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AAN発
走り出す巨象3


日本企業 進出に追い風
特許改革と高い技術力も



最新型のデータ分析設備などが並ぶランバクシー医薬品研究施設=ニューデリー郊外で、山本晴美撮影

インドの商都ムンバイ(ボンベイ)の名所でもある最高級ホテル、タージマハール。医薬大手エーザイの松野聡一副社長は9月半ば、約50人の記者を前に宣言した。「インド市場に打って出る」

新設の現地子会社を通じて9月からインドで直接販売を始めた。日本の医薬企業では初めてだ。

目玉商品がアルツハイマー型認知症の治療薬。インドでの患者数は約210万人と日本の倍以上だ。子会社のディーパック・ナイク社長は「アルツハイマー型認知症は60歳以上の3%が患っているとされるのに、インドではまだ高齢化が先進国ほど深刻な問題と思われていない」と話す。

同社は、薬学と経営の教育を受けた若手30人を採用し、全員にパソコンと携帯電話を持たせ、医師たちへの丁寧な説明で市場開拓に努める。

販路拡大策として、物忘れに悩む人たちが駆け込める診療コーナー「メモリー・クリニック」を病院内に設けるよう働きかけている。同社がパソコンなどを設置し、患者や家族に医薬品情報などを提供。今後2年間で30カ所の開設を目指す。

後発薬で提携

インド医薬品業界の05年の出荷額は80億ドル(約9500億円)の見込み。この5年間で2倍に膨らみ、世界13位の規模だ。今後5年間で年8〜10%ずつ伸びると予想される。エーザイのアジア室は「中間層の拡大も医薬品消費の増加につながっている。07年以降は計4〜5品目を投入し、10年度で売り上げ8億円を目指す」と意気込む。

今年からインドの特許制度が先進国に準じて改正され、コピー商品が出回りにくくなったことも追い風になった。将来は現地生産に踏み切る可能性も検討している。

インドの医薬品製造の技術力に目をつけた日本企業もある。中堅メーカーの日本ケミファは、新薬の特許切れ後に同じ成分で安く売る「後発薬」分野で、インド医薬最大手のランバクシーと提携。この夏、同社から数億円分の糖尿病治療薬を輸入し、販売を始めた。

「先発企業の新薬より3割安いが、十分信頼できる」とケミファの貴志康夫取締役。今後、輸入品目を増やすとともに、ケミファ製品をランバクシーに生産委託してインドで売る案も検討中だ。

ランバクシーは後発薬で世界10指に入る大手。「インド医薬の水準の高さを見てほしい」。ランバクシーのブライアン・テンペスト最高経営責任者(CEO)は、1100人が働く研究開発施設を誇ってみせた。

FTA推進、両刃の剣に


「大衆車」に力

インドに進出して22年になるスズキの子会社、マルチ・ウドヨグが5割近いシェアを持つ乗用車市場では、競争が新段階を迎えた。月収が1万ルピー(2万7千円)程度の公務員やサラリーマンも、車を買い始めたからだ。

「年間販売100万台の乗用車市場が5年後には200万台に倍増する。これからが本当の競争だ」と鈴木修スズキ会長。ニューデリー郊外に自動車の第2工場と部品工場を建設中だ。投資額は800億円。約6900人の営業マンも増員する。

インドではカローラも「高級車」。トヨタ自動車のシェアは5%どまりだが、ダイハツ工業と組むことも視野に「大衆車」生産の計画を練る。「5年後にはシェア10%を狙う」と豊島淳トヨタ・キルロスカ・モーター社長。第2工場建設の可能性を州政府に打診中だ。

出遅れた日産自動車も今年、販売子会社のインド日産を設立。同社の本広好枝社長は「現地生産も検討している」と話す。

インド国内勢では、最大手のタタ自動車が独自開発の「10万ルピー(約27万円)車」を3年後に発売する意向を表明。マルチと二輪車の間の値段で市場シェアを奪う構えだ。

トヨタは「自動車の世帯普及率はわずか1.7%。全国的に道路整備が進めば、まだ需要に供給が追いつかないはず」と強気だが、日本勢は今まで以上の厳しい競争にさらされることになる。

輸入にシフト

インド政府は、タイと自由貿易協定(FTA)を結ぶなど、東南アジアとの市場一体化を進めている。ただ、外国企業のインド誘致にとって、FTAは両刃の剣になる。

FTAをにらみ、東南アジアでの分業態勢にインドを組み入れたのがトヨタだ。インドを変速機の供給拠点と位置づけ、昨年夏からバンガロールで生産を開始した。FTAで関税が下がったのを追い風に、タイなどへの輸出を加速する。

一方、ソニーは昨年夏、ニューデリー近郊のテレビ工場を休止した。約500人で年20万台を生産していたが、全量をタイからの輸入に切り替えた。LG電子など韓国メーカーに押されるなか、「コストと価格を下げ、販売を伸ばすための勇気ある決断だった」と坂本桂一ソニー・インド社長は振り返る。

インドの複雑な税制も現地生産休止の一因だった。03年当時、東南アジアから部品を輸入して組み立てても、完成品を輸入しても、輸入関税や売上税など5〜6種類の税金が製品価格の6割にのぼり、税額に大差はなかった。陸送費なども含めると、完成品をタイから持ち込む方が安上がり。FTAで関税が下がり、さらに完成品輸入の利点が増したという。

輸入に切り替えた後、消費者の所得向上もあってソニー製品の販売は40万台に倍増。今後さらに伸びる見込みで、ソニーは現地生産を再開する機会をうかがっている。



誘致に本腰、日本語教育も


インド北部商工会議所事務局長
ローヒット・パンディット氏

インドと日本の経済交流はまだ盛んとは言えない。貿易量は10年間あまり変わらない。欧米企業に比べ、日本企業の動きは鈍い。

インドの複雑な税制、電力や水などインフラ整備の遅れ、工場閉鎖が容易にできないなどの規制を嫌い、進出に二の足を踏むのは分かる。だが、問題は解決に向かっている。

たとえば税制。インドは他国とのFTA締結で部品や完成品の輸入関税は年々下がる。国内税制も簡素化されている。

今年、インド政府は日本企業の相談を受ける「日本室」を設置した。われわれも日本語教育に本腰を入れる。来年2月に日本企業約200社の視察団が来るが、インドの実情をもっと知ってほしい。欧米企業は今、インドを委託生産拠点と位置づけ始めている。特にインドの中小企業は、提携で技術力向上を望んでいる。(談)

2005年11月25日


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