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日韓首脳、ひざを詰めて話そう


孔 魯明
韓国元外相

駐ロ、駐日大使、外相を歴任。日韓フォーラム韓国側議長。朝日新聞アジアネットワーク会長。74歳。

日本で戦後3番目に長く続いた小泉純一郎首相の時代もとうとう幕引きとなった。そして初の「戦後世代」、安倍晋三首相率いる内閣が誕生した。

そう言えば韓国ではすでに03年に、1946年生まれの盧武鉉(ノムヒョン)大統領が政権の座についている。60年代生まれで80年代に大学生だった、いわゆる「386世代」に担がれた政府である。韓国社会におけるその後の社会的葛藤(かっとう)は、左派的傾向を帯びがちな若い世代と、そうではないグループ間の理念的葛藤の様相を呈している。

それに比べ、日本の新政権は同じ自民党政府であり、基本的には小泉内閣の延長線上にあるものと理解される。ただ、小泉首相の靖国神社参拝でこじれている韓日、日中関係については、新内閣の出帆によって新しい局面を迎えることを皆が期待している。

今の停滞した韓日、日中関係の根っこにあるこの靖国問題について、安倍新首相は総裁選の公開討論の席上でも、「行ったか行かなかったか、あるいは、行くか行かないかについては明言しない」という立場をとっていた。この問題に関する限り、今後ともいわゆる「NCND」(肯定も否定もしない)方式で臨む姿勢のようである。

こうした立場をとりつつ、A級戦犯が合祀(ごうし)されている現状の靖国神社への参拝を実際には差し控えた場合は、問題を封印することは可能であろう。何と言っても、小泉総理の参拝で韓国・中国との関係が閉塞(へいそく)状態に至ったのを間近に見てきた安倍氏である。新たに自身の参拝で問題を悪化させることは想像し難いことである。

私は以上のような理解の下で、韓国政府が日本の新しい総理の就任を祝賀するメッセージを送る際、新首相の早期訪韓を招請するよう願う。

安倍新首相の血筋をさかのぼると、韓国とゆかりやつながりのある方々がいる。

外祖父・岸信介元首相はかつて、3年以上中断していた韓日会談再開のため、当時はまだ国交のなかった韓国の李承晩大統領の誕生日に祝電を送った。また、政界に影響力のあった矢次一夫氏を個人特使として李承晩大統領のもとに派遣するなど、韓日関係の調整に努めた。両国の国交正常化は、その後、岸氏の実弟である佐藤栄作元首相の手によって成し遂げられた。

私は、そういう背景を持つ安倍首相の最初の外国訪問が韓国になることを望みたい。

83年初め、当時、経済協力交渉問題で緊張していた韓日関係を打開するため、中曽根康弘元首相が最初の外国訪問先として韓国を選び、青瓦台(大統領府)で韓国の歌「黄色いシャツ」を韓国語で歌ったことは有名なエピソードである。

「55年体制」の崩壊をもたらした細川護熙元首相も初の外国訪問先を韓国にし、千年の古都慶州でテレビを通じて韓国の国民に直接語りかけた。創氏改名などを強制した植民地支配は誤っていたと認め、「謝罪する」と実に真摯(しんし)に、かつ、堂々と語ったことが多くの韓国人に感動を与えた。

この放送を見た人気作家の韓雲史氏(彼は戦中日本の学徒兵として召集された)は、「70年間の胸のつかえがいっぺんに消えた思いだ」と、東亜日報に書いた。

韓国の新聞報道によれば、先ごろの韓米首脳会談でブッシュ大統領は、「北東アジアの国家間において、より改善された関係を通じ域内の平和と安全が増進されることを期待する」と語ったという。「北東アジアの国家間とは韓日関係を意味している」との説明がついていた。韓日の首脳間のスムーズな対話を通じ、伝統的な韓日米3国間の協力関係が補強されることを望むというメッセージを伝えたものと思う。

韓日間には様々な問題があるが、まずは首脳同士がひざを詰めて話し合うことが大切だ。安倍新政権発足のこの機会に期待するところは大きい。

2006年 9月27日


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