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日米中の戦略対話実現を


天児 慧(あまこ さとし)
早稲田大学教授

現代中国論。早大アジア太平洋研究センター副所長。朝日新聞アジアネットワーク委員。58歳。

マレーシアのクアラルンプールで昨年12月、初の東アジアサミットが開かれた。将来の「東アジア共同体」構築に向けた重要な一歩と位置づけられたが、枠組みを東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(日中韓)にすべきだという中国と、これにインド・豪州・ニュージーランドも加えるべきだと主張する日本が相譲らない形となり、共同体の目標や中身、構築への手順などについては議論を深められないまま幕を閉じた。

確かに共同体構築はきれいごとではないから、初めに最も核心的な問題が露呈したのは良かったのかも知れない。半面、今後うまくハンドリングしていかないと、地域協力の枠組みづくり自体が遠のいてしまいかねないとの危惧(きぐ)も感じる。

重要なポイントは二つある。一つは政治・経済・軍事的に増大する中国のプレゼンスと、それに対する懸念を強く意識する勢力の背後にある米国の影だ。

中国自身は「平和的発展」を力説する。だが経済成長にあわせ、戦争の可能性が低いアジアで突出して軍事力の増強を続けている。ロシア、インドとの合同演習も含め陸海での軍事演習も活発で、かつ国防費の実質的な額や用途が不透明である。そのうえ、周辺海域での積極的なエネルギー資源開発や環境汚染の越境など、様々な領域での懸念が単なる空論ではなくなっている。「言葉より行動を見る」という靖国参拝問題での中国の態度は理解できるが、同様に中国も、軍備増強などへの周囲の懸念を解くには「言葉より行動」で示すべきだろう。

この点で説得力を欠くだけに、中国脅威論は払拭(ふっしょく)されない。米国の中国警戒感と、日本で強まる中国不信感によって、安全保障面での日米提携が強まっている。すると今度は、中国が日米に対する警戒感を強め、対策を考える。負のスパイラルだ。この傾向が増大して得する者はいない。もっとも、政治的には米中戦略対話が始まっているし、経済的にはそれぞれが相互依存関係を深めている。

そこでこの際、私は「日米中3カ国包括戦略対話」メカニズムの創造を提唱したい。

柱は三つある。安全保障面では日米安保協議の枠組みが中国を敵視せず、むしろ中国を加えて日米中基軸のアジア太平洋地域安全保障の枠組みを目指す。経済面では、かつての日米貿易摩擦の経験を参考にして、深刻化する米中貿易摩擦、知的財産権保護問題などを考える。そして歴史認識問題では、米国を巻き込んだ議論にすることで、より客観的で権威のある合意を目指す。こうした対話の促進と相互理解の増進こそ、「東アジア共同体」構築にとっても不可欠の前提ではないだろうか。

その上で、そもそもなぜ「共同体」を目指すべきなのかという原点に立ち返ってみる必要がある。

第1は、現実に進む経済統合と発展をより安定的にするための制度化である。二つ目は、アジアの問題をアジア人自身で解決する枠組みをつくるということ。そして第3の意義は、歴史上初めてアジアが互いに協力して国際社会に貢献する可能性が生まれるということだ。

ここで、もう一つ提唱したいことがある。共同人材育成システムの構築だ。

欧州連合(EU)は大量の学生を域内で留学交流させ、互いの文化や言語、社会を知る人材を共同育成する「エラスムス計画」を実践してきた。共同体としてのEUの歩みはこうした努力を抜きにしては語れない。

域内の各国・地域から優秀な若者たちが集い、広い視野からエネルギー、環境、地域再生、平和構築、文化・情報交流などの専門的カリキュラムを共に学び、実践活動も経験できるシステムをつくる。留学交流の枠組みも立ち上げる。こうして学んだ若者たちがアジアに輩出するようになれば、「共同体」の参加国をどこまでにするかといった議論はたいした意味を持たなくなってくるだろう。

2006年2月15日


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