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書評
アジア関連書籍の紹介です
『東アジアの安全保障』小島朋之、竹田いさみ共編(南窓社、2002年)3200円

 編者の一人である竹田いさみ獨協大学教授は、現在の世界をオセロゲームに喩える。一方のコマで埋められたかに見える世界が、他方のコマの置き方ひとつで白と黒の形勢が逆転しまう。そんな、驚きと不確実性に満ちた国際政治の特徴を言い表している。9月17日の小泉純一郎首相の訪朝もその一例で、今後のコマの置き方次第で東アジアの地政学が大きく変わる可能性を秘めている。変動期を迎えた東アジア情勢を考えるには、その行方を左右するプレーヤーの実像を把握することが不可欠だ。その意味で、米国、中国、ロシア、朝鮮半島、インドネシアといった重要なプレーヤーの外交や政治、経済を概説した本書は、この地域の未来を考えるうえで非常に参考になる。

 本書に収められた諸論文を通底するのは、もう一人の編者である小島朋之慶応大学教授が指摘しているように、東アジアで地域協力の枠組みづくりを進めようとする「協調」のベクトルと、超大国である米国、地域大国である中国、ロシア、日本などの利害が交錯する「対立」のベクトルが混在しているという認識である。そうした地政学的特質を理解するうえで、視野の狭い国益や、近視眼的な外交戦略にとらわれていると、深層を見失う恐れがある。本書にはそうした点への目配りが随所に見られ、現実の動きの検証を足場にしながら、冷静に東アジアの未来像を見据えようとする姿勢を感じさせる。たとえば、竹田氏は、中国と東南アジアの貿易が拡大されると日本の地位が危うくなるとの危機感が日本の中にある点にふれ、「日本が経済的な開放度を維持し、高める努力をする限りにおいて、経済的に密接な関係をもつ中国と東南アジアの成長の恩恵にあずかることができる」と指摘し、「中国と東アジアが共栄の構図を形成することが日本にとっても望ましい」と論じている。

 小泉訪朝の前に出版された本であり、日朝国交正常化の行方を展望するような論文はない。それでも、「体制維持を目指す北朝鮮の選択肢」(山岡邦彦)という論文は、体制維持には安保と経済の危機克服が緊急課題であることを分析し、あまり「古さ」を感じさせない内容になっている。山岡氏は、体制の維持が困難に直面するまでに北朝鮮がどこまで対応できるかという意味において、危機克服は「時間との競争」であると強調する。そのうえで、危機克服には組織的な対応が欠かせないにもかかわらず、すべての責任が金正日総書記に集中していることが対応力の限界ともなると論じている点は興味深い。

(論説委員・00〜02年AAN研究員 吉田文彦)
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