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アジアエネルギー最前線(3)

「東方へ」企業動く:中国需要、商機生む


ジャングルを切り開いた赤土の上、ショベルカーやクレーン車が動き回り、液化天然ガス(LNG)の生産施設の建設が進む。インドネシア・パプア地方のビントゥニ湾周辺に広がるタングー・ガス田。埋蔵量はロシアで開発が進む「サハリン1」や「サハリン2」と肩を並べる。08年末の供給開始に向け、工事は佳境に入っている。


売り先は別

急ピッチで建設が進むインドネシアのタングー・ガス田=BPインドネシア提供

石油メジャーの英BPを主体に、三菱商事、新日本石油などが参加する開発費60億ドル(約7000億円)の一大プロジェクトだ。国際協力銀行の融資も付き、日揮も建設に加わる。

日本のプレーヤーがずらり集まるが、LNGの主な売り先は、実は春暁(日本名・白樺(しらかば))ガス田をめぐって日本と緊張関係にある中国の石油大手・中国海洋石油(CNOOC)の福建省LNG受け入れ基地と、米国や韓国の企業だ。

BPが売り先を探していた数年前、日本は景気回復の道を探っている段階で、日本の電力・ガス会社といった需要家は手を上げなかった。BPインドネシアのブディマン・パルフシップ副社長は「中国・福建省への販売確保がプロジェクトの前進に非常に大事だった。これがあって韓国や米国への販売も決まった」。

米エクソンモービルと石油資源開発、伊藤忠商事、丸紅などで進める「サハリン1」も、日本の需要家がパイプラインによるガス供給を嫌がったため、中国企業と本格交渉に入ったところだ。

こんな形でエネルギー資源の売買契約が、時々の経済環境を反映して結ばれてきた。自主開発原油の拡大という日本政府の掛け声が簡単には通じないビジネスの論理がある


湾岸からも

「ルック・イースト」。大型スクリーンに英字が浮かび上がる。アラブ首長国連邦・ドバイで11月22日に開かれた国際協力銀行主催のシンポジウム。進行役のシンクタンク「ガルフリサーチセンター」のアブドゥルアジズ・サジャ会長は「湾岸諸国からの輸出はアジアの重みが増す」と、「東方」の成長性を指摘した。

実際、湾岸諸国は「東方」市場に向けた日本企業との合弁の大型石化プラント建設で沸き立つ。原料のガスが安いこの地でつくればコストで負けないとみた日本企業と、日本企業が持つ中国などへの販路や技術力が欲しい湾岸諸国の思惑が合致した。

とりわけサウジアラビアでは、西部で住友化学と国営サウジ・アラムコが巨大精製・石化プラントの建設を進める。東部では三菱化学、三菱商事などが出資するサウディ石油化学とサウジ政府系化学会社との石化プラントが拡張工事中だ。

シンポで自ら講演した住友化学の米倉弘昌社長は「話題になったとおり、湾岸諸国はみな、『ルックイースト』と言っている。新時代に入った」と感想を漏らした。サウディ石油化学の永井峻一社長も「拡張工事による増産分は、中国への輸出が中心になる」。

一方、石油メジャーだと、製油所や石化プラントでは中国に直接進出する動きが目立つ。ガソリン小売市場まで視野に入れ、中国に出たほうが得策とみているようだ。

例えば英・オランダ系のロイヤル・ダッチ・シェルは、06年3月末から広東省恵州市で、CNOOCとの合弁石化プラント「中海シェル石油化工」の操業を始めている。

近くでは三菱レイヨンの工場が12月上旬、この中海シェルから供給される材料を使ってアクリル樹脂などの原料の生産を始めた。ブリヂストンも、中海シェルからの材料を使う合成ゴム工場を建設中だ。攻め方も多様だ。



原子力、インドへ熱視線

新たなエネルギー関連市場の成長に、原子炉メーカーの動きも速い。チェルノブイリの事故などで「冬の時代」が続いたが、アジアの電力需要増を追い風に、「原子力ルネサンス」時代に入ろうとしている。

とくにインド市場をめぐっては、シラク仏大統領が今年2月、原子力大手の仏アレバの会長らを引き連れてインドを訪問、原子力エネルギーの平和利用協力で合意。約2週間後にはブッシュ米大統領も訪印、やはり原子力平和利用で合意と、急展開を見せている。

アレバのアルチュール・ドモンタランベール国際マーケティング担当副社長は取材に対し、「インドは、いま、熱心に外国技術を入れようとしている。当社もできるだけ多くの原子炉を売りたい」と期待感を示した。

環境保護団体の間には、「インドは核不拡散条約(NPT)に入っていないだけに国際緊張を高める。我々は省エネこそ助けるべきだ」(グリーンピース・フランス)といった声があるが、動きは加速するばかりだ。10月に発表されたアレバと三菱重工業との提携も、アジア市場に適した原子炉開発が狙いとの見方がある。

石化製品でも原子力発電でも全世界の供給力が増せば、さかのぼって、アジアの需要増による石油の逼迫(ひっぱく)感を軽くする。エネルギーをめぐる「商機」が、「囲い込み」論を突き崩すかもしれない。 (小森敦司)


2006年12月15日


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