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AAN発
世界の窓fromアジアネットワーク
総選挙、アジア外交も語れ
天児 慧(あまこ さとし)
早稲田大学教授

現代中国論。早大アジア太平洋研究センター副所長。朝日新聞アジアネットワーク委員。58歳。

日韓関係が冷えびえとした6月初旬、ソウルで国交正常化40周年を記念する国際シンポジウムが開かれた。500人近い関係者を集めた大々的なものだ。「歴史セッション」に参加した私は、他の日本人学者らとともに、アジアとの近現代史相互理解のため日本で行われているさまざまな試みを紹介した。

韓国人学者の厳しい反論もあった。しかし最後に、「私がここに来たのは自己主張をするためだけではない。お互いの立場を理解し合い、日韓が手を携えて未来のより良いアジアを創造するために来たのだ」と力説した。立ち見が出るほどぎっしり詰まっていた会場の一角から、その時、拍手がわき起こった。韓国の若い学生たちだった。心が通い合う、こうした反応には力づけられる。参加していた中国人研究者と早速、近い将来に中国でもこういう大規模な会議をやろうと語り合った。

昨年末ごろから、アジア各地の主だった大学との協力をベースにNGOや政府系機関などとも連携しながら「アジア・ヒューマン・コミュニティー」の構築を試みている。まだ先行きは不安定だが、来月末に「アジアの信頼醸成と平和構築」をテーマに国際会議を開催するところまでこぎ着けた。中心議題は和平合意後のアチェのケースだ。インドネシアの当事者や東南アジア各国の関係者らが集まってくる。そこに日中韓の知識人も参加する。アジアの問題をアジア人同士で解決することを目指す。それを通じて「アジア人の連帯意識」が醸成されれば、共同体づくりの人的基盤にもなるだろう。マレーシアの若い知識人は熱のこもったメールをよく送ってくる。

それにしても、日本を取り巻く最近の現実は厳しい。そもそも8月は日本人にとって「重く苦しく暑い夏」である。加えて今年は歴史の「負の遺産」を問い直すだけでなく、過去を引きずる「現在の負の外交」にも頭を抱えねばならず、重苦しさが増している。政府が全力を挙げて取り組んだ国連安保理常任理事国入りの折衝は東南アジア諸国にソッポを向かれ、中国と韓国の激しい反対にさらされ、頼みとしていた米国、さらにアフリカ連合のG4案不支持で暗礁に乗り上げてしまった。

つい先日の北朝鮮をめぐる6者協議では「拉致問題」は議題にすら挙げられず、核問題処理でも日本は隅に置かれたままだった。靖国・歴史認識問題などを引き金に悪化した中国、韓国との関係は相変わらずとげとげしい。そんな中、郵政法案の参院否決で前代未聞の総選挙に突入する。「暑い夏」はヒートアップするばかりだ。

小泉総理は郵政改革に反対の自民党議員を公認しないと言い、この選挙を「郵政改革の是非を国民に問う選挙」と位置づけた。確かに郵政改革問題は重要である。しかし、今回の総選挙はそれだけではなく、小泉政権が推し進めてきた「競争社会に対応できる構造改革」と「米国傾斜を加速する日本外交」が、本当に21世紀のわが国の針路として適切であるのかどうか、その是非を問う極めて重大な意味を持っている。

構造改革が必要なことは皆知っている。だが、効率性・合理性だけが絶対的な価値ではない。社会的弱者への配慮、低迷する地方の再活性化などへの目配りは果たして十分だろうか。「切り捨てられる」側にも社会の大切な価値はある。

そして外交面。アジアの指導者と会談しても上っ面を取り繕うだけで、真摯な対話による問題解決、信頼醸成の努力を怠ってきた。そのツケが、常任理事国入りや拉致問題解決への協力に深刻な影を落としたことは間違いない。もちろん指導者間、政府間の付き合いだけが信頼醸成のための交流ではないが、トップリーダーの役割、影響力が絶大なのは言うまでもない。

総選挙を「郵政改革」論議だけにしてはいけない。明日の日本をどう構築していくのか。それがまさに問われている。

2005年8月17日


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