私の専門分野の1つであるIT(情報技術)について、日本で取材した印象を報告したい。
よく知られている通り、iモードは急速に成長し、日本のインターネット利用者は一年で倍増している。目を見張ることで、欧米メディアはこれを新しいIT革命と呼んでいる。なぜなら欧米でのIT革命はデスクトップのコンピューターから始まったが、日本では携帯電話から始まったといえるからだ。
しかし、これは大げさな報道ではないかと思う。iモードは携帯電話を限られた方法でサイトを見る「ウェッブ電話」にした。若い人はメールの送受信に利用し、ビジネスマンは株式市場を頻繁にチェックしている。
しかし、これが革命といえるのだろうか。実際には若い人たちにどんどんお金を使わせているだけ、という面がある。
私はiモードに反対しているわけではない。ある分野では役に立ち、大変便利だ。だが、この装置には限界があり、新しいものや革新的なものは出てこない。日常生活を便利にし、友人や同僚との連絡を一層容易にさせるだけだ。
本当のIT革命は、人々がITの使い方を完全に理解して初めてやって来るだろう。だが、今のところ、日本にはそんな兆しはないように見える。
例えば、私が説明するITの一形態が、日本ではなかなか分かってもらえない。私はほぼ毎日、タイにいる家族とインターネット上で話をしたが、国際電話代は全くかからない。インターネットを通じた会話、ボイストークなのだが、こう説明をしてもピンとこない人が多い。
ICQ(アイ・シーク・ユー=あなたを捜します)と呼ばれるこの種のソフトをインストールしさえすれば、簡単にこの機能が使える。私は仕事でも使っているし、バンコクにいる私の友人は、これを利用して会社の会議に参加している。
ITは沖縄サミットでも日本の発案で中心議題になったが、目新しい内容はなかった。電子商取引や、情報技術分野の格差(デジタルデバイド)といった言葉が強調されたが、発展途上国でITを促進すればするほど、デジタルデバイドは拡大するだろう。世界の人々は本当の価値以上にITを過大評価している。ITは手段であって、目的ではない。もし、幸せな生活が目的なら、IT以外にもっと多くの手段がある。
そんな中で、欧米メディアのいう「日本のIT革命」は今どういう状況にあるのか、なかなか考えを整理できないでいる。