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書評
アジア関連書籍の紹介です
『アジアを語ることのジレンマ――知の共同空間を求めて』
孫歌著 岩波書店(2002年)税抜き2600円

日本国と中華人民共和国が外交関係を樹立してから30年が経った。日中関係は、人間にたとえれば「而立」を迎えたのである。だが、歴史をめぐる軋轢や摩擦は絶えず、日中が「大人の関係」になったとは言えない。歴史認識のずれ、という日中間に横たわる、容易ならざる問題に正面から斬り込んだのが、著者の孫歌さんである。

この本に収められているのは、孫さんが日中の知識人(いわゆる日本人の中国専門家、中国人の日本専門家はほとんど含まれていない)と対話を重ねることで生まれた論文が主となっている。

「アジアという思考空間」「日中戦争――感情と記憶の構図」「思想としての『東史郎現象』――理論と現実の間で」「近代史に向き合う倫理的責任」「グローバリゼーションと文化的差異――国境を越えた知の状況に対する考察」「歴史を生き直すこと」「魯迅が脱いだ服」「理想家の黄昏」「アジアを語ること――そのジレンマ」の9編と、大東文化大学教授、溝口雄三さんとの対談「『歴史に入る』方法――知の共同空間を求めて」である。いずれにもやや難解な部分があり、消化不良に陥ったことも度々あった。

しかし、歴史認識をめぐる議論のなかで日本人によく見られる「感情の記憶」への蔑視に対する問題提起や、中国人社会の「無知に基づいた日本への怨恨」の指摘には、すとんと落ちるものがあった。「民族感情なるものは、なにかしら砒素にも似て、量が多すぎれば死に至り,適量ならば病を治す」という、日本の言説空間でまともに扱われることの少なかった民族感情への論考も新鮮だ。

孫さんは中国社会科学院文学研究所の研究員で中国文学が専門。魯迅そして竹内好の研究から日本への関心をふくらませてきた。                            

藤原秀人(論説委員)
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