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韓国と日本、もっと協力しよう


孔 魯明
韓国元外相

孔 魯明
駐ロ、駐日大使、外相を歴任。日韓フォーラム韓国側議長。朝日新聞アジアネットワーク会長。75歳。

日本のKさんへ。久しぶりのお便りです。

今月初め安倍総理の従軍慰安婦に関する発言を聞いた時は非常に当惑致しました。安倍総理のその後の速やかな河野談話の継承確認と元慰安婦の方々に対する深い同情のことばとおわびを申し述べることによって事態が収拾に動いたのは幸いです。ニューヨーク・タイムズが3月6日、社説と記事で取り上げるなど米国メディアが深い関心を持ったことが注目されました。

安倍総理発言の焦点になった「強制性」の存否を決めた「河野官房長官談話」は、私が93年春、駐日韓国大使として赴任した初期に取り組んだ問題でした。「河野談話」と同時に発表された内閣外政審議室の「調査結果の要旨」にあるように、慰安婦問題の調査は91年12月から日本政府が9関係省庁と米国立公文書館を含む関連機関と元慰安婦本人、元日本軍人などの関係者を対象にした結果です。

主管した内閣官房の事務方の元締である当時の石原信雄官房副長官と知己を得たのもこの時でした。石原氏は7代の総理に仕えたベテラン官僚です。今、日本政府当局がその調査結果の真実性に疑問を投げかけ、瑕疵(かし)があるかのように言うことは全く心外であり、国際的信義を害し、疑惑を招くだけです。

Kさんが言われたように韓日間ではたびたび歴史認識と独島(竹島)をめぐり国民感情が激突する事態を体験してきました。歴史認識の問題は容易に解決される性質のものでないだけに、お互いの認識の溝を埋める努力を続けることが必要です。気に食わないからと言って引っ越せることではないのです。

近年、日本では若い人々が愛国心を持つような教育を望む声が高まっていますが、1月の朝日新聞の世論調査に応じた78%の人が「愛国心がある」と答え、そのうちの88%が日本はアジアへの侵略や日本の植民地支配を反省する必要があると答えたことは「民主と平和の日本」の戦後のイメージに合うものと思われ、心強いことでした。

私の多くの友人は、ますます巨大化する中国との健全な関係を維持するためには、米国との同盟関係を一層強固にすると共に自由民主主義の価値を共有する日本との協力関係を強めることが必要と考えています。私も政治、安保、経済、社会、文化の各方面において同盟に準ずるような相互信頼関係を築いていくことが望ましいと思います。

北朝鮮の核が今米国の安保に直接的な脅威を及ぼすとは考えられないだけに、北朝鮮による核の拡散防止に優先権が置かれるのではないかと思われがちです。もし、米国が北朝鮮を核保有国と認める線で妥結するようなことになれば我々両国にとっては最悪の事態になります。

このような事態を防ぐためにも韓日の緊密な対話と協力が必要なのです。その政治的環境を作るため、協力関係発展を阻害する要因となる歴史認識や独島問題に対する相互の理解を高めることがなにより必須です。05年春の韓日両国間の激しい摩擦は島根県が「竹島の日」を制定したことに端を発しました。韓国人にとって、日本の独島占有は日本の朝鮮植民地化に向けたまさに象徴的事件として認識されているのです。独島問題が韓国民にどのような反応を引き起こすか、その背景をぜひとも理解してほしいのです。

朝日新聞の「歴史と向き合う」シリーズ中の「過去を克服するために」(3月1日付)でハーバード大のアンドルー・ゴードン教授が歴史問題の認識に関する軋轢(あつれき)に「責任は日本だけにあるのではないと思うが、少なくとも日本から相手を刺激するような言動に出る必要はどこにもない」と言っています。この言葉を真摯(しんし)に受け止めることが望まれます。

韓国と日本がより緊密な協力を結べるように願いながら筆を置きます。お元気で。

2007年 3月28日


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