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朝日新聞アジアネットワーク
AAN発

朝日アジアフェローから

日中韓討論 政治より白熱した性差問題

 国分良成/慶應義塾大学法学部長

2009年12月17日

写真:国分良成/慶應義塾大学法学部長

 さる11月22日、朝日新聞アジアネットワーク(AAN)と慶応義塾大学グローバルCOE「市民社会におけるガバナンスの教育研究拠点」との共催で、「21世紀 日本への提言」と題する合同シンポジウムが慶応・日吉キャンパスで開かれた。

 日本の今後の政治・社会・国際貢献のあり方について、日中韓の大学院生や若手研究者が具体的な提案を行い、それに対して3国のシニアの専門家がコメントする形で加わることで、世代と国境を超えた熱のこもった議論が展開された。

 タイミングは絶妙であった。日本では自民党から民主党への政権交代が起こり、日本の大転換の機運が生まれ、鳩山政権の今後のかじ取りに国内の関心は集中していた。だが、日本国内の新たな状況にもかかわらず、国際舞台での日本の存在感は日増しに小さくなっている。しかも頼みの綱の米国と鳩山政権との関係もぎくしゃくしはじめていた。

 それに比して、隣国の中国は米中のG2と呼ばれるほどにその存在感を圧倒的に高めつつある。特に今日の経済危機の中で、管理型市場経済を展開する中国の優位性が際立っている。20世紀を通じて一貫していたアジアにおける日本の優位性の時代はもはや歴史となったのであろうか。世界秩序の巨大な転換の中で、日本の立ち位置と去就がまさに問われているのである。

 政権交代に対する中国、韓国の院生たちの反応はおおむね好意的であった。関心の中心は、官僚主導政治に対する民主党の強い姿勢にあった。中国の院生の一人が、日本特有の政治文化の中で起こった今回の政権交代は後発の途上国にとっても参考になる、日本はそのソフトパワーを使って途上国が効率的な政治制度を確立するのを助けるべきだ、と論じたのが印象的であった。

 歴史問題も話題となった。韓国の院生の一人が日本のPKOも軍事拡張の野心の表れだと語り、これに日本側から強い反論があった。同時に中韓の参加者が、中韓ともにPKOを出しているのにどうして日本の場合だけ批判できるのか、と発言したのも時代の流れを感じさせた。

 だが、最も盛り上がったのは政治や国際貢献よりも社会の議論においてであった。日本と韓国の男性はともに長時間労働により育児参加などが低調で、仕事と家庭生活のバランスが崩れている、高齢者介護で女性の負担が大きすぎるなど、性差問題が政治・外交以上に白熱した。

 日本の若者は内向きで世界への関心が低下している、中韓は将来を見越して英語教育を徹底しているが日本は大丈夫か、世界に通用する人材の確保をどうするのか等々、日本に対する厳しい見方も相次いだ。

 国家や政府の関係ばかりに目が行きがちだが、現実の社会と若い世代はもっと先を行っているのではないか、それを感じた一日であった。

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(こくぶん・りょうせい)慶應義塾大学法学部長

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