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朝日新聞アジアネットワーク
AAN発

朝日アジアフェローから

アジアのODA 日本の存在感、機敏対応で

 坪井善明/早稲田大学教授(東南アジア政治社会史)

2009年10月15日

写真:坪井善明/早稲田大学教授(東南アジア政治社会史)

 10月1日、日本とベトナムとの経済連携協定(EPA)が発効した。岡田克也外相は、「新政権でも日越の協力関係はより積極的に進める」とあいさつした。カンボジア・ラオス・ベトナムのインドシナ3国の日本の新政権に対する期待は大きい。というのも、これらの国々では中国の存在感が急激に大きくなっていて、そのカウンターバランスの意味からも日本の存在感が増強することを強く希望しているからだ。

 カンボジアでは、日本の国際協力機構(JICA)が長い時間と精魂をかけて調査した七つの大型水力発電所建設計画のうち、六つを中国が残りの一つを韓国が建設することになった。ラオスの水力発電計画もほぼ中国が独占しようとしている。

 ラオスの首都ビエンチャンには今年初めて主催する東南アジア競技大会を開催するための競技場がなかったので、まず日本に支援要請があった。しかし、政府の途上国援助(ODA)予算が減額している中、日本政府はその申し出に応じなかった。仕方なくラオス政府は中国に会場建設を依頼した。07年、中国は会場付近の1650ヘクタールの土地の50年租借を条件に、その建設を受け入れた。

 ベトナム中部ではアルミニウムの材料となるボーキサイトがたくさん採れる。これに目をつけた中国が開発事業を申請した。ベトナム共産党のトップのノン・ドク・マイン書記長とグエン・タン・ズン首相のイニシアティヴで中国のボーキサイト開発事業が許可された。これに伴い、中国企業が中国人労働者を連れてきて中国人街をつくってボーキサイトの発掘に着手した。これはベトナムの主権の侵害ではないかという異議がボー・グエン・ザップ元将軍などから出された。

 さらにボーキサイトの中国式開発は河川汚染の元凶になるという不安の声も上がった。だが、この事業は継続されている。特に、ベトナム側が憂慮しているのは、中国式開発は一次資源を中国に持って帰ってしまい、ベトナムの産業の発展を考慮しない姿勢だ。

 他方、日本式の援助の精神はインフラ整備にしても技術援助にしても、ベトナムの産業強化に資することを第一義として、現地でも好評だ。だが、現地で携わる日本人は歯がゆい思いをしている。というのも、ODAの従来の方式では現地の要請に対応できない仕組みになっているからだ。まず、決定までに時間がかかりすぎる。日本の土木事業を中心に考えられたやり方で、日本企業が受注することも多く、経費も途方もなくかかり、工期も長すぎる。汚職の温床になることも指摘されている。要するに、機動性や応答性に欠けているのだ。これでは、中国の動きに太刀打ちできない。

 新政権には、日本の存在感を増すことも出来る、ODAを含めた新たな援助のシステム作りが強く期待されている。アジア重視とは、現地の要請に機敏に対応するシステムを構築することだ。

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