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朝日新聞アジアネットワーク
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朝日アジアフェローから

対北朝鮮 「二重の制裁」目標を明確に

 小此木政夫/慶應義塾大教授

2009年09月17日

写真:小此木政夫/慶應義塾大教授

 北朝鮮の長距離ミサイルや核実験に対し、米オバマ政権はブッシュ政権の「恫喝と宥和」政策とは異なる対応をとっている。国連安保理の制裁決議を厳格に履行しつつも、武力行使を示唆することなく、6者協議の枠組みから離れた直接交渉を拒絶している。さらに、北朝鮮の要求を無視しながらも、将来的な包括関与の可能性を排除していない。

 他方、さらなる強硬措置を示唆していた北朝鮮も、クリントン元米大統領や現代グループの玄貞恩会長を平壌に招待したし、金大中元大統領の死去に弔問団を派遣して、李明博大統領を訪問させた。さらに、日本の民主党新政権に対して、金永南・最高人民会議常任委員長が「実りある関係」の実現を呼びかけた。

 全体的に見れば、恫喝も宥和も拒否するオバマ政権の「無視」政策が奏功して、北朝鮮も挑発を継続できなくなっているのだろう。核実験や経済制裁がともに強制外交の手段であることを考えれば、そろそろ非核化とそのための条件をめぐる交渉が始まる頃である。ボズワース米北朝鮮政策特別代表の中国、韓国、日本訪問はそれを示唆している。

 最近、クローリー米国務次官補が「北朝鮮との対話を準備している。次の数週間内に何らかの決定をするだろう」と説明したように、残されているのは、「条件つき」関与の内容についての関係国協議であり、北朝鮮との交渉である。国連総会がその舞台になるだろう。中国による仲介外交も活発化するに違いない。

 幸い、北朝鮮に対する日米韓の協調外交は近年に例を見ないほど緊密である。金大中、盧武鉉政権の「条件なし」関与を否定し、核を放棄し経済を開放すればひとり当たり国民所得が3千ドルになるよう支援する「非核・開放・3000」を掲げた李明博政権も、「制裁のための制裁」を排除して、人道その他の分野で柔軟性を発揮しようとしている。オバマ政権の「条件つき」関与政策に歩調を合わせているのである。

 しかし、北朝鮮の非核化と拉致問題の解決という二つの問題に直面して、国連安保理制裁プラス独自制裁という「二重の制裁」を実行する日本が、完全に同調するのは容易でない。「関与の条件」を決める協議に加わって経済協力に参加しなかったり、拉致問題解決のために単独で経済制裁を解除したりすれば、国際協調を混乱させるだけである。

 それでは、そのような閉塞的な状況を打破するために、鳩山新民主党政権は何をなすべきだろうか。もちろん、経済制裁の放棄ではない。二つの経済制裁の目標をそれぞれ明確化し、それらを分離することである。北朝鮮の非核化が進展すれば、各国とともに安保理の制裁を解除し、経済支援にも参加する。しかし、拉致問題が解決されない限り、日本独自の経済制裁は継続する。

 北朝鮮政策の大きな変更は難しい。「拉致問題の解決なしに国交正常化はない」との原則の下で、小さな見直しから始めるべきだろう。

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