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温暖化防止 一人当たり排出量を基準に

李 志東(リ・ジィドン)/長岡技術科学大教授

2007年06月21日

写真:李志東さん

 独ハイリゲンダムのG8サミットでは、世界の温室効果ガスの排出を「50年までに半減させる」との長期目標を真剣に検討することで合意したが、「半減」の基点や数値目標は明示できなかった。一方、中国やインドなど新興国は、応分の責任を果たすと強調しつつ、先進国に対し、率先削減と途上国への資金・技術援助を改めて求めた。

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 各国の利害対立の溝はなお深いが、ここは冷静に次の数字を見てみたい。

 世界人口は04年時点で63億人、二酸化炭素(CO2)排出量は炭素換算で72億トン。1人当たりでは先進国クラブといわれる経済協力開発機構(OECD)諸国の3.1トンに対し、非OECD諸国はその23%の0.7トン。主要排出国では総量最大の米国が1人当たり5.5トンで、2位中国の5.4倍、5位インドの18.9倍と格差はより広がる。

 長期目標を実現するためには、これらすべての国の参加が必要だが、問題は、責任の差異化と防止効果を両立させる枠組みを作れるかどうかだ。

 総量削減をすべての国に適用する京都方式は難しい。全員参加の意味では、国内総生産(GDP)当たりの排出量抑制や各国の自主行動計画を国連が追認する柔軟で多様な枠組みもあり得るが、公平性や効果に疑問が残る。

 世界の注目を集める中国政府は2月に出版した「気候変化国家評価報告」で、(A)目標年次における1人当たり排出量、(B)目標年次に至るまでの1人当たり累積排出量、この両方がどの国も同じであるべきだと主張する。だが、これでは公平性を追求するあまり、実現可能性が低い。

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 そこで私は、(B)を除いた(A)による枠組みを提案したい。

 つまり、目標年次の温暖化防止に必要な総排出量を人口に応じて各国に配分し、目標達成を自助努力と市場メカニズムに委ねる仕組みだ。すべての人に同じ排出量を割り当てるので公平性を保てるうえ、今後定める目標年次まで時間もあるので実現可能性は相対的に高くなる。

 省エネの潜在力が大きく、1人当たり排出量の少ない途上国にとっては、削減すれば売れる量が増えるので対策のインセンティブとなる。一方、達成困難な国は共同実施や排出量取引で達成を図り、技術移転や取引代金の支払いで途上国の低炭素社会の構築と持続可能な発展を促進できる。

 日本は省エネ努力のかいあって、1人当たり排出量が2.7トンと先進国平均より低い。さらに、国立環境研究所などは50年にはそれを0.5〜0.8トンまで削減可能とする研究報告を出している。最高水準の省エネ技術を各国に提供すれば、産業振興と技術優位性の維持、目標達成コストの低減を実現できる。

 巨大な人口を抱え経済成長が続く中国も、1人当たり排出量の増加を抑制していく厳しい覚悟が必要だ。

 4月の日中首脳会談では、両国が13年以降の「実効的な枠組みの構築」に積極的に参加することで合意した。世界規模の取り組みを促進できるような共同提案を期待したい。

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