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「孤独」が縁 中南米と語れ


小倉 和夫
国際交流基金理事長

元駐韓、駐フランス大使。青山学院大学教授(日本外交論)。朝日新聞アジアネットワーク委員。66歳。

「グローバリゼーションとは何か?」―

この一見何でもない題名の書物は、実はメキシコ人の書いた漫画の本であり、グローバリゼーションの波をあやつる資本家、政治家、国際機関などを庶民の立場から皮肉ったものだ。

メキシコでは北米自由貿易協定(NAFTA)のメンバーになった前後から急速にアメリカ、欧州、日本などの資本が流れ込み、観光客やビジネスマンの訪問が激増する一方で、北米へのメキシコ人労働者の大量移民が増加した。こうしてメキシコが北アメリカ化すると同時に、アメリカ合衆国はラテンアメリカ化した。

そうした状況の下で、グローバリゼーションの波はメキシコとその他のラテンアメリカ諸国に新しい問題を提起し始めた。それはアジアの経済力の影響である。

中国の産品は、アメリカを経由して(あるいは直接に)メキシコはじめ、ラテンアメリカ諸国に浸透している。アメリカ経由メキシコに輸入された中国製運動靴はサッカー場を満杯にしても足りぬほどの量だという。アルゼンチンやブラジルの資源に対する中国本土と華僑資本の投資は、静かに、しかし着実に始まっている。韓国資本のなぐり込みも目立っている。胡錦涛主席の中南米訪問の向こうを張って、9月中旬、ほとんど同じ時期に韓国の盧武鉉大統領がメキシコとチリを訪問した。

こうして長い間、ヨーロッパとアメリカに反発しながらも連携し、抵抗と同化のプロセスを体験してきた中南米は、歴史上初めて、「他者」としてのアジア、特に東アジアを真剣に意識し始めている。なぜならそこには、中南米諸国の自己規定(アイデンティティー)の問題が潜んでいるからだ。

インディオの文明を侵略、破壊した一方で、ヨーロッパの植民地から独立、それでいてヨーロッパにあこがれヨーロッパ人の夢の国の建設現場でもある中南米、そしてそこに押し寄せたアメリカ合衆国の政治的、経済的衝撃--断続的に襲いかかる歴史の波動に、ラテンアメリカ人は、自らの社会の中に自らの「他者」を見ざるを得ない。コロンビアのノーベル賞作家ガルシア・マルケスの小説「百年の孤独」や、メキシコのノーベル賞作家オクタビオ・パスの「孤独の迷宮」など、「孤独」という言葉が、あれほど陽気で開放的なラテンアメリカ人の口から出るのはなぜなのか。

それは、自己規定のために必要な「他者」が、他の地域や国にいるのみならず、自らの内部にもいるからだ。

目をアジアに転ずると、別の意味で、東アジアは孤独である。日本は「西」に属しながら、アジアを捨て去ることはできず、東と西のはざまに一人立っている。韓国は、巨大な中国と隣接して経済的には中国圏の一部になりつつある一方で、政治的、軍事的には日・米の陣営に組み込まれている。中国もまた、その巨大さと歴史的理由からアジアでは孤立しており、また、国際社会においても、その政治体制ゆえに他国と距離を置かざるを得ない。したがって、東アジアの自己規定は、実は東アジアのおのおのの社会、そして東アジア内部の「他者」を見つめなければ深まらない。

その時、中南米は、まさにその複雑な民族構成と歴史の断層と、そして北アメリカとの関係のゆえにこそ、東アジアの自己規定の上で、一つの鏡となり得る存在である。

今こそ、東アジアの3カ国(日本、韓国、中国あるいはシンガポール)は、中南米3カ国(例えばメキシコ、アルゼンチン、ブラジル)と、経済、文化交流のあり方を探る6カ国官民合同会議を開催してはどうか。そして日本は、そうした提案の推進役になってはどうか。

中南米に百年の孤独があるならば、東アジアには千年の孤独がある。孤独な者こそ、自らの心を開いて語り合うべきではあるまいか。

2005年10月19日


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