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世界の窓fromアジアネットワーク

日韓 国民レベルの連帯を


小倉 和夫
国際交流基金理事長

元駐韓、駐フランス大使。青山学院大学教授(日本外交論) 朝日新聞アジアネットワーク委員。67歳。

昨年は日韓両国政府の合意で「日韓友情年」と名づけられていた。皮肉なことに友情年は政治的な摩擦の激しい年だった。

竹島問題と日本の植民地支配の関係、日本の教科書における近代史の記述、あるいは小泉首相の靖国神社参拝などを巡って軋(きし)みが生じた。こうした摩擦の原因として、しばしば日本と韓国の間の歴史問題に関する認識ギャップの存在が指摘される。

しかし、日韓摩擦の底流には、もっと深いものがあるのではなかろうか。このうち日本側に由来するものはさておき、韓国側の政治、外交の底流に存在するものに目を向けてみたい。

最も重要な底流は、韓国における北朝鮮の脅威への認識の変化である。「反軍事政権」を叫び、民主化運動に熱意を持ってきた韓国の新しい世論指導者や政治家(60年代生まれで80年代に大学生だった、いわゆる「三八六世代」の人々)は、「北」への戦略を優先したかつての政権に対する反発も手伝って、北朝鮮への民族的同胞意識を強く持っている。しかも現在の韓国の北寄りの姿勢は、韓国民の愛国主義を、体制の差やイデオロギーを捨象して民族主義一筋に置き換えたものとなっている。

このことは日韓関係にとっても重大な問題を提起する。それは第一に、日韓両国が「北」への安全保障上の戦略を共有できないことになりかねないという点である。

加えて、さらに深刻な問題として、日韓両国の政治的価値の共有に関する意識の違いの問題がある。韓国において「北」への親近感が高まるにつれて、民主主義や自由経済原理を日本と共有しパートナーを組んでいることの重要性よりも、体制の違う北朝鮮との関係をも包含した形でなければ日本と真のパートナーを組めないという意識が台頭してくるからである。

北朝鮮と並んで、中国との関係も日韓関係に微妙な影を落としている。近年、日本と違い、中国脅威論よりもむしろ中国への親近感が韓国国民をとらえている。しかもその過程において中国と韓国の指導層の中に、日本軍国主義や植民地主義の被害者としての意識を共有し、加害者の日本、被害者の韓国・中国という「連帯」意識を持つ人々が少なくない。こうした意識が近年韓国の政界や知識層に強くなっているのは、三八六世代の、いわゆる「犠牲者」心理と関連している。

反体制、反権力を貫いてきた多くの三八六世代の運動家たちにとって、中国はいまだ過去の「犠牲者」の影を背負っている。しかし、その影を背負いながらも強大国化している。韓国も過去の「犠牲者」の影を持ちながら、今や経済大国化している。かつて反体制の苦汁をなめながら今や権力に近づいた三八六世代にとって、自分自身と中国、そして自らの国とは同心円とまではいかなくても重なり合って見えても不思議はない。ここに、日韓の認識ギャップの第二の底流がある。

このように、北朝鮮と中国をめぐる要因が現代の日韓間の認識ギャップの底流にあるということは、当然米国という要因もそこにからんでいることを暗示する。三八六世代は、反米でないにしても、米国に反発しがちだといわれる。その裏には、韓国のかつての軍事政権が米国との同盟強化を政権の正当性の一つにしていたことに対する反発もあるだろう。

しかしここには、もう一つの歴史的ひずみがあることに注意を要しよう。それは韓国の民主化運動に対する米国(そして日本)の民主勢力の支持の歴史が、必ずしも十分今の韓国民に知られていないことである。

韓国と日本と米国は、実は国家レベルの戦略的利害だけでなく、国民レベルでの民主化運動の連帯で結ばれていたという歴史的事実に我々は改めて目を向けなければなるまい。そうしてこそ初めて日本国民と韓国民との間の真の連帯感が生まれるのであり、06年は、その意味での「連帯年」であるべきだろう。

2006年1月18日


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