければ11月の選挙までまだ時間がありますから、9月あたりにもう1回、第4次の6者協議をやるのか。そういう可能性もあるんだろうと思います。とにかく11月のアメリカの大統領選挙が北の核問題の一つの大きな岐路になると思うんですね。

――ペリーさんがレジュームチェンジだと。イラクであれだけ苦労していても、またこちらのほうにも。

統一的な北朝鮮政策を欠くアメリカ

【孔】 彼が見る限りは、ネオコンはレジュームチェンジに変える。戦争をやらないだけ。ですからあとは国務省にやらせればいいんです。 ただ、今アメリカが動かない大きい理由があります。去年の5月か4月にワシントンに行ったついでに昔の友人に会ったんです。ジム・ケリーにも会ったし、オーバー・ドッファーとかのフリーな立場な人とも話をしました。スコークロフト事務所にも行って話を聞いたりしたんです。

僕がショックを受けたのは、アメリカには統一した北朝鮮政策はないんですね。パウエルの国務省が考えていることが一つ。それからペンタゴンのラムズフェルド、それからチェイニー、あのあたりが考えることが一つ。ネオコンとこっちの交渉組とか、もうばらばらなんですね。今もそれは大きく改善されたという兆候があまりないんですね。

――北朝鮮の核の問題でお伺いしたい。アメリカの対応、日本の対応、韓国の対応っていうのは何となく我々にもわかるんですけど、一番わからないのは北朝鮮のことです。この前の列車事故は暗殺であって、地方組織まで平壌は押さえ込めていないんじゃないでしょうか。あるいは軍部を中心とする保守派の力が強いから、金正日は思い切ったことができないんではないんでしょうか。中長期的な北朝鮮の政権の崩壊はないのかもしれません。それをどう見ていらっしゃるのか。

もう一つ、これだけ時間稼ぎをされたら北朝鮮は核開発をいくらでも自由にやっているんだと思うんですね。最後に韓国やアメリカが北朝鮮の限定的な核の保有を認める可能性というのはどれぐらいあるのか。核の移転は一切認めないというような条件つきで認める話はアメリカの一部からも出ている。韓国だってそういう選択肢があるのではないか。

北朝鮮の非核化は譲れない線

【孔会長】 まずは金正日体制がどれだけたがを締められるかという話ですけど、まあこういう言い方はいいか悪いかわかりませんけど、永遠のクエスチョンだと思うんですね。私が金正日であれば、もうちょっと早く結論が出そうなんだけど出ない。出ない大きい理由は何だろう。やっぱり、反対勢力ですね。反対勢力というのは、私は軍部だと思います。ですから軍部の説得がそう容易な問題ではないんじゃないかという気がします。

そういう見方をするのは、北朝鮮から出てきた人々がよく言うんですね。それもただ一介の市民じゃなくて、北朝鮮の内情をよく知っていそうな人たちが言うのがそういうことですね。

若干違うのは、彼は臆病だと言うんです。金正日は非常に臆病だと。僕はそのキャラクター・アサシネーションはしたくないんですけど、非常に臆病であると。太っ腹で何やかんや言うんだけど、実際は非常に臆病で、どんと決められない。ということは何を意味するか。金正日に実際に会って交渉した金大中政権の中の人物たちは、また別のことを言っていますね。彼を非常に大きく描いて、彼がすべてをやるようなことを言うんだけど、実際のレコードはあまりそうでもないんじゃないかと思うんです。

それからもう一つ、韓国人がショックを受けたのは、竜川の爆発事件。あれが何であるかは別にしまして、3千人、4千人という人がけがをして、数百名の子どもたちがああいうけがをしたのに、韓国から医者を派遣するのは嫌だと北はいう。こんな非人道的な指導者はあるのか。それからもう一つ、3千名、4千名、何人かわかりません、とにかく多くの人が死んだのに、彼の姿はまだ1回も竜川に出てこないんですね。こんな指導者は、今の世の中であり得ないんですね。竜川には行かないんですけど、軍部隊は視察しているんですね。何が指導者だというようなことを、韓国の市井では、言ってますね。ですからうがった話が、あれは自分の暗殺が仕掛けられて怖くて行けないんだというふうな。真相がどうかわかりませんけど、そういうことまで皮肉られるというような状況があるということ。この問題はいつも我々に問いかけて、しかも明快な答えが出てこない、なぞの一つだろうと私は思います。11月の選挙の後、核問題の解決に何か大きい道のりが見えるか見えないかによって、ますますこの話は、疑問は増幅すると思います。

核の話ですけど、私個人の意見は昔から、アメリカにも「核はレッドラインを引け」と言ったんです。アメリカはレッドラインを結局つくらなかった。そのレッドラインを越したときはどうするか、それが守られなければアメリカの面子にかかわるということで、結局アメリカの拡散防止をやっている連中も、このレッドラインをつくらなかったんです。今CVID(完全で検証可能、後戻りできない核放棄)が一つのレッドラインだと私は思います。ですから核は、北朝鮮がいくら持っていても、南アフリカ、リビアみたいに解体しろと。解体しなければ、この地域に核のドミノが起こるということを我々はじゃんじゃん言うし、日本の中でも北朝鮮が核を持つようなデファクト核保有国になれば、日本もただではいられないということを大いに言うことが必要だと思います。アメリカを脅すんですね。

ただ、北朝鮮が持てばいわゆるテロリストの手に渡るというそういう恐怖ばかりではなくて、実際そうなれば、韓国は南の立場としては統一において非常に負い目を持ちます。韓国の安保も担保できないという状況になりますよね。ですから今の盧武鉉政権も、北朝鮮の核保有化は反対であると、非核化を強く打ち出しているわけです。

ぺリーに僕が質問したもう一つは、北京での6者協議の中で北朝鮮が核の平和的利用を主張しましたよね。結局これはどこかで妥結点を見つけないとだめだと思うんだけど、CVIDでも核の検証がしっかりされている中で、平和的利用を認める部分があるんじゃないかと思うんですね。ですから韓国政府の中でも核の平和的利用に対しては相当な安全措置が確実にとれればやってもいいんじゃないかという考え方があるようですし、中国はそのようなことを6者協議の中で示したか、公に言ったかわかりませんが、そういう状況だということで、私はペリーさんに、あんたどう考えますと言ったんですね。彼は核のフルサイクルの中で北朝鮮が再処理をしないでそこから持ち出して、それから外で再処理して平和的利用のために持ってくる。それからやる場合はいいじゃないかという考え方を言っていました。ですから平和的利用自体は十分な検証、確認の措置がとれれば、相当の交渉の部分があるというふうには感触を受けたんですけど。

―― CVIDの場合の検証は、IAEAレベルの検証じゃないですから、現実にやるとなるとほとんど北朝鮮の主権を否定するぐらい徹底した検証をやらないと。そういうレベルのものまで受け入れるのか。平和利用をめぐっては足並みはおそらく乱れると思う。

【孔】 強制的な査察がCVIDの追求している査察ですから、当然交渉の一番のネックだと思うんですね。これがしっかりできておれば、平和的利用の問題はそれなりにやれるんじゃないかと。しっかりしておれば問題はないと思うんです。そのために全体のトータルなピクチャーを描けないというような状況にはならないんじゃないかと思うんです。

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