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AAN発
世界の窓fromアジアネットワーク
中台関係の変化を見逃すな
天児 慧 (あまこ さとし)
早稲田大学教授

現代中国論。早大アジア太平洋研究センター副所長。朝日新聞アジアネットワーク委員。57歳。

同盟の強化を目指す日米安保協議委員会(2プラス2)は先ごろ、「共通戦略目標」について合意した。台湾海峡問題の「平和的解決」を促したり、中国に軍事分野で「透明性の向上」を求めたりする一方、ミサイル防衛(MD)での日米協力推進などが打ち出された。「当然のことを言ったまで」かも知れないが、中国が「内政問題」とする台湾問題について、日米が共同の場で初めて明確な意思表示をしたことは中国をかなり刺激するだろうと思った。

案の定、中国の政府当局や学界から非難の声が相次いでいる。しかし肝心なのは、日本を取り巻く国際情勢を冷静に分析し、安保協議が目指す戦略的位置づけをきちっと行うことである。小泉外交の特徴は「言少なくして実行する」ことのようだが、それがどこに向かうのかよく分からない。日本の将来を左右する重大問題に関しては政・官・財・学界などで大いに議論し、道を誤らない努力を積み重ねて欲しい。

「共通戦略目標」が公表された数日後、台湾の記者からコメントを求められたので、次のように答えた。

「日本の長期戦略として中国との関係は極めて重要であり、政治的に良好な関係構築に努めることが大切だ」「その意味では日米安保協議の枠組みを、中国に対する戦略的包囲の柱にしてはならない」「もっとも、原潜の領海侵犯や海底油田の一方的開発など中国側の『行き過ぎた』行動への牽制(けんせい)、台湾海峡での中国の軍事行動抑止といった点では一定の効果をもたらすだろう」

その翌日、かねて依頼されていた講演のために台湾入りしたところ、幸運にも政権の要人と意見を交換する機会を得た。そこで日米安保協議の結果をどう見るか聞いてみた。「大いに結構」との答えを予測していたのだが、彼は「しばらく検討を要する」と判断を避けた。そして、強い口調でこうも言った。「両岸関係は2003年が最悪だったが、04年に回復に向かった。05年から07年にかけて劇的に変化する可能性がある」

折しもその日の午前、「自立派」代表の陳水扁(チェン・ショイピエン)総統と「対中協調派」代表の一人、野党・親民党の宋楚瑜(ソン・チューユイ)主席が会談し、「国名を変えない」「独立を宣言しない」など穏健な10項目で合意したところだった。これに将来、野党第1党の国民党が加わったらどうなるか。「反国家分裂法」を14日成立させた中国も、台湾へのアプローチを変えざるを得ないのではないか。

先の要人のような見通しを立てる人は台湾や大陸でも少ないが、私は極めて重視すべき発言だと思った。

外交戦略を考える上で大切なことは、国際社会を固定的にとらえないことだ。ダイナミックな動きをしっかり見据え、歴史の文脈と国際社会の枠の中で自己の位置を的確に定め、戦略を立てる能力を持つことだ。それができないときは、その時代の「最強者」と手を結ぶのは確かに次善の策かもしれない。

日本は第1次大戦終結までは日英同盟を柱とし、第2次大戦後は日米同盟を組んで国際社会の大海を泳いできた。不透明さの漂う21世紀、「最強者」米国とさらに結束を固めたいという心理はわからなくはない。しかし、隣国の盟友カナダでさえ自国の平和を保障しないとの判断で、米国のMDシステムへの参加を拒否している。

国際社会はいま、かつてと比べものにならないほど「相互依存」構造が深まっている。歴史的な教訓である「アジアに真の友を持たなかったが故に引き起こした悲劇」を思い出し、日本は隣人たちとの信頼関係構築の重要さを再認識すべきだ。

「米国と一緒なら安心」といった安易な選択ではなく、アジア各国の動きを見定め、彼らが真に欲していることを的確に理解しながら、その期待に応えられる日本になる努力をすることも、重要な戦略的アプローチなのである。

2005年3月16日

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