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 一線から
AANの研究チームが、取材・調査の過程で直面したこと、考えたことなどを、随時リポートします
エネルギー考現学fromアジア(5)

春暁ガス田を考える(下) 「development」と「exploitation」

小森 敦司
(AAN主査)

前回、東シナ海の春暁(日本名・白樺)ガス田をめぐり「ストローちゅうちゅう議論」は低次元だ、と指摘しました。今回は日中交渉で議論になっている「共同開発」について考えます。

40年にわたり石油開発に携わった経歴を持つ、この道のプロである石油資源開発元取締役・猪間明俊さんに聞きました。

まず、前回も書きましたが、中川経産相(当時)が中国に求めた「(構造を)データで示していただきたい」との主張を、猪間さんは「まったくナンセンス。メーカーに特許技術を見せてくれというのと同じだ」と批判します。油田を見つけるのは、「千に三つ」と言われるほど成功率が低く、多額の資金を投じて見つけ、構造を分析した鉱区データは、「秘中の秘」だというのです。

報道によると、日本は春暁など鉱脈が中間線をまたぐガス田の「共同開発」を提案しているようですが、この点も猪間さんは首をかしげます。「油・ガス田の開発は、探鉱段階を含む広義の開発「exploitation」と、発見した油・ガス田を生産段階に持ち込む狭義の開発「development」とがあるが、いま、日本では混乱して使われている。日本が中国に提案している『共同開発』は「development」だが、中国にしてみたら、すでに多額の資金をつぎ込んでおり、日本と一緒に「development」をする気はない、と言うのは当然だ。既発見のガス田の「development」をわざわざ他社と一緒にやりたがる企業はない」

猪間さんによると、「実際のビジネスでは、別の企業が後から「development」に参加するケースもあるが、開発企業に対し、例えば、それまでの投資資金の倍額といった『報酬』を払うことが必要」なのだそうです。政府の主張は、そんな「常識」を踏まえたものになっているのでしょうか。

交渉の論点の一つとされる春暁ガス田以外での共同の「exploitation」についても考えてみます。猪間さんは「中間線より中国側海域は、すでに探鉱が進んでいて、有望なガス田が見つかる『当たりクジ』は少なくなっているはず。日本側海域のほうが、『当たりクジ』は多いのでは。それなのに、中国側海域も含めて、日中で同じ金額を出して共同開発というのでは日本側が損になる」と指摘します。

政府からにらまれるのを恐れてかエネルギー問題の識者のほとんどが口をつぐんでいますが、匿名を条件に聞くと、猪間さんの見解が「正論」のようです。

「国境を挟んでストローでちゅうちゅう」といった論議をだらだらと続けるのは、日中ともに偏狭なナショナリズムに火をつけてしまうことにもなりかねません。今こそ、日本政府には、冷静な分析を踏まえた交渉を期待します。

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