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閉塞感破る指導力が必要


孔 魯明
韓国元外相

駐ロ、駐日大使、外相を歴任。日韓フォーラム韓国側議長。朝日新聞アジアネットワーク会長。74歳。

去年の春、韓国では島根県が「竹島の日」を制定したことで、また中国では小泉首相の靖国神社参拝問題が日本の国連安保理常任理事国入り問題とからんで、それぞれ史上前例がないと言われるような反日デモを引き起こした。

それ以来、日本と韓国、中国は首脳間の往来と対話が途絶えている。このような事態の背景には韓日両国首脳の個人的心情の問題があるばかりではない。日本の次期総理の有力候補者として名前が挙げられる政治家の中には靖国神社参拝を否定しない人がいるだけに、人が変われば解決されるという簡単な問題でもなさそうだ。

このような状態が続く場合、5年後、あるいは10年後にも今のように領土問題や靖国問題でわれわれ3国間においては、緊張と対立を繰り返すことが続くかも知れない。日本の政府筋は、問題があるのは中国と韓国だけであってその他の東南アジア、インド、オーストラリアなどとはうまくやっていると国民に説明している。悪いのは韓国と中国の方だと暗に示唆しているかのようだ。

しかし、日本の新聞を見ると、最近東京で開かれた国際会議やシンポジウムに出席した米国や東南アジアの指導者や専門家は必ずしもそうは考えていない。日本の対中、対韓関係と関連してマレーシアのアブドラ首相は、これらの2国間対立によって地域協力が「人質」に取られてはならないと指摘し、関係改善を促した。また、先ごろ中国と韓国を訪問したというシンガポールのリー・クアンユー元首相は「日本の指導者が本当に反省すれば中国も韓国も日本に協力したいと思っている」と語った。

米国のハバード元駐韓大使は日中の関係悪化が地域に緊張をもたらすと米政府が懸念していることを明らかにし、コロンビア大学のジェラルド・カーティス教授は靖国問題が中国ばかりでなく世界で日本のイメージを悪くしていると指摘している。

韓国においては先の統一地方選で、過去2年にわたる内政と外交の失政に対する国民の批判が政府与党に前例のない大惨敗をもたらした。他方、日本では、6月12日に発表されたNHKの世論調査によれば、小泉内閣に47%の高い支持率が寄せられている。そして、次の総理大臣が一番力を入れて取り組んで欲しい政策について、「アジア外交の修復」を挙げた人は15%だけだった。韓日中3国の関係改善に対して募るのは閉塞(へいそく)感ばかりである。

そんな折、韓日間では先週、排他的経済水域(EEZ)境界線画定交渉が6年ぶりに行われた。しかし、双方が領有権を主張する独島(日本名・竹島)に絡んだ対立の溝は埋まらず、次回は9月にソウルで協議するという。もし、この協議が円滑に妥結されれば、韓日間の摩擦は相当和らげられるものと思う。そのためには、両国は国連海洋法条約に基づいて、独島を「人間の居住または独自の経済的生活を維持することのできない岩」と見なし、韓国の鬱陵島と日本の隠岐島を基点として中間線を画定する方法以外にはないものと思う。

日本側は独島を「岩」と見なすことについて、太平洋上の沖ノ鳥島などとの関連で難色を示すかも知れないが、「先進国日本」が海洋法の公明正大な解釈にやぶさかであってはならないと思う。

中曽根元総理大臣は先に紹介した国際会議で、我々が東アジア共同体をつくる理念で一致した以上、共同体構想に反しないよう各国が自制的行動を取ることが望ましい、と講演した。韓日中がこの地域で平和を謳歌(おうか)し共存共栄をはかるには、この言葉に留意すべきである。リー・クアンユー氏が訴えたように、「友好的競争関係」を維持していくことで偏狭なナショナリズムを克服すべきだ。3国の政治指導者たちには、そうした方向へのビジョンとリーダーシップの発揮が大いに求められる。 (2006年6月21日)


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