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朝日新聞アジアネットワーク
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朝日アジアフェローから

転換期の政治 迫る総選挙 何を選ぶのか

 藤原帰一/東京大教授(国際政治)

2009年04月16日

写真:藤原帰一/東京大教授(国際政治)

 自民党政権が末期症状を呈している。選挙のための表紙として就任した麻生首相の支持率が3割を切り、選挙をしないというだけの理由によって半年以上も首相を続けている。その間に拡大した世界金融危機は日本経済を直撃したが、政府の対応は鈍く、補正予算の提出は新年を迎えてから。その失態を直視せず、抵抗一途の民主党に責任を転嫁するのだから、国民が支持するはずもない。

 そして、選挙は避けられない。93年に自民党が下野したのは竹下派の分裂に端を発した自民党分裂の影響だったから、選挙によって政権が交代すれば、自民党が発足して以来の事件だ。与党連合が多数を占めても衆議院議席の3分の2を超える可能性は低く、野党側の影響力はいまよりも拡大する。確かに、日本の政治は転換期を迎えている。

 では、何から何へ変わるのか。自民党は、選挙を前にして何を問おうとするのか。民主党は、自民党政権に代わるものとして、どのような選択を提示するのか。石破茂農林水産相と岡田克也民主党副代表を迎え、「日本の針路」というテーマで転換期における選択を明らかにすることが3月30日に開かれた朝日アジアフェロー・フォーラムの目的だった。

 両党を代表する政治家だけに、おふたりとも曖昧な逃げを打つことなく誠実に持論を展開して下さった。だが、いま日本の政治が直面する選択がはっきりしたという印象は残らない。むしろ、懐かしいほど古風な図式が見えてきた。

 石破氏が重ねて指摘したのは集団的自衛権。アメリカが日本を防衛する義務を負うが日本はアメリカを防衛する義務を負わず、しかし基地はアメリカに提供する。この図式をこれからも続けるのが正しいのか、という問いかけだ。他方で岡田氏は集団的自衛権については認めず、日本の軍事行動には自ら縛りを保つべきだという立場。核兵器については、東アジアに非核地帯をつくることで核を保有するアメリカ、ロシア、中国を包囲するという提案だった。

 それぞれに鮮明な立場表明だが、長く続く「安保か憲法か」という二項対立の延長だといわれても仕方がない。日本国内でこれが問われてきた背景は理解できるが、さて、これがいま、日本の安全保障をめぐるほんとうの選択なのか。たとえば、アフガニスタンでは、どのような選択が望ましいのか。破綻国家を抱えた地域に安定をどうつくるかという難問は、集団安全保障や集団的自衛権を持ち出すだけでは解決しない。

 石破氏、岡田氏ともに、第2次世界大戦の教訓、なぜあのような戦争になったのかという問いを共有していた。同感だ。そこから一歩進んで、世界の不安定にどう取り組むのか、非核地帯にとどまらない核削減をどう構想するのか、日本国内で消費される議論から踏み出した選択肢をうかがいたかった。

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(ふじわら・きいち) 東京大教授(国際政治)

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