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日中両国の「戦略的互恵関係」構築が新段階に
――省エネ・環境総合フォーラム(北京)に参加して

李志東/長岡技術科学大学教授

2007年10月13日

写真:李志東さん

 9月27日、「第2回日中省エネルギー・環境総合フォーラム」が北京で開催された。フォーラムは昨年5月に日本で第1回を開催し、今年4月に温家宝首相が訪日した際に、エネルギー・環境分野の協力強化の一環として2回目の開催を確認した。今回は日中間の「戦略的互恵関係」の構築を新たな段階へ前進させた。評価すべきポイントは3つある。

  第1に、両国政府が省エネ・環境分野の協力を戦略的互恵関係の中核として位置付けたことである。中国の曽培炎副総理が「協力を強化し、地球規模の持続可能な発展を両国共同で推進する」と強調した。それに対し、第1回目から僅か1年数カ月の間に、日本の内閣が小泉から安倍そして福田へと2回も交替したが、再任直後の甘利経済産業大臣が「同分野こそ戦略的互恵関係の構築に最も重要なフロンティアだ」と応じ、同分野の協力は政権交替に左右されないという日本の意気込みを現した。また、馬凱国家発展改革委員会主任との会談では、お互いの経験を共有し政策協調を図っていくため、従来の事務レベル経済協議を「日中経済政策協議」に改めることで合意した。

  第2に、民間の協力事業が推進されたことである。4月の日中首脳会談では、技術協力の促進と日本側が懸念する知的所有権の保護問題やトラブル解決に取り組むことで合意した。その成果として、フォーラムでは、石炭エネルギーセンターなどが中国電力企業連合会と連携して石炭火力発電所の効率向上に取り組むなど、日中民間企業や団体間の協力プロジェクト10件が調印された。今後の協力事業拡大への波及効果は極めて大きい。

  第3に、産学官の専門家による実務と政策立案ベースの交流ができたことである。前回を超す約1000人の専門家が電力、鉄鋼など8つの分科会に参加し、率直な意見を交わした。例えば、新設した省エネルギー政策分科会では、日本側から省エネルギーシステムの視点を用いて、法整備、規制と支援措置、行政管理体制と産業界自主行動、技術開発、エネルギー価格の自由化などについて、日本の経験と中国への示唆を紹介した。それに対し、中国側の出席者から、トップランナーなどの基準がどのようなプロセスで設定され、どのような体制で達成状況をチェックするか、基準が達成されないときの罰則の有無など、核心に迫る質疑が出され、議論が深まった。

実効性と工夫が焦点

 今後の展開について、以下の2点を注目したい。

 一つは実効性。今回は日本の成熟技術やノウハウを用いる既存設備の改造に関する合意が殆どで、例えば、石炭ガス化複合発電など省エネと環境効果の大きい先端技術による大型協力案件を早期に成功させれば、全体協力の進展に弾みが付く。

 もう一つは、フォーラムを仲良しクラブに変質させないために、参加制限を止めたり、関連省庁の垣根を取り払ったり、第三者による取組の点検と評価を実施・公表したりするなどの工夫が必要であろう。

〈メモ〉第2回フォーラムで合意した10協力プロジェクトと開催した8分科会

【合意した協力プロジェクト】
(1)石炭火力発電所の省エネ・環境診断及び技術改善事業
  日本側:財団法人石炭エネルギーセンター、国際協力銀行
  中国側:中国電力企業連合会
  ・中国の既設石炭火力発電所を対象に、診断に基づいて、効率向上と環境改善に向けた設備及び運用上の改善提案を行い、クリーン開発メカニズム(CDM)化を含めた金融面での支援について検討する。
(2)その他9案件(日本側参加企業・団体)
  ・紡績工場の省エネ改善(九州電力)
  ・下水汚泥、都市ゴミ、未利用バイオマスの有効利用(日揮)
  ・雲南省鉄鋼、化学工業の省エネと余熱余圧利用(日立など)
  ・省エネ設備ネットワークの研究開発(松下)
  ・日中間の循環型都市に関する協力の推進(北九州市)
  ・排熱発電に合弁企業設立(カワサキプラントシステムズ)
  ・金融スキームによる省エネと環境改善の推進(みずほ銀行など)
  ・日本の化学産業の省エネ・環境技術による協力(社団法人日本化学工業協会)
  ・省エネ支援サービスの推進(ESCO推進協議会)

【開催された分科会】
(1)電力
(2)鉄鋼
(3)環境
(4)民生(建築)省エネ
(5)省エネ政策
(6)自動車
(7)電機・変圧機
(8)日中長期貿易協議委員会省エネ・環境保護

出所:「第2回日中省エネルギー・環境保護総合フォーラム」資料などに基づく

〈筆者Profile〉
 1983年、中国人民大学を卒業。90年に京都大学で経済学の博士号を取得し、07年から現職、兼日本エネルギー経済研究所客員研究員、中国エネルギー研究所客員研究員。

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