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世界の窓fromアジアネットワーク
東アジア共同体に「民力」を


天児 慧
 早稲田大学教授

現代中国論、アジア政治史。元アジア政経学会理事長。朝日新聞アジアネットワーク委員。57歳。

世の中にイヤだと感じる、はやり言葉がいくつかある。かつては「落ちこぼれ」という言葉だった。最近では「勝ち組」「負け組」という言い方だ。何が勝ちで、何が負けなのか。収入が多いこと、社会的地位が高いことが勝ちなのか。誰がそんな判断をするのか。

「失われた10年」という言葉もあった。経済成長が止まっただけで、どうしてすべてがダメだという言い方をするのか。それじゃ、バブル期がそんなに良かったのか。もう少し時間がたってみると、その10年に「本当の豊かさ探し」が始まったのだと気付くことになるかも知れない。

「それはきれいごとだ」と、おしかりを受けるかもしれない。でも、人間にはその人にしかできない尊い意味のある生き方があるだろうし、ある時代、ある国、ある民族には、その時代、その国、その民族にしかない素晴らしさがある。そうした部分をいっさい押し流してしまうような言い方、見方は好きではない。

数日前、何げなくかけたラジオから、アフリカのある貧困国の現状を考える報道が流れていた。リポーターによると、以前は貧しいなりにも地域の自然や住民の知恵の集積によって、それなりの生活水準と安定した状況が保たれていた。しかし、グローバリゼーションと呼ばれる市場化の大波が押し寄せたことで、生活のリズムは崩壊し、貧困は前よりむしろ深刻化したといった内容だった。

いま東アジアでは、いかに市場化、自由化、経済のグローバル化を進めるか、そうした文脈で「東アジア共同体」の創設論議が盛んである。私自身、この秋だけでも国内はもとより、中国、韓国、台湾で、この種の様々なシンポジウムや会議に参加してきた。

11月末、ラオスの首都ビエンチャンで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス日中韓の首脳会議では、来年、「東アジアサミット」を開催することが決まった。地域協力や統合に向けてのいくつかの重要文書が調印され、そうした方向へ大きく動き出した。05年は「東アジア共同体元年」と呼ぶにふさわしい重要なイベントを迎えることとなるだろう。

しかもこれが、東アジア各国政府の主体的な総意として進められるようになってきたことは、かつて日本式「大東亜共栄圏」を強要した「大東亜会議」の歴史を学んだ者にとっては感慨深いものがある。

「東アジア共同体」が関係国の平等・互恵・協力・扶助の下に経済的繁栄を共有することは、もとより大いに歓迎だ。しかし、これがグローバル化という錦の御旗を掲げて、もし、貧しい人々や援助の必要な「弱者」をブルドーザーでいっきにならすように押しつぶしてしまう動きになるのだとすれば、それは断じて避けねばならない。

1人当たりGDP(国内総生産)では日本の約3万3千ドルに対して、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーなどは200〜500ドル程度、経済躍進の目覚ましい中国でさえ1千ドルを超えたばかりだ。そもそもアジアは経済的な格差だけでなく、民族・宗教・生活・価値観・言語など、多様さが際立った地域であることを常に意識しておく必要がある。

「東アジア共同体」は無論、欧米や南アジア、ロシアなどの域外にも開かれたものでなければならない。同時に、域内の内発的な発展と安定のメカニズムを摘み取ってしまうのではなく、すでにあるものを支援し、育み、多様な発展モデルを包み込んで調和させるものでなければならない。

それは緩やかなプロセスでもあるはずである。こうした点を大切にして相互の協力を進めようとするならば、現場の声を尊重し、草の根のリーダーたちの経験と知恵を重視・重用する視点が必要である。「東アジア共同体元年」を迎えるにあたって、「民の力」を巻き込んだ真に豊かな共同体の創設を目指すよう呼びかけたい。

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