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世界の窓fromアジアネットワーク
日中両国が色眼鏡外して


小倉 和夫
 国際交流基金理事長

元駐韓、駐フランス大使。青山学院大学教授(日本外交論)。朝日新聞アジアネットワーク委員。66歳。

日中関係が一つの大きな曲がり角にさしかかりつつある今日、我々は、日中関係を、さめた冷静な目で見、いやしくも、特定の色のついた色眼鏡で見ないことが重要である。

冷静な見方は、まずもって、歴史的観点を踏まえたものでなければならない。

歴史的に見て、日中両国が直視しなければならない冷厳な事実は、中国が日本の近代化にとって「反面教師」であったという事実である。阿片(アヘン)戦争前後からの中国の半植民地化、内部分裂、旧態依然たる中華秩序への執着―そうした中国の姿は、「そうなってはならぬ」見本を日本に提供した。そこから日本の対中国侮蔑(ぶべつ)感と中国への欲求不満が生まれた。

他方、中国にとって、日本は「洋夷(ようい)」であり、やがて中国を踏み台にして世界の列強の仲間入りを果たした「鬼子」であり、その結果「日本」は、中国の民族的ナショナリズムを結集するためのマイナスのシンボルとなった。そこに中国の「反日」の原点がある。

こうした歴史的過程は、巨視的に見ると日中両国は、西欧型近代化という色眼鏡を通して相手を見てきたことを意味する。

現在においても、先進工業国たる日本、開発途上国の中国という観点が、日中関係の基礎をつくっているが、このことは、西欧近代文明というサングラスを依然かけたまま日中両国がお互いを見ていることを意味している。

けれども、今や日本と中国が相手を「西洋近代文明」という眼鏡で見る時代は去りつつある。なぜならば、日中両国の経済発展によって、両国は、地球環境と資源、人口動態、文化的刺激などの面で世界的衝撃を与えつつあり、同時に両国は、世界的規模での政治的、経済的責任を負わねばならない状況に立ち至っているからである。

西洋という眼鏡を捨て世界という眼鏡をかけてお互いを見れば、日中両国は真のパートナーとして協働しなければならぬ時代に突入している。それだからこそ中国への政府開発援助は見直されねばならず、新しい理念(例えば人間の安全保障)の下での協力という形へ転換されなければならないのだ。

日中関係を世界的次元で考え直すためにも、実は、両国はもう一つの色眼鏡を外さなければならない。それは、「中国文化圏」という色眼鏡である。

同文同種、漢字文化圏といった言葉によって、多くの人々は日本と中国が「中国文化圏」に入っているという前提で、両国関係を考える。しかし、ローマ文明の継承者が現代のイタリア人とは限らないように、「中国文化」の伝統は中国人の独占物ではない。羅針盤をもっとも有効に用いたのは「西洋人」であり、絹の文化を最も発展させたのは日本人であった。いいかえれば、日本と中国は今や文化的同質性より、その異質性にこそ目を向けなければならないのだ。

最後に、日中両国が外さねばならぬ第三の色眼鏡がある。それは「戦争にまつわる国民感情」というサングラスである。

今や日中両国は、国民感情よりも客観的な歴史上の事実を直視しなければならぬ。何人も否定できぬ歴史的事実は、日中戦争において中国は戦勝国であり、日本は敗戦国であるという冷厳な事実である。負けた以上、日本は敗者として常に謙虚でなければならぬ。それが国際政治の掟(おきて)であり、また、敗者の誇りである。なぜなら、敗者が自省することは、中国が軍事的威圧を日本にかけるような大国主義に陥らないようにするためにこそ必要だからである。

他方、中国は自分が日中戦争の勝者であるという冷厳な事実を直視せねばならない。勝者は敗者に対して寛容でなければならぬ。中国が日本軍国主義の再来を本当に恐れるのなら、中国は「過去」を問題として「儀式化された復讐」(東京裁判におけるパール判事の判決文の表現)を行うべきではない。

2005年1月19日

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