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AAN発
走り出す巨象2

財閥、東アジア展開
韓国・シンガポール企業買収

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生産途中のトラックを点検する韓国人社員とインド人幹部=韓国・群山のタタ大宇商用車で、長澤幹城撮影

韓国西海岸の工業都市の群山。工場の生産ラインをゆっくり流れながら組み立ての進む大型トラックの前面には、「TATA」の文字がくっきり浮かぶ。インドのタタ自動車のマークだ。

「タタ大宇商用車」は、韓国の大宇財閥がアジア経済危機後の再編で商用車部門を分離したあと、タタ自動車が昨年、約1億ドルで買収した。韓国人約800人が働く本社工場にインド人幹部9人が赴任している。

黄海の風は冷たくなり始め、厳冬期には零下15度になる。インドから単身赴任している人事部長のシンハさん(48)は「インドから来ると寒さは身にしみるね。でも、社員食堂にカリーもあるし、辛口の韓国料理も大好きだ」と笑う。

経営は欧米風

タタ大宇のチャンドラ・シン副社長は、買収の狙いを「技術と生産品目を補い合い、中国市場への戦略拠点とすることだった」と説明する。タタを受け入れた蔡光玉社長は「インド企業と聞き、どんな会社かと思ったが、収益性と経営倫理を重んじる欧米企業のような社風だった」と言う。

インド企業の積極的な海外進出が目立ち始めた。国内での収益増で資金が豊富なうえに、欧米流の経営を学んだトップが多いからか、企業買収が多い。しかも、「成長の渦」となっている東アジアに果敢に飛び込む姿勢が目立つ。

象徴的なのが、インド最大の財閥タタ・グループだ。19世紀後半に創業し、繊維業から製造業全般に進出。グループ約90社の04年度の総売上高は前期比24%増の約178億ドル(約2兆1千億円)に達する。タタ自動車はインドの商用車市場で6割の占有率を持ち、7年前に進出した乗用車市場でもシェアは2割近い。

その自動車業界に鋼材を供給して急伸しているのがタタ製鉄。昨年は中国、ベトナムなど東アジア5カ国に拠点を持つシンガポールの鉄鋼メーカーを買収するなど、やはり海外戦略に積極的だ。

同社の強みは、原料の鉄鉱石や石炭を自前で生産する世界で数少ない一貫製鉄所であることだ。インド東部にある工業都市ジャムシェドプールの本社工場には、鉄鉱石が自社の鉱山から貨車で運ばれてくる。中国の鉄鋼需要の増大で鉄鉱石が値上がりするなか、「アジアで経営効率が最も高い鉄鋼メーカー」と米経済誌で評価された。

国内需要の増大をにらみ、現在400万トンの粗鋼生産量は10年後に3500万トン程度に拡大する方針。実現すれば、新日本製鉄の生産量(現在約3200万トン)を抜く。

こうしたインド鉄鋼業界の地の利に目をつけた韓国の浦項製鉄とインド系のミッタル・スチールは、それぞれインドに製鉄所を建設するため、1兆円規模の投資をすると表明している。


設備増強、人材流入で競争力

米MSと合弁

IT分野で最大手のタタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)も東アジア進出を急ピッチで展開する。中国では、上海、北京、杭州を拠点に、中国企業や外資企業のシステム開発を進めている。約260人が働く杭州事務所では、台湾の大手銀行のシステム構築の真っ最中だった。

来年には北京に、米マイクロソフト、中国政府との合弁企業を設ける予定。ラマドライ最高経営責任者(CEO)は「約5千人の技術者を育成し、システム開発やコールセンター業務も展開する。やりがいのある事業だ」と意気込む。

タタ以外の大手企業も、東アジア進出に意欲的だ。名門財閥のアディティヤ・ビルラ・グループは、中国や東南アジア各地で繊維製品などの生産拠点を築いている。

世界5位のトラクターメーカー、マヒンドラ・マヒンドラは今年、中国企業に資本参加し、年1万5千台の現地生産を始めた。ケシュブ・マヒンドラ会長は「91年の経済自由化後、外国企業のインド進出で激しい競争にもまれてきた。ならば、われわれも打って出ようというわけだ」と語る。

ムンバイ(ボンベイ)に本社を置く経済誌「ビジネス・ワールド」の編集者、アナンド氏は「インドは中国に比べて製造業が弱いと言われたが、競争力に自信を強めてきた」という。

海外展開に乗り出した背景として、株価上昇や銀行融資拡大で資金調達力が増したことに加え、国内生産設備を増強して生産余力がついたことを挙げる。さらに、欧米企業で働いていた人材が帰国してインド企業に入ることで、国際化の即戦力になっているという。

「まだ数十社」

とはいえ、「海外展開が目立つのは、上場企業5千社以上の中で、まだ数十社程度。製造業全体が競争力があるわけでない」とも指摘する。

中小部品メーカーの集まるインド自動車部品製造業協会のマトゥール事務局長は「インドでは州を越える売買に取引税がかかるなど、国内事業の効率が悪いあまり、海外に出る企業もある。国内の経済改革が進まないと本当の企業体力がつかない」として、いっそうの国内改革を求めている。

中国と並び世界需要の中心に

B・ムトゥラマン
タタ製鉄社長

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インドでは91年に経済自由化が始まるまで、長らく製品価格などが統制されていた。企業にとって利益は小さく、経営の革新は望むべくもなかった。

待ちに待った自由化が始まってから01年までの10年間、当社は経営基盤の再構築に打ち込んだ。古い炉の廃棄など合理化に計30億ドル(約3600億円)を費やした。その結果、中国以外では世界で最も近代的な製鉄所になった。

いま、真の成長とグローバル化を考えている。将来は、巨大な人口の中国とインドが世界需要の中心になってくるだろう。インドは鉄鉱石と石炭に恵まれ、粗鋼生産の地の利は良い。

一方、最終製品は国境を越えて市場に近い場所で生産したい。そんな生産網をアジアで築くため、さらに外国企業の買収も検討中だ。東南アジアとの貿易自由化も追い風になるだろう。(談)

2005年11月24日


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