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AAN発
世界の窓fromアジアネットワーク
追悼施設で現状打開を
天児 慧 (あまこ さとし)
早稲田大学教授

現代中国論。早大アジア太平洋研究センター副所長。朝日新聞アジアネットワーク委員。57歳。

拝啓 小泉純一郎総理殿

私はアジア問題の専門家として日頃から総理の言動に注目し、その強靭な意志とタフさには感服しております。しかし、日本とアジアの未来、とりわけ日中関係の今後を考えるとき、幾ばくかを申し上げたく思い、筆を執りました。

総理がこの4月にジャカルタで演説された「過去の歴史に対する真摯な反省」の表明に、私は心から賛同します。ところが、総理ご自身の靖国神社参拝問題では、中国、韓国が繰り返し求めていることに少しも前向きに応えようとしていません。この問題がお互いの不信感を増幅している以上、速やかな対応が必要だと考えます。

「中国は反日が国是だ」とか「歴史で譲歩すれば次々と譲歩を迫ってくる」などといった主張が、いま国内で聞かれます。余りにも視野の狭い感情論だと言わざるを得ません。冷静に振り返ってみると、胡錦涛総書記体制になって以来、中国当局は対日関係改善のために様々な試みをしてきました。

ある識者が提起した『対日新思考』では、「賠償も謝罪も終わった」「明治維新はアジアの誇り」「日本は軍国主義にならない」などと、これまでだったら考えられない大胆な主張が展開されました。対日改善の最初のメッセージでした。昨年は「靖国参拝」への理解を示し、「ただ問題なのはA級戦犯が合祀されている場所に国の指導者が参拝することだ」と、そのハードルを下げました。

私はこの3月に訪中した際、有力な政府系シンクタンクの責任者から、「小泉総理の姿勢が現状のままでも、温家宝首相は訪日を検討している」と聞きました。訪日すると「小泉総理の粘り勝ち」という印象を与えないかとの懸念を持ちつつも、水面下で関係改善の道を探っていたわけです。この訪日は実現せず、関係はこじれたまま現在に至っています。

では現状の打開に向け、日本はどんな手を打てるのでしょう。私は、国立の戦没者追悼・平和祈願施設の建設に本気で取り組むことを強くお勧めします。一度ボツになった感じでしたが、連立を組む公明党も最近、改めて求めています。これなら外国に言われたからということにはなりません。日本人自身が「過去の戦争」にけじめをつけることにもなるでしょう。

この施設は戦場での犠牲者のみならず、原爆などによる日本人犠牲者や徴用されていた台湾、朝鮮、中国の犠牲者らも含めた多くの人々をともに慰霊するものです。総理がおっしゃるように、「戦争の悲惨さを胸に刻み、心から平和を祈願する」ことが可能となります。訪日する世界各国の指導者や一般の人々が、素直に慰霊と平和祈願をする光景が生まれるでしょう。恐らく陛下も足を運ばれ、平和国家日本を世界に向けて発信していただけると思います。

それはわが国からの明確なメッセージとなり、アジアの人々の「過去」に対するわだかまり、対日不信感を払拭する大きな助けになるはずです。

21世紀の日本外交を考えたとき、アジアの近隣諸国といかにしっかりした「信頼関係」を築いていくか。これは絶対に欠かせない視点です。「甘い」と言われるかもしれませんが、信頼関係ができていれば、中国や韓国は日本の国連安保理常任理事国入り問題についても、いまとは違った取り組みを見せていたに違いありません。98年の江沢民前主席来日の際も、中国政府内で直前まで「日本の常任理事国入り支持」が真剣に検討されていたことは事実です。

「信頼関係」の構築はまさに国益そのものに反映すると言えるでしょう。もちろん、日本国内に広がる「嫌中感情」を中国側が真摯に受けとめることも重要だと思います。しかし、ここは大局を考え、日本から「歴史のトゲ」を抜く姿勢を示すことこそが第一歩ではないでしょうか。総理のご決断を心より期待しております。

敬具

2005年6月15日


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