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 一線から
AANの研究チームが、取材・調査の過程で直面したこと、考えたことなどを、随時リポートします
エネルギー考現学fromアジア(4)

春暁ガス田を考える(上) 低次元の「ストローでちゅうちゅう」論議

小森 敦司
(AAN主査)

中国のガス田「春暁」の採掘施設(手前)からは、生産開始を示す炎は確認できなかった。北北東約18キロの後方に見えるのは「天外天」=8月14日、東シナ海の日中中間線付近で、本社機から、溝脇正撮影
国境を挟んでストローでちゅうちゅう――東シナ海にある春暁(日本名・白樺)ガス田をめぐり、こんな例え話を使った政府間交渉、マスコミ報道が続いています。少し古くなりますが、日本経済新聞の04年6月25日付の記事はこう伝えています。

「『このペンを中間線(日中境界線)としましょう』。経済産業相の中川昭一(当時)はジュースの入ったコップの上にペンを置くと、片側からストローでジュースを吸い上げて見せた。『こうして片側から吸っても全体が減るでしょう。そうでないというのならデータで示していただきたい』」

これが中国の国家発展改革委員会幹部とのやりとりだというのです。

これまでの経緯を調べると、中国にも不用意な面があったことは否めません。開発を進める中国海洋石油(CNOOC)のホームページに一時、中間線を超えて日本側から資源を吸い上げる技術を紹介した図を載せたことがあったとされます。

でも。「ストローでちゅうちゅう」。どこかで見たような。次は朝日新聞の90年7月の記事です。「クウェートからの報道によると、現地の西側外交筋は25日、イラクがクウェートに対し『石油盗掘の賠償』24億ドルの支払いを求めていることを明らかにした」。イラクは、クウェートが国境付近にあるルメイラ油田から石油を盗掘している、との理由を掲げ、この記事の数日後、クウェートに侵攻しました。その結果は皆さんご存じですね。

日本は、この「ストローちゅうちゅう」論を、このままゴリ押ししていっていいのでしょうか。今こそ、冷静な分析や外交の知恵が求められているはずです。

そもそも、吸い上げられたとしても、その量はちっぽけなものです。春暁ガス田一帯の埋蔵量は大したものではありません。AANとして8月29日付朝刊で指摘しました(ホームページに「エネルギー資源争奪症候群を問う(上)」とのタイトルで全文掲載してあります)。

ここでも指摘しましたが、CNOOCの資料だと春暁ガス田一帯で確認されている天然ガスの可採埋蔵量は約0・7兆立方フィート。天然ガスのパイプラインでの販売先確保に苦労している「サハリン1」で推定される可採埋蔵量は約17兆立法フィートです。

サハリンでは他地区でも開発が進んでおり、日本のエネルギー業界には「春暁の規模はサハリンの100分の1」との指摘もあります。春暁から日本までパイプラインを引くのは、とても採算に合わないとされます。

日本は、「共同開発の道を探る」しか選択肢がないのです。確かに政府は交渉で春暁ガス田などの「共同開発」を言っているようです。もっとも、これも「穴があったら入りたい」(日本のエネルギー業界関係者)ほど恥ずかしい主張だ、との見方があります。(次回に続く)

(2006年9月20日)

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