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アジアエネルギー最前線(2)

資源大陸、自信と不安:ロシア、国家管理を強化


東シベリアのイルクーツク州アンガルスクが石油産業のメッカとして脚光を浴びている。建設ラッシュに沸く街の中心には、国営パイプライン建設会社トランスネフチの全面ガラス張りの新築ビルがきらきらと輝く。ここに、日本や中国が新たな石油供給ルートとして期待するパイプラインの司令塔「東シベリア太平洋パイプライン管理局」がある。

起点のタイシェトから北東に約360キロの建設現場からは刻々と進み具合を示すファクスが届く。真冬に零下40度以下になる凍土地帯だが、セルゲイエフ管理局長は順調さを誇った。「先週は1日平均4キロをつないで記録を更新したばかりだ」

モスクワ本社も「この事業の成否こそ、資源国ロシアの将来を握る」(トランスネフチのグリゴリエフ副社長)という意気込み。建設促進に、リタイアしていた中高年層約4000人をこの職種の平均賃金の倍以上で雇ったほどだ。

しかし、「ひな鳥は秋に数えよ」というロシアの古いことわざが関係者の間でささやかれている。日本語では取らぬたぬきの皮算用といった意味だ。パイプラインを満たす石油を確保できるか、はっきりしないのだ。

主に中国向けとなる08年末の開通時点では、同州のベルフネチョン油田などで年3000万トンを確保できる。だが、日本海向けを本格開通させる12年段階で上乗せされる年5000万トンの見通しが付いていない。

ロシア天然資源省のヒョードロフ資源利用局長も取材に対して「東シベリアの油田開発だけでは十分ではない。不足分は西シベリアからも補給することになる」と認めた。その西シベリアも、専門家間では生産ピークが近づいているとされる。


高成長を維持

タイガ(針葉樹林帯)を切り開いて建設が進む東シベリア太平洋パイプライン=アムール州スコボロジノ近くのティンダで、トランスネフチ提供

「予想外だ」。西側メディアが今年10月上旬、一斉に速報した。国営の天然ガス独占企業ガスプロムが、バレンツ海にある世界最大級とされるシュトックマン・ガス田の開発について、外国企業との交渉を打ち切り、独自開発すると発表したのだ。

ロシアがその「資源力」に自信を深めている証しだった。同国は03年以降、油価高騰などで6〜7%の高成長を維持。国際通貨基金への債務は前倒しで完済。外貨準備高は今年、2700億ドル(約32兆円)を超え中国、日本に次ぐ世界3位に浮上した。

東シベリアからのパイプラインにしても資金面ではもはや「外国に頭を下げる必要はない」(トランスネフチのグリゴリエフ副社長)。サハリン沖の天然ガス・原油開発事業「サハリン2」などでも国家管理を強めるのも、そんな自信が根っこにある。


外資系排除 技術面に影響

だが、そうした管理強化は裏目に出るかもしれない。例えば東シベリアの開発。ロシア政府は11月中旬、自国産業育成をと、日本製パイプライン鋼管に特別輸入関税を課すセーフガードを発動したが、専門家によれば零下50度でも変質しない日本の技術を使った鋼管が欠かせないという。凍土の下からの原油くみ上げも、現地の石油会社社長によると「英国の最新技術が頼り」だ。

ロシア全体にも当てはまる。経済協力開発機構(OECD)は11月下旬に発表したリポートで、「ロシアの資源供給力の継続性への懸念が増大している」と、技術面も含め海外からの投資環境を改善する必要性を指摘した。外国が背を向ければ、せっかくのエネルギー資源が「宝の持ち腐れ」になる可能性がある。


中国への恐れ

油価高騰で高成長が続く中央アジアの資源国カザフスタン。新首都アスタナも建設ラッシュだ。新空港からの幹線道路には、中国石油天然ガス(CNPC)の巨大看板がまたがる。しばらく走ると国営ガス石油会社カズムナイガスの本社がそびえる。様々な肌色のビジネスマンを吸い込んでいく。

「この国のいまを示している」。最近、同地を訪ねた環日本海経済研究所の伊藤庄一研究員(アジアネットワーク客員研究員)は感じた。資源で外資を呼び寄せる同国は、「10年以内に経済規模を現在の3.5倍にする」(ナザルバエフ大統領)勢いを持っている。

でも、現地で伊藤氏が驚いたのは、同国に広がる中国など外国資本への漠然とした不安感だったという。外務省の元幹部は伊藤氏に漏らした。「今の若い官僚やビジネスマンは目がくらんでいる。中国はいくら高くても資源を買ってくれる、と思い込んでいる」

確かに中国の浸透ぶりは目を見張る。アスタナの南のアタスと中国・新疆ウイグル自治区のアラシャンコウを結ぶ約1000キロの石油パイプラインが昨年末に完成。CNPCが傘下に収めた油田などから送油を始めた。中国にとって、ソ連のくびきから出たカザフは地続きということもあって格好の資源供給源なのだ。

「阻止すべきだ」。11月下旬、カザフのエネルギー相はこう述べて、中国企業による油田買収にストップをかけた。理由は語っていない。同国国会も05年10月に地下資源法を改正、国家管理を強めた。資源ナショナリズムの高まりを伊藤氏は感じている。

ソ連崩壊から15年。「自信」を取り戻したかのように見える資源大陸には、「不安」もひそんでいた。(横村出)



◆キーワード  <東シベリア太平洋パイプライン計画>
日本と中国が建設ルートをめぐり競合したが、ロシアのプーチン大統領は05年に2段階建設構想を発表。まず、08年までにタイシェト―スコボロジノ間の約2600キロを建設、中国側からの支線と接続する。日本海向けにはナホトカ近郊のコジミノ港を整備しシベリア鉄道で運ぶとした。さらに12年までにスコボロジノ―コジミノ間約2000キロも建設する計画だ。


2006年12月14日


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