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温暖化防止 カギ握るアジア(下)

環境税 CO2削減の価値を形に


馬奈木 俊介氏


(まなぎ・しゅんすけ)米国・サウスカロライナ州立大学講師、東京農工大学助教授を経て05年から横浜国立大学経営学部助教授。専門は環境・エネルギーマネジメント。中国の環境政策にも精通。31歳。

アジアでは、化石燃料に含まれる炭素量に応じて課税する「環境税」を採り入れた国はない。日本が先陣を切れば、国内の温暖化対策として有効であるだけでなく、環境への関心が高まりつつある韓国などへの波及も期待できる。

有効といっても、最初から課税によって価格が上昇し、需要が抑えられることを期待しているのではない。例えば昨年のガソリンの販売量は原油の高騰で32年ぶりに減少した。ただ、大幅な値上がりでも前年より1%減ったに過ぎない。

一方、企業の自主的な取り組みでは二酸化炭素の削減に大した意味を見いだしにくい。「社会的貢献」のPRがせいぜいだ。裏返せば、削減する価値が格段に高まらないと、温暖化防止にならない。価値を数字で示すという点で、炭素への課税は大きな意味がある。

温暖化防止の緊急性が増し、削減のニーズが高まるにつれて税率を上げる。大切なのは、税収を省エネなど温暖化防止につながる技術開発に投入することだ。

一般的に企業は新製品など利益に結びつく技術開発には積極的だが、環境対策など「もうからない」分野は乗り気でない。そこで、省エネ機器やシステムの開発などの成果に対して、国が税収を分配すればやる気も出るだろう。

私の試算では来年からの導入で90年比6%削減を達成するには、炭素1トン当たり約3万円、ガソリン1リットルにつき約19円を課税する必要があり、約6兆円の税収となる。高税率に見えるが、道路特定財源を見直し、道路予算を差し引くなどすれば、現行のエネルギー諸税の範囲に収まるはずだ。

欧州各国の環境税について経済協力開発機構は昨年、「競争力のために税収の一部を企業に還付することが有効性を低下させる」と分析した。鉄鋼やセメントなどエネルギーを多く使う企業の負担を軽くするため税率を下げるなどの措置を取れば税収は細り、税の意味も薄れるというのだ。

税が国際競争力をそぐという反論もあるが、輸出品には税を還元し、海外で環境税を上乗せされていない輸入品に課税する「国境税調整」で公平にできる。欧州のような減免措置は採るべきでないと考える。

国境税調整があれば、中国などが自国に環境税を導入するデメリットを感じなくなるだろう。自国で課税しなくても日本に輸出すれば国境税調整がかかるからだ。環境税は、日本が脱温暖化のリーダーシップを執るチャンスでもある。

2007年 3月 3日




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