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「日豪パートナー」の勧め

小倉 和夫
国際交流基金理事長

小倉 和夫
元駐韓、駐フランス大使。青山学院大学教授(日本外交論)。朝日新聞アジアネットワーク委員。66歳。

1960年代ごろまで、オーストラリアの歴史は「距離の暴虐」(ジェフリー・ブレイニーの名著の表題)を克服する歴史であった。政治的、経済的、文化的に最も関係の深い国(英国)から2万5千キロ以上離れているという「距離の暴虐」にいかにして対処してゆくかがオーストラリアの宿命であった。

その一方、こうした「暴虐」という不幸の裏には、幸運とでもいうべき運命のいたずらが潜んでいた。すなわち、英国との絆(きずな)だけを大切にすることは、逆に言えば、その他のことを考えなくてすむことであった。周辺国との歴史的葛藤(かっとう)に苦悩したり、特有の文化や風俗を確立して自らを他国に対して誇ったりする必要もなかったのである。

オーストラリアが頻々皮肉っぽく「ラッキーカントリー」(60年代から70年代にかけて話題となったドナルド・ホーンの著書名)と呼ばれるのは、青い海に囲まれた観光資源や、豊かな鉱物資源や、広い国土のためではなく、本当は、国際社会の荒波をはねのけて生きねばならないような苦しみを持っていない国という意味に他ならなかった(もっとも、この運命のいたずらに似た幸運の陰には、先住民の取り扱いをめぐって「秘密の国」=ジョン・ピルガーの衝撃的著書の題名=の歴史が隠されていたのも事実である)。

けれども、今やオーストラリアは「距離の暴虐」からも、「運命のいたずら」からも、そしてまた暗い歴史の「秘密」からも解放され、自由になりつつある。

それは、オーストラリアが政治的、経済的、文化的にアジアの国々と共に生きることを決意したからである。しかも、そのアジアは日本を先頭として貧しいアジアから豊かなアジアに変容しつつある。そのことは、オーストラリアにとって重大な意味を持つ。なぜなら、第1次大戦後長い間、対日戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争とアジア人を相手にして戦い、オーストラリアへの脅威は、アジアから来ると考えていたからである。

しかし今やアジアは、オーストラリアにとって脅威ではなく機会であり、敵ではなくてパートナーである。その中で日豪関係は、とりわけ重要である。なぜならアジアの中で、経済的、政治的に成熟し、真の意味で、オーストラリアと政治的、経済的、戦略的価値観を共有できる大国は日本だけだからである。

豪州がアジアと共生してゆくためにはパートナーが必要であり、最もふさわしいパートナーこそ日本である。

また、西欧社会に属しながらも、アジアの伝統に生きる、いわば二重の自己規定(アイデンティティー)を持つ日本にとって、国際社会で共同行動をとり得る格好のパートナーは、別の意味で二重の自己規定を持つ、オーストラリアである。オーストラリアが自らの西欧的価値観を大切にすればするほど、そして日本がアジアの伝統の維持を強調すればするほど、実は両者は、緊密なパートナーシップを組めるのである。

このパートナーシップは、具体的には、国連の平和維持活動(PKO)を始めとする防衛協力の強化、エネルギー安全保障や農産物の安定供給も含めた経済連携協定の締結、さらには、海洋汚染対策や海賊取り締まり、海洋資源開発などといった、日豪を結ぶ海にまつわる事柄での協力の強化など、各方面に及ぶことができる。

D・H・ロレンスの著名な短編小説「カンガルー」の中で、オーストラリアは何よりも人々が自由を享受できる国として描かれている。今日の日本も、あたかもアニメの世界のように自由を満喫しうる国である。この二つの自由な国がお互いに相手に対して手を伸ばせば、「距離の暴虐」は簡単に克服できる。しかも、その握手は単なる経済貿易上の契約成立の握手をこえて、国際社会における両国の自己規定の強化、国際的な共通課題と共同行動のためのものになり得るであろう。

2005年4月20日

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